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週末読書メモ95. 『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

自ら学ばなければ、歩み寄らなければ、知ることの出来ない世界がある。

そのことを、嫌というほど思い知る1冊。


ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい…

今、こんな若者が激増していると言われます。

本作は、令和時代の若者の特徴や内面に切り込んだ話題作となります。


さっそくだが、いい子には次のような行動原則がある。
・周りと仲良くでき、協調性がある
・一見、さわやかで若者らしさがある
・学校や職場などでは横並びが基本
・5人で順番を決めるときは3番目か4番目を狙う
・言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
・人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
・悪い報告はギリギリまでしない
・質問しない
・タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
・授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
・オンラインでも気配を消し、集団と化す
・自分を含むグループ全体に対する問いかけには反応しない
・ルールには従う
・一番嫌いな役割はリーダー
・自己肯定感が低い
・競争が嫌い
・特にやりたいことはない
本書では、今の若者のこうした行動原則や心理的特徴を「いい子症候群」と定義する。

「いい子症候群」。

この言葉を耳にしたことがある人は、どれほどいるのだろう。

積極性・競争性とは対極にある行動様式、これこそ令和時代の若者の特徴だと述べられます。

「正直、これほどにもなのか…」と思う部分が節々にあります。

しかし、この本を勧めてくれた20歳前半の知人曰く、「頷く箇所ばかりだった」らしいので、それが事実であることは間違いありません。

他にも”究極のしてもらい上手”や”指示を得た魚(指示に対するモチベーションは基本的に高い)”等、他の世代では見られなかった特徴に、思わず言葉に詰まります。


前回取り上げたマイケル・サンデルさんの『実力も運のうち』では、貧富や能力による分断がテーマでした。

本作でのテーマは、世代間での分断。

かねてから、令和時代の若者(Z世代)の特徴は耳にしたところがありましたが、その理解の足りなさを痛感させられます…

それゆえに、自ら学ぶこと、歩み寄ること無しに、この差が近づくこともないことを確信します。なぜなら、(往々にして)その実態は無知な人間の想像をはるかに越えるもののため。


本作の魅力は、令和時代の若者の特徴を取り上げるだけでなく、その要因にも切り込んでいる点です。

筆者の述べる大きな要因は2つ。ゆとり教育、そして、上世代の姿です。

「競争環境を緩和する代わりに、個の経験や体験を重視し、自ら学び、考える意欲や態度を育む」のがゆとり教育だ。
個の経験や体験を重視し、自ら学び考える。自分自身といったん向き合う要素が強い。
一方で、他者とのかかわりについては、競争する代わりに、主体性と協調が強調された。

つまり、その教育方針の功罪として、競争性や(同調性を破るような)革新性は求められず、育成出来なかったと。

挑戦が成長につながっていることを時間できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
私からすれば、そんな因果応用を棚に上げて、「まったく、今の若者は覇気がなくてダメだ」なんて言っているのは滑稽ですらある。何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない。

そしてこれ。

「いい子症候群」という言葉は、最近強調されるようになったのかもしれませんが、その片鱗は、10~20年前からあったように感じます。


だからこそ、本書の最後に書かれた言葉を、今を生きる1人でも多くの日本人が胸に刻む必要があると感じます。

若者が変化を好まず、挑戦を避け、守り一辺倒の内向き志向となっているのは、若者が育ってきた日本社会がそうだからだ。
挑戦や変化が成長につながらず、チャレンジしても得られるものがないと若者が思っているのは、大人がそう見せつけてきたからだ。
自分が出来もしないし、やりもしないことを、若者に押し付けるなんて搾取以外の何者でもない。
したがって、本書の提言は1つ。
大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ。

「まずはあなたが挑戦するべきだ」

場所や時代、立場が違えば、分断は必ず生まれる。ゆえに、自ら学び歩み寄らなければならない。

そして、その分断を埋めたいと思うのであれば、自らが動き、その姿を示さなければならない。

そんな大切なことを、改めて気付かされる1冊でした。


【本の抜粋】
さっそくだが、いい子には次のような行動原則がある。
・周りと仲良くでき、協調性がある
・一見、さわやかで若者らしさがある
・学校や職場などでは横並びが基本
・5人で順番を決めるときは3番目か4番目を狙う
・言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
・人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
・悪い報告はギリギリまでしない
・質問しない
・タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
・授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
・オンラインでも気配を消し、集団と化す
・自分を含むグループ全体に対する問いかけには反応しない
・ルールには従う
・一番嫌いな役割はリーダー
・自己肯定感が低い
・競争が嫌い
・特にやりたいことはない
本書では、今の若者のこうした行動原則や心理的特徴を「いい子症候群」と定義する。

若者における横並び意識が強い中で、自分だけが分け与えられることへの違和感だ。最も公平な分配方法は平等分配だと考えるような若者にとって、強制的に差を付けられることは落ち着かなく、人目が気になる負の要素でしかない。

大人は、何でもしてあげるのは良くないことだと薄々感じているにもかかわらず、つい手を貸してしまうものなのだ。若者に何かしてあげたいという欲=大人の自己効力感を、若者は見事に操っている。
(中略)大人側がこの流れを変えたいと強く願うなら、それは簡単だ。
大人側が自らの「してあげたい欲求」を封印すること。それに尽きる。

「競争環境を緩和する代わりに、個の経験や体験を重視し、自ら学び、考える意欲や態度を育む」のがゆとり教育だ。
個の経験や体験を重視し、自ら学び考える。自分自身といったん向き合う要素が強い。
一方で、他者とのかかわりについては、競争する代わりに、主体性と協調が強調された。

いい子症候群の、指示に対するモチベーションは基本的に高い。まさに指示を得た魚だ。
(中略)自分に自信がなく、自己肯定感が低いがゆえに作動する、極めて高い承認欲求の一種、それが貢献欲求。上司からすれば、誰でもできることをお願いしたのに、「任せられた」「貢献している」と受け取る若者も少なくない。
よって指示の出し方は、彼らと接する上で非常に重要だ。原則として、指示は具体的なら具体的なほどよい。

挑戦が成長につながっていることを時間できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
私からすれば、そんな因果応用を棚に上げて、「まったく、今の若者は覇気がなくてダメだ」なんて言っているのは滑稽ですらある。何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない。

若者が変化を好まず、挑戦を避け、守り一辺倒の内向き志向となっているのは、若者が育ってきた日本社会がそうだからだ。
挑戦や変化が成長につながらず、チャレンジしても得られるものがないと若者が思っているのは、大人がそう見せつけてきたからだ。
自分が出来もしないし、やりもしないことを、若者に押し付けるなんて搾取以外の何者でもない。
したがって、本書の提言は1つ。
大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ。

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