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週末読書メモ135. 『ジャン・クリストフ(3)』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

音楽とは、生きるとは。

人々との交わりを通し、浮かび上がる物事の真理。


ロマン・ロランの名作『ジャン・クリストフ』も全4巻中残り2巻。

1~2巻は主人公の天才クリストフの視点で物語が進んで行きました。

https://note.com/ryutatkhs/n/ne1a5d5a8a7aa?from=notice

対して、本書の第3巻は、主人公の終生の友人であり、また一市井の人物であるオリヴィエを中心に物語が描かれていきます。


音楽はつらい生活における楽園だった。
(中略)暖房のようなまたは頼りない秋のようなその暖かい倦怠は、人の官能をいらだたせ意志を死滅させる。しかしそれは、アントワネットのように喜びようのない過度の働きを強いられている魂にとっては、一つの休息となるのであった。

楽器の楽しき和音や自然の声の楽しきを聞きながら、それを少しも悦ぶことなく、少しも感動することなく、楽しき歓喜の情に頭より足先まで戦くことなく、われを忘るることもできざる者は、不徳なるゆがめる堕落せる魂をもてるしるしにして、かかる者にたいしては、生まれ悪しき者にたいするがごとく、人は注意を要するなり……。

主人公クリストフも、友人オリヴェエも、経済的にも、社会的にも、苦難の多い人生を歩むことになります。

その中でも、2人で続けた音楽の創作活動。辛い生活の中でも、音楽は、2人の心を楽園へ繋げる力がありました。

自分自身、音楽に疎い、そして苦手であることから、その魅力を感じきれていないのが惜しいというか…絵画は量に触れて、その魅力を感じ取れるようになりつつあるので、(せっかくなら)音楽もいつかはそういう境地まで持っていきたいです。


「人生、」とオリヴィエは繰り返した、「人生とはなんだろう?」
「一つの悲劇だ。」とクリストフは言った。「悲劇を歓呼せんかな!」

「愛する者に裏切られた。」
そういう考えにオリヴィエは圧倒されていた。
(中略)「しかたがないさ」とクリストフは言った。「味方から裏切られることなんかは、病気や貧困や馬鹿どもとの戦いと同じように、ごくありふれた試練なんだ。それにたいして武装していなければいけない。それに抵抗できないなどとは、憐れな人間にすぎない。」

愛する人に裏切られた友人。それに対して、主人公が伝えたこと。それは、「人生とは、一つの悲劇」だと。

全部が悲劇とは言っていません。人生は悲劇でもあり喜劇であると。

そんな人生を生きるためにも、信念や強さが必要であることを、クリストフは自らの姿から感じ取れます。

かのチャップリンは、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」と言っていました。激動の人生を歩んだクリストフ。その最後をどのように締めくくるのか。残り1巻!


【本の抜粋】
音楽はつらい生活における楽園だった。
(中略)暖房のようなまたは頼りない秋のようなその暖かい倦怠は、人の官能をいらだたせ意志を死滅させる。しかしそれは、アントワネットのように喜びようのない過度の働きを強いられている魂にとっては、一つの休息となるのであった。

俺には一人の友がある!……苦しいときに寄りすがるべき一つの魂を、あえぐ胸の動悸が静まるのを待ちながら、やっと息がつけるやさしい安全な一つの避難所を、見出したという楽しさ!もはや一人ではない。

君が説く安全というものは、帝国主義の兵営の四壁中にあるりっぱな秩序や安全な規律などは、僕になんの役にたとう?そんな所では窒息して死ぬのほかはないだろう。空気が必要なのだ。常により多くの空気が!常により多くの自由が!

楽器の楽しき和音や自然の声の楽しきを聞きながら、それを少しも悦ぶことなく、少しも感動することなく、楽しき歓喜の情に頭より足先まで戦くことなく、われを忘るることもできざる者は、不徳なるゆがめる堕落せる魂をもてるしるしにして、かかる者にたいしては、生まれ悪しき者にたいするがごとく、人は注意を要するなり……。

「人生、」とオリヴィエは繰り返した、「人生とはなんだろう?」
「一つの悲劇だ。」とクリストフは言った。「悲劇を歓呼せんかな!」

「愛する者に裏切られた。」
そういう考えにオリヴィエは圧倒されていた。
(中略)「しかたがないさ」とクリストフは言った。「味方から裏切られることなんかは、病気や貧困や馬鹿どもとの戦いと同じように、ごくありふれた試練なんだ。それにたいして武装していなければいけない。それに抵抗できないなどとは、憐れな人間にすぎない。」

既婚および未婚の女の幸福もしくは不幸をなすものは、信仰の有無ではないと同様に、子供の有無でもないと、クリストフは考えた。幸福というものは、魂の香りであり、歌う心の階調でもある。そして魂の音楽のうちにもっとも美しいのは、温情にほかならない。

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