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週末読書メモ68. 『イソップ寓話集』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

子供向けの読み物として世界的に有名なイソップ童話。

改めて読み返してみると、老若男女を問わず、人生訓となる話が散りばめられていました。


本書では、数100もの短編が載せられています(その数471個!)。

 『ゲーテ格言集』と同様に、短編集というのはストーリーが無い分、読み進めにくい部分もありましたが、500近い人生訓に触れられるのは、一読の価値があります。


イソップ寓話集で最も有名なのは「北風と太陽」ですが、全体を通して見ると、どちらかといえば性悪説に立ち、苦言を呈する話が多くなっています。

ライオンが家畜の囲いに入りこんだ。農夫は生け捕りにしてやろうと思って、中庭の戸を閉ざした。するとライオンは、外に出られないので、まずは羊を殺しまくり、次いで牛の群にも向かって行った。農夫は自分の身が心配になって、戸を開けた。ライオンが立ち去った後、農夫が嘆くのを見て妻君が言うには、
「当然の報いだよ、あんた。遠くからでも怖れなきゃいけないものを、どうして閉じこめようなんて考えたのさ」
このように、ずっと強い者を怒らせたなら、当然身から出た錆を忍ぶことになるのだ。

子供が学校で友だちの書板をくすね、母親に持ち帰った。母親は打擲しないばかりか、これを褒めたので、二度目は着物を盗んで手渡すと、前にもまして感心していた。
時が移り、この少年も若者になった頃、もっと大きな盗みに手を染めるようになっていたが、ある時、盗みの現場を捕まって、後手に縛られ、処刑場に引かれて行った。母親がその後を追い、胸を叩いて嘆いていると、若者は、
「おっ母の耳に入れたいことがある」と言った。そして母親が寄って来るや否や、その耳に食いつき、噛み切ってしまった。親不孝者めと罵るのに対し、息子の言うには、
「初めて書板を盗んで渡したあの時、もし打つすえてくれていたら、捕まって死刑になるまでのことにはなかなかっただろうに」
初めに阻止しておかないとますます大きくなる、ということをこの話は説き明かしている。

これは子供向けではない笑

しかし、人や社会は綺麗事ばかりではないのが現実。このような短編を通し、読み手のリスク察知の感度を上げてくれるような気がします。


上記に加えて印象的な話は、立場によって、様々な視点・解釈を与えるような内容です。

イソップがこんな話をした。羊飼たちがテントで羊を食べているのを狼が見つけ、近寄って行くと、
「俺がそれをしたら、お前たちはどんなに大騒ぎすることだろう」と言った。

なるほど、確かになあ…

このような見方・考え方が出来る人でありたいものです。


この本を手に取ったきっかけは、どこかの文章で、戦略本のオススメ図書に含まれていたからです。

その紹介を見た時は分からなかったのですが、本書を一読し、その理由が分かりました。本書は、様々な人間心理を、アナロジーを用いて、浮かび上がらせているからです。

『世界標準の経営理論』に書かれているように、経営論の基盤には、経済学、社会学、心理学にあるとも言われます。

その基盤の一つになる心理学。人はどのように感じ、考え、動くのか。

人の善なる面も悪なる面も、ユーモアを交えて、描く本書は、人や世界の内面に触れるのに秀逸な一冊でした。


【本の抜粋】
北風と太陽がどちらが強いかで言い争いをした。道行く人の服を脱がせた方を勝ちにすることにして、北風から始めた。強く吹き付けたところ、男がしっかりと着物を押さえるので、北風は一層勢いを強めた。男はしかし、寒さに参れば参るほど重ねて服を着こむばかりで、北風もついに疲れ果て、太陽に番を譲った。
太陽は、はじめ穏やかに照りつけたが、男が余分の着物を脱ぐのを見ながら、だんだん熱を強めていくと、男はついに暑さに耐えかねて、傍に川の流れるのを幸いに、素っ裸になるや、水浴びをしにとんで行った。
説得が強制よりも有効なことが多い、とこの話は説き明かしている。

