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週末読書メモ56. 『地球の未来のため僕が決断したこと』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

気候変動の理解と傑出した人間の思考プロセスを知れる有難い一冊。

SDGsやカーボン・ニュートラルの話題に伴い、再び注目度が増している「気候変動」というテーマ。

様々なワードが飛び交う中で、全体像や問題の本質を捉えるのが難しい中、気候変動の理解の一助としてはこれ以上ない素晴らしい内容でした。


マイクロソフトの創業者・元経営者であり、現在は自身の財団で世界の様々な問題と向き合っているビル・ゲイツ氏。

彼が財団の活動を通じ、貧困の改善を取り組む中で、気候変動の問題の大きさを知り、様々な調査・分析をした結果が、本書にはまとめられています。

気候変動について知っておくべき数字がふたつある。ひとつが五一〇億。もう一つがゼロだ。
五一〇億は毎年、世界の大気中に増える温室効果ガスのトン数である。
(中略)ゼロは”これから目指さなければならない”数字である。
(中略)これがむずかしいことであるように感じられるのは、実際に難しい仕事だからだ。世界はこれほど大きな課題に取り組んだことがない。すべての国が行動スタイルを変える必要がある。

この五一〇億トンという温室効果ガスをゼロに出来るか否かが、今後の世界の命運を変えると。

排出量が五一〇億トンに至った背景には、経済・社会の発展があります。

それ自体は素晴らしい恩恵を人類に与えたことを認めた上で、この先の未来のため、新たな生活・仕事のスタイルが求められると、強く主張します(たとえ、それがどんなに困難だとしても)。

主要な五つの温室効果ガス排出源をすべて見た。電気を使うこと、ものをつくること、ものを育てること、移動すること、冷やしたり温めたりすることだ。次の三点が明らかになっているとうれしい。
1. 問題は非常に複雑で、人間の活動のほぼすべてが関係している。
2. 僕たちのもとにはすでに道具の一部があり、いますぐそれを活用して排出削減に取り組むべきだ。
3. とはいえ、必要な道具がすべて揃っているわけではない。すべての部門でグリーン・プレミアムを引き下げる必要があり、そのためには多くの創意工夫が必要だ。

1つ目に書かれている通り、人間の活動のほぼすべてが関係していること、そして、短期的な視点に立つと温室効果削減が成長を阻む理由になることが、この問題の難しさを際立たせています。

しかし、このまま気候変動が進めば、人類がこの星で生きることすら困難になる、とビル・ゲイツさんは警告しています。


気候変動のテーマは、農業に関わる者として人ごとではありません。

実際、気温や降雨量・降雪量は、この10年で肌感覚で分かるほど変わり…

そして、同様に、温室効果ガスを排出する者としての立場も理解する必要があります。化学肥料や燃料の利用等々の影響は少なくなく、将来、間違いなく政治の介入が入ることが間違いありません。


本書を通じ、気候変動の全体観を知れるだけでも有難いのですが、加えて、ビル・ゲイツさんの思考・行動様式の節々に触れることも、本書の価値を底上げしています。

気候変動のことを学びはじめたとき、理解するのがむずかしい事実に何度も出くわした。ひとつには数があまりにも大きすぎて、イメージがなかなか描けないのだ。五一〇億トンのガスがどんなものか、わかる人がいるだろうか。
(中略)やがて僕は、学んでいることを理解するための思考の枠組みをつくった。そうすることで、ある数字が大きいのか小さいのか、何かの費用がどれだけ高いのかをイメージできるようになったのだ。

国道整備であれ、世界の子どもたちの予防接種であれ、世界経済の脱炭素化であれ、大規模な取り組みをすすめるには、適切なインセンティブをつくり、全体の仕組みがみんなにとってうまく機能するようにしなければならず、そのためには政府にきわめて大きな役割を果たしてもらう必要がある。

マイクロソフトにとって必要だったのは、また現在僕たちが気候変動に対処するために必要なのは、さまざまな学問分野に正しい道へと導いてもらうようにする方法である。
(中略)イノベーションは、新しい機械や工程を考えることだけでない。新しい発明に命を吹きこんで世界規模で展開するのを手助けするビジネス・モデル、サプライ・チェーン、市場、政策の新手法を考えることでもある。イノベーションは新しい発明品のことであるのと同時に、物事の新しいやり方のことでもあるのだ。
これらの条件を念頭に置き、僕の計画のさまざまな要素をふたつのカテゴリーに分けた。大学で経済学概論を履修した人なら、なじみのあるカテゴリーだろう。ひとつがイノベーションの供給を拡大すること、つまりテストされる新しいアイデアを増やすことで、もうひとつがイノベーションの需要に弾みをつけることだ。このふたつは、押す側と引く側として一体となって機能する。

