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週末読書メモ70. 『アマゾンの最強の働き方 Working Backwards』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

アマゾンの働き方、経営手法、そして何よりも、それらの基盤となる経営者の在り方を体感できる一冊。


アマゾニアンたちの最初のオフィスは小さな部屋が3つあるだけで、しかも互いにひじがぶつかりそうなくらい狭かった。
(中略)狭いオフィスだったので、ジェフはいつでも会社の様子を肌で感じることができた。システム開発、資金繰り、オペレーションの状況を知るには、椅子を回転させるか、隣の部屋をちょっとのぞき込むだけですむ。
ジェフはメンバー全員のことをよく知っていた。システムのプログラミングまではしないにしても、メンバーが各自の仕事に精通するまで、すべてに首を突っ込んでは一緒にこなしていた。また、ジェフは会社がめざすべき理想像を忌憚なく語り、小さなチームのあらゆる業務プロセスについて、顧客のこだわり、妥協のない高い規準の追求などの行動規範を導入していった。

このたった10名の段階から、社員数が100人、1万人、はては100万人に至るまで急成長をした21世紀を代表する企業、アマゾン。

過去には、ジェフ・べゾフさん自身の伝記を取り上げました。

本書では、上記の急成長を遂げるにあたり、ジェフ・べゾフさんの哲学を、いかにビジネスに落とし込んでいったが、具体的に記載されています。



組織文化の基礎を定義し、リーダーシップ・プリンシプルを明確に打ち出し、重要な組織運営手法(バー・レイザー方式、シングルスレッド・チーム、ナラティブによる文章、ワーキング・バックワーズ、インプット指標)を徹底することは、アマゾンのあらゆる面に好ましい効果を発揮している。これら抜きにビジネスを行ったり、組織を運営したりすることなど、私たちには想像もできない。

「バー・レイザー方式」、「シングルスレッド・チーム」、「ナラティブによる文章」、「ワーキング・バックワーズ」、「インプット指標」、そして、「14の行動規範」。耳にされた内容もあるかもしれませんが、アマゾンは、独自の仕組みを数々と生み出してきました。

本書では、読者の誰もが、それらの手法を導入できるよう、体系化した内容が記載されています。

その内容はどれも一読の価値があります。しかし、その上で、個人的に突き刺さったのは、これらの創造の基盤にあるものです。それは、アマゾンの理念、そして、創業者・経営者であるTOPであるジェフ・べゾフさんの在り方でした。


私たちのカルチャーの根底には4つの理念があります。競合企業ではなく顧客にこだわること。長期的思考を貫き、競合企業が想定するよりもはるかに長い時間軸で投資の決定を行うこと。失敗と隣り合わせなのは覚悟のうえで、新しい何かを創造する情熱。そして最後に、プロフェッショナルとして、誇るに足るすぐれた運営を行うことです。
(中略)アマゾンは多くの教訓を学んできた。痛手を負ったこともある。そのなか表現は練り直されたが、4つの理念から少しもぶれたことはない。

「お客様へのこだわり」、「長期的発想がすべて」、「成功と失敗の両方から学び続ける」、「すぐれた経営」。

この4つの理念は一見独立した概念のようで、なぜ、何を、いかに、誰がするべきかを、網羅されているのが凄いな…


ジェフもチームも顧客が喜ぶスマートフォンを開発していると信じていた(あるいは、そう考えて自分を納得されていた)が、間違っていた。どんなにすぐれたプロセスでも、できるのは意思決定の質を高めることだけだ。人間に代わって完璧な意思決定をすることはできない。
ファイアフォンが失敗しても、ジェフが開発のプロセスを疑問視することはなかった。彼はこう書いている。「ホームランを狙ってフルスイングすれば、何度も三振に終わるのは目に見えていますが、いずれホームランを打つにはそうするしかありません」
(中略)ファイアフォン撤退後のあるインタビューで、この失敗について問われたジェフはこう答えている。「あれを大きな失敗と言うなら、私たちはいま、もっと大きな失敗をめざしています。冗談を言ってるんじゃないですよ」
発明の規模、そしてそれに伴う失敗の規模は、組織の成長に合して大きくしていくべきだ。そうでなければ、企業を次の段階に発展させるに足るインパクトのある発明は実現しない。

そしてこれ。ジェフ・べゾフさんの言行一致、首尾一貫の徹底さよ。

アマゾンでは、なぜ多くのイノベーションを起こせるのか、なぜ失敗しても立ち止まることがないのか、の答えがここに凝縮されている気がします。

彼と同じく、当代随一の経営者であるユニクロの柳井正さんも、著書『経営者になるためのノート』でこう述べていました。

あなたが言っていること、あなたがやっていることが一致していなければ、あなたに対する信頼のシの字も生まれてこないのです。
「あなたは、あなた自身が言ったこと、約束したこと、あるいはあたな自身が言っていることの最大の実践者ですか」ということです。
メンバーというのは、あなたの言葉を信じるのでなく、言葉を言った後の、あなたの背中に信頼性を見出すものなのです。

そして、もう一つ。あなた自身の首尾一貫性。
あなたが信念にしていること、大切にしている価値観、追っかけているもの、こういったものが、ぶれない、変わらない。
こういった姿勢が、人間の芯として感じられる人でないと、相手から本当に信頼を受けることはおぼつかないのではないかと思います。

