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週末読書メモ43. 『頂上の彼方へ 究極の山から得た40の教訓』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

背筋が伸びる。立ち向かい続けるとは何かを知れる一冊。


登山に成功するには、あるいは、どんな活動であれ成功をおさめるには、目的を明確に定め、その目的にかなう最高のチームを選抜し、未知のものに備え、準備から行動への重大な移行をし、険しい地形を巧みに乗り越え、嵐をしのぎ、頂上まで登りきって目的を達成しなければならない。

世界的なロッククライマーである筆者、トッド・スキナーによる一節。

彼は、山の世界に生きた人間ではありますが、難問に、限界に挑み続けたその人生・教訓は、ビジネスの世界にいる人間にも大きな示唆に富みます。

筆者が挑んでいたトランゴ・タワーズは、下のような山となります。

彼が挑んでいたのは、ただの山ではなく、世界のロッククライマーでさえ(いや本人でさえ)、限界のその先にあるような難関となります。

だからこそ、その偉大な目的の達成手法は、読者に洞察を与えます。

私たちを決定づける要素のひとつは志である。どんな人になりたいのか、どこに行きたいのか。私たちの本当の偉大さは、もっと上に行きたい、いまいるところを越えて進みたい、という欲求のうちにある。それは個人の衝動であると同時に、偉大なチームを支える意欲でもあり、そのチームがパートナーシップであるか、会社であるか、国家であるかは問わない。私たちはつねに変化の過程にあり、目標を設定し、価値基準を明確にし、到達したい陸標を描いていく。

自分の経験から得たものであれ、他人の経験から学んだものであれ、あなたの洞察が最果てまで推し進められているとしたら、あなたははるか遠くに到達しているのかもしれない。だが、限界にいるわけではない。
(中略)究極の山が私たちを引っ張り、さらに努力し、さらに学び、さらに遠くに到達されてくれるからだ。能力をはるかに超えた夢、とても可能とは思えないほど困難な山は、目標達成の志をいだく私たちを偉大にしてくれるのである。

これは、孫正義さんが「自らが登るべき山を決めよ。山を決めることで人生の半分の処理は終わると言うことである」と同じことを語っています。


最前線を定めるのは未解決の疑問であり、その暗い境界線は解明の光が足りないことで記される。そこでは知らないことのほうが知っていることよりも重く、天秤が不確実のほうに傾くため、その不均衡のせいで境界線は越えられないように映る。
(中略)機会が最も生じやすいのは新しい領域である。あなたにとって新しい、もしくは世界にとって新しい領域である。そうした機会を追いかけるには、不確実の線を越えなければならない。
(中略)地図が大きければ大きいほど ー 行き先や挑戦したい目標が多いほど ー 利用できる機会も増えるのは明らかだろう。

恐怖心は、あなたが快適と感じる範囲の境界を越えようとすることを示すものであり、快適でないと感じはじめる場所とは、あなたが成長を始める場所にほかならない。究極の山を前にすれば恐怖に見舞われるのが普通であり、それを認識すれば、順応は早くなる。恐れは活力の源ともなるため、チャレンジに対する自然な反応だと理解すれば、かならずしもマイナスの感情ではない。恐れが大きければ、それだけチャレンジも大きいということだ。その活力を退散する口実に利用するのではなく、ゴールの達成に向けるといい。

そして、こちらは、イチローさんが「自信を獲得するには難しい状況で向かっていくしかない」と語った先日のインタビューの内容に通じるんだよなあ(イチローさんの話の中でも、このインタビューは必見)。


凄まじい事例・教訓集でした。『ビジョナリー・カンパニー』で強調されられているBHAG(Big Hairy Audacious Goals)の、具体的な向き合い方、向き合った先になるがあるかが詳にされています。

分野は違えど、途轍もない次元に達した方々、その次元に至るまで挑み続けた方々は、皆共通の真理に至ると。

今まで難題に立ち向かうような経験を重ねてきたような人にとっても、言語化された教訓を触れられることは、自らの経験を原理原則へ昇華する助けとなります。


個人的に新しい示唆となったのは、下の2つです。

最後の段階ではじつに多くのことが不利に働く。そのせいで忘れがちになるのが、山の簡略化された方程式における錬金術的要素である。疲労し、物資が残りわずかとなり、状況が過酷なとき、それを相殺してくれる要素とは、難題に立ち向かううち、あなたはより優れたクライマーになっているということだ。最初の九十パーセントを登るというプロセスがあって初めて、最後の十パーセントにたどり着く。あなたはもはや麓にいたときと同じクライマーではない。ときには、それこそがあなたの得た収穫のすべてという場合もある。

