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週末読書メモ14. 『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

現代の知の巨人、ユヴァル・ノア・ハラリ3部作における最後の1冊。

第1作『サピエンス全史』では人類の過去が、第2作『ホモ・デウス』では人類の未来が対象となっていました。

第3作の本作では、人類の現在が対象となっています。


本書では、現代のグローバル課題が、多岐に渡って取り上げられています(最初の18章で、現代の課題に対しての考察が、最後の3章で、それらの重い課題に対して、取り得る行動が記述されています)。

※目次
Ⅰ テクノロジー面の課題
 1 幻滅 ― 先送りにされた「歴史の終わり」
 2 雇用 ― あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
 3 自由 ― ビッグデータがあなたを見守っている
 4 平等 ― データを制する者が未来を制する
Ⅱ 政治面の課題
 5 コミュニティ ― 人間には身体がある
 6 文明 ― 世界にはたった一つの文明しかない
 7 ナショナリズム ― グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
 8 宗教 ― 今や神は国家に仕える
 9 移民 ― 文化にも良し悪しがあるかもしれない
Ⅲ 絶望と希望
 10 テロ ― パニックを起こすな
 11 戦争 ― 人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
 12 謙虚さ ― あなたは世界の中心ではない
 13 神 ― 神の名をみだりに唱えてはならない
 14 世俗主義 ― 自らの陰の面を認めよ
Ⅳ 真実
 15 無知 ― あなたは自分で思っているほど多くを知らない
 16 正義 ― 私たちの正義感は時代後れかもしれない
 17 ポスト・トゥルース ― いつまでも消えないフェイクニュースもある
 18 SF ― 未来は映画で目にするものとは違う
Ⅴ レジエンス
 19 教育 ― 変化だけが唯一不変
 20 意味 ― 人生は物語ではない
 21 瞑想 ― ひたすら観察せよ

まず、最初の18章のタイトル自体が非常に参考になります。

これらのテーマは、TVやネットでは切り取られた情報しか得られず、正しく認識するのが困難です。歴史や世界における位置付けを客観的に考察されているため、複雑なグローバル課題の理解を深められます(それだけでも、この本を読んで良かった)。


そして、最後の3章では、取り得る行動が考察されています。

結論としては、変化の中でサバイブできる教育を得ること、物語を生きないこと、瞑想(ひたすら自己を観察)することの3つの行動をすべきだと。

うーーーん、正直、これは難しくないだろうか笑(多くの人々にとって)

言わんとしていることは、”自分”で考えることが大事。このメッセージの意図は分かる。しかしながら、多くの人間が、(物語に頼らず、)自らの力のみで英知を導き出せるのだろうか…


では、どう考え、行動するべきなのだろう。

何となく、(個人の意見ですが、)アリストテレスの言う「フロネシス(実践知、知慮、賢慮)」に、可能性を感じました。

エピステーメ(科学的な客観的知識)だけでは、成果に繋がらない。

一方で、テクネー(アート・クラフト)だけでは、限界が来る。

だからこそ、理論と実践と混ぜ合わせ、弁証法的に答えを創り出すフロネシス(実践知)であれば、活路があるのではないだろうか。

もちろん、弁証法的思考・実践知自体、習得が簡単ではないです。アートの要素もあるため、論理的思考以上に難しい(特に再現性を作ることが)。しかし、フロネシスは、これからの時代の鍵になる気がしてなりません。


この数年、経営学・歴史に精通した野中郁次郎先生が、「フロネシス」を強調していたのは、きっと、この世界、この未来が見えていたんだろうなあ。

(野中先生の著作『知略の本質』は、「フロネシス」が取り上げられる数少ない書籍であり、とても示唆があります)


今回のメモの末尾として、ハラリさんが本書でちらっと書かれていた、”真実の見つけ方”のスタンスにハッとさせられました。

世の中を支配しているときには、真実を発見するのは極端なまでに難しい。あまりに忙し過ぎるからだ。
(中略)ところが、どんなテーマであれ、深く掘り下げたければ、たっぷり時間が必要だし、特に、時間を浪費する特権が必要だ。成果につながらない道も試し、行き止まりも探り、疑いや退屈が入り込む余地も作り、小さな見識がゆっくりと生長して花開くのを許す必要があるもし時間を浪費する余裕がなければ、真実は決して見つからないだろう

たまには、寄り道も大切だと。


【本の抜粋】
的外れな情報であふれ返る世界にあっては、明確さは力だ。理屈の上では、誰もが人類の将来についての議論に参加できるが、明確なビジョンを維持するのはとても難しい。

人間は、事実や数値や方程式ではなく物語の形で物事を考える。そして、その物語は単純であればあるほど良い。どんな人も集団も国家も、独自の物語や神話を持っている。

人類が苦境を解消しうる方法を探す前に、テクノロジーがもたらす難題を、もっとよく把握する必要がある。

世の中を支配しているときには、真実を発見するのは極端なまでに難しい。あまりに忙し過ぎるからだ。
(中略)ところが、どんなテーマであれ、深く掘り下げたければ、たっぷり時間が必要だし、特に、時間を浪費する特権が必要だ。成果につながらない道も試し、行き止まりも探り、疑いや退屈が入り込む余地も作り、小さな見識がゆっくりと生長して花開くのを許す必要がある。もし時間を浪費する余裕がなければ、真実は決して見つからないだろう。

真正性は神話であるということだ。人々は枠の中に閉じ込められるのを恐れるが、自分がすでに枠、すなわち自分の脳の中に閉じ込められていることに気づかない。そして、脳はさらに大きな枠、すなわち無数の独自の虚構を持つ人間社会の中に閉じ込められている。あなたがマトリックスを脱出したときに発見するのは、さらに大きなマトリックスだけだ。

人々が必要としているのは、情報ではなく、情報の意味を理解したり、重要なものとそうではないものを見分けたりする能力、そして何より、大量の情報の断片を結びつけて、世の中の情報を幅広く捉える能力だ。

ブッダの教えによると、宇宙の三つの基本的な現実は、万物は絶えず変化していること、永続する本質を持つものは何一つないこと、完全に満足できるものはないことだという。
(中略)ブッダによれば、人生には何の意味もなく、人々はどんな意味も生み出す必要はないという。私たちは、意味などないことに気づき、それによって空虚な現象への執着や同一化が引き起こす苦しみから解放されるだけでいい。

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