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週末読書メモ75. 『イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

イノベータのアイデアの源泉は何か。再現性のあるアイデア創造方法を解き明かすため、そのことに本気で向き合った筆者らによる渾身の内容。


名著『イノベーションのジレンマ』の著者クレイトン・クリステンセン教授らによる本書、『イノベーションのDNA』。

2012年に一度刊行されたものが、約10年の時を経て新版改訂されました。改めて本書を再読したのですが、将来の示唆に溢れています。

クリステンセン教授の『イノベーション~』シリーズは、組織におけるイノベーションの創造方法に主眼が置かれていましたが、本作では、イノベータ個人に着目し、彼らのイノベーションの源泉・スキルセットがテーマとなっています。

(『イノベーションジレンマ 増補改訂版』)


私たちがこの研究から得た主な発見は、創造性は単なる遺伝的な認知能力ではない、ということだ。創造性を生み出す強力な土台は、私たちの行動、特に質問・観察・人脈づくり・実験にある。こうした行動を取ることによって、創造力を高めることができるのだ。

革新的なアイデアの源泉を調べてみると、次のようなきっかけがあることが多い。(1)現状に挑戦する質問、(2)技術や会社、顧客などの観察、(3)新しい何かを試す体験や実験、(4)重要な知識や機会に気づかせる会話。実際、ジョブズの行動をじっくり調べ、特にその行動が具体的にどうやって新しく幅広い知識をもたらし、どうやって斬新なアイデアにつながったのかを注意深く検討すれば、彼のアイデアの源泉を突き止めることができる。

ジェフ・ベゾスさん(Amazon)やイーロン・マスクさん(Tesla)、A・G・ラフリーさん(P&G)をはじめ、実績のあるイノベータに直接調査を行った結果、破壊的イノベータのスキルとして、下の5つを挙げられました。

世界のトップを走るイノベータたちは「発見力」を備えており、それは5つの能力にもとづいている。
・①関連づける力
・②質問力
・③観察力
・④人脈力
・⑤実験力

アイデアの創出は、1つ目の関連づける力をいかに駆使することができるか。

しかしながら、その土台には、2~5つ目の質問力、観察力、人脈力、実験力のスキルにより、イノベータや組織が新しく幅広い知識を得られるかが不可欠だと言及します。


本書で印象的な部分は、著名な起業家・経営者であっても、上記5つのスキルの全てが世界トップクラスではないことです。つまり、イノベーションの能力を高めたい人は、5つのスキルのうちでどれが自分のDNAに刻み込まれているかを考え、その能力を高めることを目指すのが望ましいと。

自分で言うと、強みは関連づける力、次点で観察力と質問力である一方で、おそらく人脈力と実験力は人並みでしかありません。

しかし、イノベータとして足りない力を卑下する必要はなく、組織で補えばよいこと、(自らの能力を理解し)それらを組み合わせ独自の発見方法を磨けばよいことは、今後の大きな道標となります。


また、関連づけについては、下の内容には思わず膝を打ちました。

関連づけがどのように起こるのか、またなぜひと一倍関連づけが得意な人がいるのかを理解するには、脳の仕組みを知っておいた方がいい。
(中略)脳内に保存された知識が多様であればあるほど、新しい情報が入力されたときにますます多くのつながりが生まれる。
(中略)脳は新しい知識を活発に吸収しているとき、アイデアとアイデアの結びつきを促して(神経回路の網を広げて)、新しい知識を組み合わせることが多い。したがって関連づけの「筋肉」も、質問・観察・人脈づくり・実験を積極的に実践することによって鍛えることができる。

(ビル・ゲイツさんも推薦した)知の幅広さをテーマした下の本『RANGE』でも述べられていたことが、改めて強調されていました。


本を仕事の一部として読むようになって7~8年。

知覚できる世界が広く深くなった実感はあります。しかし、既知の情報と新知の情報が組み合わさり、新たな世界に繋がるのは、まだまだ偶発的に起こるレベルに留まります。

アイデア創造力。この力の必要性を感じ、足掻き始めて2年目(振り返ってみると、ちょうど一年前にもクリステンセン教授の本を)。

アイデア創造力を体得できるには、あと何年かかるのだろうか。

本書の最後は、イノベーションには「樫の木が必要になるまえにどんぐりを植える勇気をもつ」必要があると言う言葉で締められます。きっとそれは、企業の成長だけでなく、組織・個人の成長においても然りなはず。