さらっと書かれている節々に、彼が超一流のビジネスマンであることが垣間見れます。コンピューターサイエンスの最前線にいたので、当たり前ですが、数時と構造化のレベルが際立っています…

ある大きな領域の問題解決しようとすれば、ビジネスだけでなく、経済・政治・社会レイヤーを巻き込むことも然り。

農業という大きな領域と向き合う者として、内実ともに、少しでもこのレベルに近づけるようやっていくしかない。


【本の抜粋】
気候変動について知っておくべき数字がふたつある。ひとつが五一〇億。もう一つがゼロだ。
五一〇億は毎年、世界の大気中に増える温室効果ガスのトン数である。
(中略)ゼロは”これから目指さなければならない”数字である。
(中略)これがむずかしいことであるように感じられるのは、実際に難しい仕事だからだ。世界はこれほど大きな課題に取り組んだことがない。すべての国が行動スタイルを変える必要がある。

気候変動のことを学びはじめたとき、理解するのがむずかしい事実に何度も出くわした。ひとつには数があまりにも大きすぎて、イメージがなかなか描けないのだ。五一〇億トンのガスがどんなものか、わかる人がいるだろうか。
(中略)やがて僕は、学んでいることを理解するための思考の枠組みをつくった。そうすることで、ある数字が大きいのか小さいのか、何かの費用がどれだけ高いのかをイメージできるようになったのだ。
(中略)この方法は、どんなテーマを調べるときにもたいてい役立つ。まず全体像を把握するように努めるのだ。そうすれば、新しい情報を理解するための背景となる情報が得られる。それに情報が記憶にも残りやすい。

技術がいちばんの問題とはいえない。おもに政治と経済の問題だ。木を切り倒すのは人間が悪者だからではない。木を残しておくよりも切り倒すインセンティブのほうが大きいときにそうするのだ。

主要な五つの温室効果ガス排出源をすべて見た。電気を使うこと、ものをつくること、ものを育てること、移動すること、冷やしたり温めたりすることだ。次の三点が明らかになっているとうれしい。
1 問題は非常に複雑で、人間の活動のほぼすべてが関係している。
2 僕たちのもとにはすでに道具の一部があり、いますぐそれを活用して排出削減に取り組むべきだ。
3 とはいえ、必要な道具がすべて揃っているわけではない。すべての部門でグリーン・プレミアムを引き下げる必要があり、そのためには多くの創意工夫が必要だ。

大きく分けると、適応は三つの段階で考えることができる。気候変動によるリスクを減らすのが最初の段階だ。
(中略)緊急事態に対応できるよう備えるのが次の段階だ。
(中略)最後の段階が、災害後の復興期だ。

国道整備であれ、世界の子どもたちの予防接種であれ、世界経済の脱炭素化であれ、大規模な取り組みをすすめるには、適切なインセンティブをつくり、全体の仕組みがみんなにとってうまく機能するようにしなければならず、そのためには政府にきわめて大きな役割を果たしてもらう必要がある。

マイクロソフトにとって必要だったのは、また現在僕たちが気候変動に対処するために必要なのは、さまざまな学問分野に正しい道へと導いてもらうようにする方法である。
(中略)イノベーションは、新しい機械や工程を考えることだけでない。新しい発明に命を吹きこんで世界規模で展開するのを手助けするビジネス・モデル、サプライ・チェーン、市場、政策の新手法を考えることでもある。イノベーションは新しい発明品のことであるのと同時に、物事の新しいやり方のことでもあるのだ。
これらの条件を念頭に置き、僕の計画のさまざまな要素をふたつのカテゴリーに分けた。大学で経済学概論を履修した人なら、なじみのあるカテゴリーだろう。ひとつがイノベーションの供給を拡大すること、つまりテストされる新しいアイデアを増やすことで、もうひとつがイノベーションの需要に弾みをつけることだ。このふたつは、押す側と引く側として一体となって機能する。

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