本当に背筋を正されます。

一体、世の中のどれほどの人が、これを実現できているのだろうか。

アマゾン、ファーストリテイリングという、21世紀を代表する企業を作り上げた根底には、これを実践し続けた2人のトップの姿があったことは間違いありません。


優良企業の経営手法をまとめた本だと、Google、Netflix社のものも、1年ほど前に読書メモに残しました。

本作も含め、これらの本に書かれた具体的な経営手法自体は非常に参考になります。ただそれだけでなく、垣間見られるその独自の経営手法を創造した組織、リーダーの在り方・軌跡が、胸に刻まれます。

膨大な挑戦と大きな成長に伴い、何度も会社を変化させていったアマゾン。その実体験から、ジェフ・べゾフさんは、「新たな筋肉を鍛え、初めてそこを動かすときにどんなに不快でも、しっくりこなくても、気にしてはいけない」とも言います。

自分が身を置くレガシーな農業界でも、組織内外でやれることは溢れています。その過程では多くの変化が避けられないのは間違いなく。その変化をも次の段階に繋げるため、組織、そして自らを進化させて続ける必要性を再認識できるような一冊でした。


【本の抜粋】
私たちのカルチャーの根底には4つの理念があります。競合企業ではなく顧客にこだわること。長期的思考を貫き、競合企業が想定するよりもはるかに長い時間軸で投資の決定を行うこと。失敗と隣り合わせなのは覚悟のうえで、新しい何かを創造する情熱。そして最後に、プロフェッショナルとして、誇るに足るすぐれた運営を行うことです。
(中略)アマゾンは多くの教訓を学んできた。痛手を負ったこともある。そのなか表現は練り直されたが、4つの理念から少しもぶれたことはない。

アマゾニアンたちの最初のオフィスは小さな部屋が3つあるだけで、しかも互いにひじがぶつかりそうなくらい狭かった。
(中略)狭いオフィスだったので、ジェフはいつでも会社の様子を肌で感じることができた。システム開発、資金繰り、オペレーションの状況を知るには、椅子を回転させるか、隣の部屋をちょっとのぞき込むだけですむ。
ジェフはメンバー全員のことをよく知っていた。システムのプログラミングまではしないにしても、メンバーが各自の仕事に精通するまで、すべてに首を突っ込んでは一緒にこなしていた。また、ジェフは会社がめざすべき理想像を忌憚なく語り、小さなチームのあらゆる業務プロセスについて、顧客のこだわり、妥協のない高い規準の追求などの行動規範を導入していった。

アマゾンの社員が行動規範を意識ていられるのは、それらが意思決定や行動の基本的なフレームワークとして実際に機能しているからだ。社員は日々この規範に向き合い、それを拠り所として考え抜く。だからこそ誰に対しても説明責任を果たすことができる。アマゾンで長く働くうちに、14カ条は自分の一部となり、ものの見方に溶け込んでいくのである。
リーダーシップ・プリンシプル
1. お客様へのこだわり
2. オーナーシップ
3. 創造し、シンプルにする
4. 正しい判断を多くできる
5. 学び、好奇心を持つ
6. 最高の人材を採用し、育成する
7. 最高水準を追求する
8. 広い視野で大きな発想をする
9. 迅速に行動する
10. 倹約
11. 信頼を獲得する
12. 深堀する
13. 信念を持つ:異議を唱えかつ決定にコミットする
14. 結果を出す

会議では全員が同じ文章を読むが、ジェフにはナラティブを読み取る不思議な能力があるのか、だれも思いつかないようなことをいつも指摘した。
ある会議のあと、なぜそのようなことができるのか訊いてみた。彼の答えはシンプルで、いまも記憶に残る有益なアドバイスとなった ー 正しいと証明できるまで、すべての文が間違っていると疑いながら読みするめること。

アマゾニアンであるとは、長期的に考え、顧客にこだわって発明に取り組み、リーダーシップ・プリンシプルに従って進み、確実に実行する仕組みを張り巡らすことにほかならない。
「長期的思考は、当社の能力を梃子のように動かし、それがなければ想像すらできなかった新しい行動を促します」とジェフは書いている。「長期的思考は、徹底したお客様へのこだわりと相性がよいのです。顧客のニーズを把握し、そのニーズが深刻で長期的なものであると確信が持てれば、何年かかろうと忍耐強くソリューションを追求できるのです」
キーワードは「忍耐」だ。
(中略)もう1つのキーワードは「倹約」だ。

ジェフもチームも顧客が喜ぶスマートフォンを開発していると信じていた(あるいは、そう考えて自分を納得されていた)が、間違っていた。どんなにすぐれたプロセスでも、できるのは意思決定の質を高めることだけだ。人間に代わって完璧な意思決定をすることはできない。
ファイアフォンが失敗しても、ジェフが開発のプロセスを疑問視することはなかった。彼はこう書いている。「ホームランを狙ってフルスイングすれば、何度も三振に終わるのは目に見えていますが、いずれホームランを打つにはそうするしかありません」
(中略)ファイアフォン撤退後のあるインタビューで、この失敗について問われたジェフはこう答えている。「あれを大きな失敗と言うなら、私たちはいま、もっと大きな失敗をめざしています。冗談を言ってるんじゃないですよ」
発明の規模、そしてそれに伴う失敗の規模は、組織の成長に合して大きくしていくべきだ。そうでなければ、企業を次の段階に発展させるに足るインパクトのある発明は実現しない。

組織文化の基礎を定義し、リーダーシップ・プリンシプルを明確に打ち出し、重要な組織運営手法(バー・レイザー方式、シングルスレッド・チーム、ナラティブによる文章、ワーキング・バックワーズ、インプット指標)を徹底することは、アマゾンのあらゆる面に好ましい効果を発揮している。これら抜きにビジネスを行ったり、組織を運営したりすることなど、私たちには想像もできない。

P.S.
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