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さよならポエジー大阪単独公演「NO」

最初にSUNG LEGACYを聞いた時の印象は「優しくなったなぁ」だった。それは決して悪い印象ではなく、良いものとして。その第一印象を確かめる為に向かったツアー初日、大阪公演についての忘備録。

2024/4/8
曇り空の心斎橋BIGCAT前には高揚感にあふれた空気が漂っていた。さよならポエジー、約3年ぶりとなる新アルバム「SUNG LEGACY」を引っ提げての初のリリースツアー、その初日。前作「THREE」でも単独公演を行ったこのライブハウスが、今回のツアーの初日を飾る会場となった。チケットはソールドアウト。ライブハウス内に続々と観客が入り、スタッフが何度も前に詰めるよう促す。それほどまでに人であふれかえるフロアの前に、左からドラム、ベース、ギターといつもとは違うセットで機材が置かれている。

定刻を数分すぎたころ、いつものようにSEもなくふらっとメンバー三人がステージに上がる。観客からは拍手が上がり、静かにフロアに熱気が伝播していく。数分間の音出しを終えた後、ギターの轟音がライブの始まりを告げた。

ツアー最初の一曲は「ボーイング」。アルバム発売前にMVも公開され、アルバムでも一曲目を飾るこの曲が始まりの曲となった。けたたましく鳴るギター、ピック弾き特有の打感で鳴らされるベース、激しくも安定してリズムを刻むドラムの音。聞いただけで身震いするようなさよならポエジ―の音楽がそこにあった。無数のこぶしが上がり、まるで原曲にもあったがカットされたかのような綺麗な繋ぎで「頬」へ。更にフロアに熱が帯びていく。アッパーな曲が続き、アルバム中ではミドルテンポな曲「ノースロート」が演奏される。

「さよならポエジ―です。」3曲終わったところでVo/Gtオサキアユが口を開く。「ツアー初日なのに全く緊張していなくて笑。新しいアルバムはコンパクトなものなので、俺たちを作り上げてきた昔の曲も織り交ぜながらやっていきます。初日、どうぞよろしくお願いします。」
短いながら、この公演への気持ちが感じられるMCの後、「抜殻」が演奏される。今までのライブでもたびたび演奏されている曲。過去のインタビューでは「歌詞が書けなくなった時に、自分のことを抜殻みたいだなと思った気持ちをそのまま書いた」と言っていたが、そういった感情をそのまま詩的に表現できてしまうところがオサキアユの凄さなのだろう。ここで初めて旧譜より「pupa」が演奏される。アウトロの轟音から間奏が挟まれ、「すでにいいな」とオサキアユがつぶやく。間奏を抜けた先に「眩しいのは」が演奏される。「行こうぜ まぁどうだい 夜はクソ長いんだ」この時間、空間が永遠に続いてほしいと思えるような演奏を終え、再びオサキアユが口を開く。

「800人もいるらしいけどこんなにいても息苦しいな笑 なんでこんなに緊張しないんだろうと思ったら前回もここでワンマンやってるんよな。カメラも入っていたし笑」と観客の笑いを誘う。「最近思うけど、目で見たものが鮮明に思い出せるのが大事じゃないと思っていて。思い出が虫食いになる儚さ、だんだん忘れていってしまうのが最高だと思っています。ここからは毎度の感じです。引き続きよろしくお願いします。」その日その日にしかできない、同じものは2度と出来ないライブを大切にしてきているからこそ説得力を増すMCの後、「觜崎橋東詰に月」、最近のライブでは恒例となっていた間奏はなく、間髪入れずに放たれる「二月の中を/February」。「誰にも頷かなくていい」この歌詞に救われた人がどれだけいるのだろうか。自分もその一人だ。ここで新譜から「understood」、更に立て続けに「金輪際」とアッパーチューンが連続で演奏され、フロアもより一層熱を帯びていく。