振り返れば、論理的思考力も、その力の無さを痛感し、打ちのめされ、そこから体得するまでは4年ほどの月日が必要でした。

アイデア創造力のような自分自身の能力開発を含め、あと何年かかろうとも、それに確証がなかろうと、(どんな事柄でも)僅かでも可能性があるのであれば、樫の木のどんぐりを植え続けていこう。


【本の抜粋】
私たちがこの研究から得た主な発見は、創造性は単なる遺伝的な認知能力ではない、ということだ。創造性を生み出す強力な土台は、私たちの行動、特に質問・観察・人脈づくり・実験にある。こうした行動を取ることによって、創造力を高めることができるのだ。

革新的なアイデアの源泉を調べてみると、次のようなきっかけがあることが多い。(1)現状に挑戦する質問、(2)技術や会社、顧客などの観察、(3)新しい何かを試す体験や実験、(4)重要な知識や機会に気づかせる会話。実際、ジョブズの行動をじっくり調べ、特にその行動が具体的にどうやって新しく幅広い知識をもたらし、どうやって斬新なアイデアにつながったのかを注意深く検討すれば、彼のアイデアの源泉を突き止めることができる。

関連づけがどのように起こるのか、またなぜひと一倍関連づけが得意な人がいるのかを理解するには、脳の仕組みを知っておいた方がいい。
(中略)脳内に保存された知識が多様であればあるほど、新しい情報が入力されたときにますます多くのつながりが生まれる。
(中略)脳は新しい知識を活発に吸収しているとき、アイデアとアイデアの結びつきを促して(神経回路の網を広げて)、新しい知識を組み合わせることが多い。したがって関連づけの「筋肉」も、質問・観察・人脈づくり・実験を積極的に実践することによって鍛えることができる。

イノベータは「新しい体験を試す」「ものを分解する」「試作品や試験運用を通してアイデアを試す」の3種類の実験を通して、データを入手し、新しいひらめきを促している。質問・観察・人脈づくりは、過去と現在のデータを得るのには適しているが、「将来何が成功するか」に関するデータを入手するには、実験が最適だ。

イノベーティブな組織のDNAには、創業者のDNAが組み込まれていることが多いのだ。
(中略)彼らは自分に似た(つまりイノベーティブな)人材(People)と、イノベーションに必要な能力(質問力・観察力・人脈力・実験力)を高めるプロセス(Process)、そして社員1人ひとりにイノベーションを起こし賢くリスクを取るよう促す理念(Philosophy)を組織にもたせることの重要性を一貫して力説した。

イノベータは自分が示すイノベーションの模範が、きわめてイノベーティブな企業をつくるための重要な第一歩になることを知っていた。また、社内のすべてのチームでみずから指導したり活動したりできないことも、(特に会社が成長すると)大半の社員との直接の交流がごく限られてくることも知っていた。だから彼らは、会社全体にイノベーションへの強い決意をたたき込もうとしていた。

イノベーションとは突き詰めれば自分や他人への投資であり、企業幹部や新興企業家にとっては会社への投資である。イーベイにたメグ・ホイットマンは、組織のトップであれ、平の技術者であれ、誰もが「樫の木が必要になるまえにどんぐりを植える勇気をもつ」べきだと諭す。イノベーションとは、立派に育つかどうか確信がもてないまま、どんぐり(アイデア)を植えることにほかならない。だが植えてみなければ樫の木は育たず、企業の成長は見込めない。イノベーティブなチームや組織のなかで1人ひとりのイノベータのディーエヌエーを理解し、伸ばしていけば、苗木を、そして将来の成長をもたらす立派な樫の木を育てることができる。

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