結末が不確かで、残された資源が目的地に釣り合っていないと思えるとき、「これは可能なのか?」と自分に問いかけても、確信をもって「イエス」と答えることはできない。実際のところ、可能かどうかはわからないからだ。この不確実性は希望をくじき、この先つづける価値があるのかと疑念に生じさせる。
だが、「それは可能なのか?」と問えば、かならずといってほど、答えは「いや、不可能ということはない」となり、解決に向けて扉が開かれる。

ハッとさられます。

リアリスト(現実主義者)であり、プラグマティスト(実用主義者)でありつつも、オプティミスト(楽観主義者)で無ければならないと。

稲盛和夫さんや永守重信さんをはじめ、傑出した結果を出した経営者が、最後に「心」に行き着くのは、簡易な精神論とは一線を画して、それこそが結果を決めることを示しているんだよな…

心を高め続けること、磨き続けるこそが、今後、きっと最大の課題になる。それは順境な時だけでなく、逆境な時にすら。しかも、それを個人の単位を越え、組織の単位で。

ああ…そうか、その一つの鍵が、"頂上の彼方へ"なのか。


【本の抜粋】
私たちを決定づける要素のひとつは志である。どんな人になりたいのか、どこに行きたいのか。私たちの本当の偉大さは、もっと上に行きたい、いまいるところを越えて進みたい、という欲求のうちにある。それは個人の衝動であると同時に、偉大なチームを支える意欲でもあり、そのチームがパートナーシップであるか、会社であるか、国家であるかは問わない。私たちはつねに変化の過程にあり、目標を設定し、価値基準を明確にし、到達したい陸標を描いていく。

自分の経験から得たものであれ、他人の経験から学んだものであれ、あなたの洞察が最果てまで推し進められているとしたら、あなたははるか遠くに到達しているのかもしれない。だが、限界にいるわけではない。
(中略)究極の山が私たちを引っ張り、さらに努力し、さらに学び、さらに遠くに到達されてくれるからだ。能力をはるかに超えた夢、とても可能とは思えないほど困難な山は、目標達成の志をいだく私たちを偉大にしてくれるのである。

最前線を定めるのは未解決の疑問であり、その暗い境界線は解明の光が足りないことで記される。そこでは知らないことのほうが知っていることよりも重く、天秤が不確実のほうに傾くため、その不均衡のせいで境界線は越えられないように映る。
(中略)機会が最も生じやすいのは新しい領域である。あなたにとって新しい、もしくは世界にとって新しい領域である。そうした機会を追いかけるには、不確実の線を越えなければならない。
(中略)地図が大きければ大きいほど ー 行き先や挑戦したい目標が多いほど ー 利用できる機会も増えるのは明らかだろう。

恐怖心は、あなたが快適と感じる範囲の境界を越えようとすることを示すものであり、快適でないと感じはじめる場所とは、あなたが成長を始める場所にほかならない。究極の山を前にすれば恐怖に見舞われるのが普通であり、それを認識すれば、順応は早くなる。恐れは活力の源ともなるため、チャレンジに対する自然な反応だと理解すれば、かならずしもマイナスの感情ではない。恐れが大きければ、それだけチャレンジも大きいということだ。その活力を退散する口実に利用するのではなく、ゴールの達成に向けるといい。

最後の段階ではじつに多くのことが不利に働く。そのせいで忘れがちになるのが、山の簡略化された方程式における錬金術的要素である。疲労し、物資が残りわずかとなり、状況が過酷なとき、それを相殺してくれる要素とは、難題に立ち向かううち、あなたはより優れたクライマーになっているということだ。最初の九十パーセントを登るというプロセスがあって初めて、最後の十パーセントにたどり着く。あなたはもはや麓にいたときと同じクライマーではない。ときには、それこそがあなたの得た収穫のすべてという場合もある。

結末が不確かで、残された資源が目的地に釣り合っていないと思えるとき、「これは可能なのか?」と自分に問いかけても、確信をもって「イエス」と答えることはできない。実際のところ、可能かどうかはわからないからだ。この不確実性は希望をくじき、この先つづける価値があるのかと疑念に生じさせる。
だが、「それは可能なのか?」と問えば、かならずといってほど、答えは「いや、不可能ということはない」となり、解決に向けて扉が開かれる。

頂上の彼方を見つめなければ、ひとつの山がより大きな上昇への一歩にすぎないと知ることはなかった。どんな山であれ、そこに登っただけで申し分ない高さに達することはありえない。この頂上からは、以前は見えなかったはるかな地まで見渡すことができ、未来の自分も認められた。我々は麓にいたときとは別人になっていた。どんなに遠くまで来たかを知り、どこまで行けるだろうかと思いをめぐらせる。そんなヴィジョンの飛躍は、頂上に立つだけでなく、頂上までのたびに待ち受けるチャレンジに応えることで実現する。

P.S.
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