「折り返しました。ここからが後半戦です。」激しい曲たちを終え、短いMCを挟んだ後、演奏されたのは「夜に訊く」。そののちに演奏されたのは、ツアー初日、新譜のサブスク解禁に合わせてMVも公開された「その復元」。ツインリバーブのキラッとした音感が心地よい間奏を挟み、「応答するまで」が演奏され、観客も食い入るように演奏を見守る。ドラムの間奏が入ったのちに演奏されたのは「Calmapart」。「部屋にひとり斜陽を思う窓や 四季を包みここへ招いたカーテン」日常の風景を詩的に、それでいて伝わるような表現で詩に落とし込めるのもこのバンドの凄さだと感じる。

「時間有意義に使っている感じがするな。」とオサキアユが話始める。さよならポエジ―のワンマンライブに立ち合えているこの時間を有意義と言わずに何というのか。他のメンバー二人に話を振るも、Ba岩城弘明は「ちょっとないですね僕」と笑いを誘う。「なかしーの呼び名が飽きたから最近ナカタクって呼んでる」とメンバー間の裏話を話したのち、Drナカシマタクヤが「BIGCAT2回目のワンマンありがとうございます。今回はフルキャパで出来ています。たくさんのご来場ありがとうございます。」とらしい言葉で観客への感謝を伝える。「セットの立ち位置も変えてみて、ワンマンだし来た人が面白いと思ってもらえたら。」とこのワンマンに向けて様々試行錯誤をしてきたことをうかがわせる話をした後「段々終わりに向かっています。最後までよろしくお願いします。」と演奏された「二束三文」。「でもそれなりの才能で俺は俺を救ってやろう」自分を救おうと書かれた曲に今では多くの人が心を動かされ、救われている。空気を切り裂くように放たれるドラムの間奏の後に演奏されたのは「半分になった俺たちへ」。新譜の曲もほとんどが演奏され、終わりを徐々に感じる中演奏されたのは「前線に告ぐ」。1stアルバムの表題にもなっている曲がここで演奏される。「あなたならうまく生き残れるわ」サビでは声を枯らしながら張り上げて歌う姿に心を打たれる。演奏が終わりドラムの入りから「その一閃」が演奏される。

「この作品が出来た時ワクワクしたんですよ。20代費やしても3枚しかアルバム作れなかったし、こんなペースでやってきたけど、いい歩み方が出来たのかなと。これだけの人を見て思いました。本当にありがとうございました。」オサキアユらしい口調で今までの制作活動を振り返る。「全国津々浦々回るので、旅の途中でどこかで会えるタイミングがあれば会ってやってください。」「さよならポエジ―というバンドは素晴らしいバンドだと思っているので、たまたま予定が空いていたらまたお願いします。」「本当にどうもありがとうございました。」と本編も終わるタイミングで心に残るMCをした後、「残り2曲、これで勘弁してやってください。」と演奏されたのは、まだ新譜の中で演奏されていなかった「絶滅の途中で」、「きずかないまま」。熱の乗った演奏で観客を沸かせ、スパッと演奏を終え3人はステージを後にした。

鳴りやまないアンコールの中、オサキアユが一人現れ、「ワンマンでも歌えるように喉鍛えなあかんな」と話したのち、メンバー2人もステージ袖から現れる。「なんも決めてないけど、2曲やります。」と話した直後ギターから轟音が鳴り響き、「もう声出なくてもいい、今日破壊して帰ります。神戸さよならポエジ―」と熱いMCの後に演奏されたのは、ライブでも定番曲である「オールドシンク」。無数の拳が上がり、フロアが揺れる。多くの歓声が上がる中、「あてもなく旅をする俺たちは なんだか風のようだね」と音源にはない始まりで展開される「生活について」が最後に演奏され、大歓声の中約2時間、計22曲の公演は幕を閉じた。

今回のライブを見てやはり、最初に新譜を聞いて感じた「優しくなった」という感想は間違っていないのかなと感じた。
3人が本当に楽しそうに演奏しているところも印象的だった。今まで何度もライブに足を運んだことはあるが、こんなにも楽しそうに演奏しているのを見るのは初めてだったかもしれない。それだけで今回の公演に足を運んでよかったと思えた。まだツアーは始まったばかり。初めてのツアーを経て、これからどんな景色を見せてくれるのか、楽しみで仕方ない。
ツアーが無事完遂出来ますように。また旅の途中で会いに行きます。

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