ライオンが家畜の囲いに入りこんだ。農夫は生け捕りにしてやろうと思って、中庭の戸を閉ざした。するとライオンは、外に出られないので、まずは羊を殺しまくり、次いで牛の群にも向かって行った。農夫は自分の身が心配になって、戸を開けた。ライオンが立ち去った後、農夫が嘆くのを見て妻君が言うには、
「当然の報いだよ、あんた。遠くからでも怖れなきゃいけないものを、どうして閉じこめようなんて考えたのさ」
このように、ずっと強い者を怒らせたなら、当然身から出た錆を忍ぶことになるのだ。

子供が学校で友だちの書板をくすね、母親に持ち帰った。母親は打擲しないばかりか、これを褒めたので、二度目は着物を盗んで手渡すと、前にもまして感心していた。
時が移り、この少年も若者になった頃、もっと大きな盗みに手を染めるようになっていたが、ある時、盗みの現場を捕まって、後手に縛られ、処刑場に引かれて行った。母親がその後を追い、胸を叩いて嘆いていると、若者は、
「おっ母の耳に入れたいことがある」と言った。そして母親が寄って来るや否や、その耳に食いつき、噛み切ってしまった。親不孝者めと罵るのに対し、息子の言うには、
「初めて書板を盗んで渡したあの時、もし打つすえてくれていたら、捕まって死刑になるまでのことにはなかなかっただろうに」
初めに阻止しておかないとますます大きくなる、ということをこの話は説き明かしている。

起こる定めのことは逃れようのがないので、小細工を弄せず、毅然と待ち受けるべきこと。
勇敢で狩の好きな一人息子をもつ心配性の老人がいた。息子がライオンに殺される夢を見たので、夢が正夢となり実現することを恐れ、世にも美しい空中楼閣を造って、そこで息子を守ることにした。そして建物には、心を楽しめるためありとあらゆる動物の絵を描かせ、ライオンの姿もあった。息子はしかし、それを見るほどに鬱屈は募るばかり。ある時、ライオンの前に立つと、
「忌々しい奴め、お前と親父の空夢のせいで、ハーレムみたいな所に閉じこめられた。何としてくれよう」と言うなり、ライオンの目を潰さんものと、壁を殴りつけた。すると木釘が爪の間に刺さり、激しい痛みと鼠蹊部にまで及ぶ炎症を惹き起こした。続いて高熱を発し、それが子供の若すぎる命を奪った。絵に描かれたものとはいえ、ライオンが子供を殺し、父親の細工は何の助けにもならなかったのである。

その昔、ゼウスの命令により、プロメテウスは人間に二つの道を示した。自由の道と奴隷の道だ。プロメテウスが作って見せた自由の道は、初めはごつごつとして抜け出るのもむつかしく、切り立って水場とてなく、棘だらけで危険がいっぱいだが、最後にはうち開け、散歩道や森の木の実や湧き水にあふれ、辛酸の後の憩いに至るようになっている。一方、奴隷の道は、初めは広く平坦で、花咲き乱れ、目や口を楽しめるものにあふれているが、最後には抜け出すのもむつかしい険しい崖道になるのだ。

イソップがこんな話をした。羊飼たちがテントで羊を食べているのを狼が見つけ、近寄って行くと、
「俺がそれをしたら、お前たちはどんなに大騒ぎすることだろう」と言った。

クレオブリネが語った話であるが、月が母親に、体にぴったりと合う服を織っておくれ、と頼んだところ、母親はこう答えた。
「どうしてぴったりのが織れるのさ。お前は今は満月だが、やがて三日月となり、そしてまた両ぶくれになるじゃないか」
同じように、ケルシアス君、愚かでつまらない人間にぴったり合う財産の量はない。欲望や運不運によって、その人の必要とするところが刻々に変わるからだ。

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