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週末読書メモ15. 『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?

上記の問いに答える鍵は、地理でも、気候でも、文化でも、あるいは為政者の無知でもない。問題なのは政治・経済上の「制度」なのだ。

本書の主眼は、世界の盛衰・不平等を決定づけるメカニズムの説明です。

この問いの結論は、政治経済制度の違い、つまるところ、ガバナンスの違いだと。持続的な経済成長には、イノヴェーションが不可欠であり、そのインセンティヴを形成しうる政治制度があるか否かだ、と筆者は主張します。


そうか、ここに収斂させるのか。

本書を通じて、読み手の視座が1段階、2段階上がります(少なくても自分は上げざるを得ませんでした)。

一経営体・一産業の経済システムを、いかに舵取るべきかは考え続けてきましたが、政治の役割を分かっていませんでした。正直なことを言うと、結局は個人・企業次第ではないか、と政治をどこか軽んじてすらいました。

読後、政治の力を理解しきれていなかった自分を恥じました。個人・企業の活動は、政治の上に形づくられるものだと…

ある国が貧しいか裕福かを決めるのに重要な役割を果たすのは経済制度だが、国がどんな経済制度を持つかを決めるのは政治と政治制度だということだ。

経済と政治は双子のようなものであり、更に言うと、政治の方が双子の兄にあたると。

この意味は重い。たとえ、その他多くの興味深い細部を捨象した理論としても(筆者もあえて焦点を絞っていることは言及済)。


リーダーの役割として、メンバーが創意工夫・努力できる環境を作る必要性は、多くの人の同意を得るかと思います(リーダーが一生懸命頑張るのは当たり前で)。

しかしながら、その必要性、および、どこまでのレベルでやるべきかを、これでもかと言うほど頭に叩きつけらるような一冊でした。


「ガバナンス」。

ずいぶんと時間がかかってしまったけれど、(そして、まだぼんやりとしているけれど、)戦略や兵站と同等かそれ以上に重要だと、ようやく腹落ちできました。

まだ先、でも、いずれはガバナンスとも向き合わなければ。


最後に、歴史学者ならではの一節も深甚です。

歴史は宿命ではないことを如実に物語っている。悪循環があるにもかかわらず、収奪的制度に包括的制度が取って代わることはある。だが、そうなるのは自動的ではないし、容易でもない。多くの場合、国家がより包括的な制度に向かって大きく前進するためにはさまざまな複合的な要因が必要だ。ことに決定的な岐路と、改革や既存の好都合な制度を推進する人々の幅広い連携が重なる必要がある。そのうえで、ある程度の幸運がカギとなる。

決定的な岐路、推進する人々の連携、そして、ある程度の幸運。

チャンスの女神には前髪しかない。向かってきた時に掴めなければならない。だとしたら、せめて、掴めるようにすることに全力を尽くしたいです。


【本の抜粋】
合衆国がこんにちメキシコやペルーよりもはるかに裕福な理由は、経済と政治の双方における制度が、企業、個人、政治家に対して、どんなインセンティブを形成するかという点にある。
(中略)経済制度は経済的インセンティブを形づくる。知識を身につける、貯蓄して投資する、イノヴェーションを起こして新しいテクノロジーを取り入れる、といったもろもろのインセンティヴだ。人々がどんな経済制度の下で生きるかを決めるのが政治的制度プロセスであり、このプロセスがいかに働くかを決めるのは、国の政治制度である。

国家が経済的に衰退する原因は、収奪的制度にある。そうした制度のせいで貧しい国は貧しいまま、経済成長に向かって歩み出すことができない。
(中略)歴史も言語も文化も大きく異なる。すべてに共通するのが、収奪的制度だ。すべての事例で、そうした制度の土台をなすエリートは、一般国民の大多数の犠牲の上に至福を肥すため、そしてみずからの権力を維持するために、経済制度を構築する。国によって歴史と社会制度が違うので、エリートの性質と収奪的制度の細部も異なってくる。だが、そうした収奪的制度がなくならない理由にはつねに悪循環が絡み、そうした制度が国民の貧困に果たす役割は、程度の差こそあれ似通ってくる。

歴史は宿命ではないことを如実に物語っている。悪循環があるにもかかわらず、収奪的制度に包括的制度が取って代わることはある。だが、そうなるのは自動的ではないし、容易でもない。多くの場合、国家がより包括的な制度に向かって大きく前進するためにはさまざまな複合的な要因が必要だ。ことに決定的な岐路と、改革や既存の好都合な制度を推進する人々の幅広い連携が重なる必要がある。そのうえで、ある程度の幸運がカギとなる。

私たちの理論の核となるのは、包括的な政治・経済制度と繁栄のつながりだ。所有権を強化し、平等な機会を創出し、新たなテクノロジーとスキルへの投資を促す包括的な制度は、収奪的制度よりも経済成長に繋がりやすい。収奪的制度は多数の持つ資源を少数が搾り取る構造で、所有権を保護しないし、経済活動へのインセンティブも与えない。包括的経済制度は包括的政治制度に支えられ、かつそれを支える。包括的政治制度とは、政治権力を幅広く多元的に配分し、ある程度の政治的中央集権化を達成できて、その結果、法と秩序、確実な所有権の基盤、包括的市場経済が確立されるような制度だ。

社会間にある既存の制度の相違そのものが、過去の制度の変化の産物だ。制度の変化の道筋が社会によって違うのはなぜだろうか?その答えは、制度的浮動にある。二つの孤立した生物個体群の遺伝子が、いわゆる進化的浮動あるいは遺伝的浮動のプロセスにおいてランダムな突然変異のせいでゆっくりとかけ離れていくように、当初は似通っていた二つの社会は制度的浮動により、やはりゆっくりとであるが、かけ離れていく。

制度的浮動は小さな相違につながるが、そうした浮動と決定的な岐路との相互作用が制度の乖離につながり、そして、その乖離がその後、より大きな制度上の相違を生み、その相違に次の決定的な岐路が影響するのだ。
カギを握るのは歴史である。なぜなら、制度的浮動を通じて決定的な岐路に重要な役割を果たすのかもしれない相違をつくりだすのは、歴史的プロセスだからだ。決定的な岐路そのものが歴史上の転換点なのだ。また、歴史的に構築されてきた制度の相違の性質を理解するためには歴史を研究しなければならないことが、悪循環と好循環からわかる。

長期的な経済発展の成否を左右する最も重要なファクターは、地理的・生態学的環境要因でも、社会学的文化要因でも、いわんや人々の生物学的・遺伝的差異でもなく、政治経済制度 ー 最近の言葉でいえばガバナンスの違いである。自由な言論に支えられた民主政治と、自由で開放的な市場経済という制度セットこそが、創造的破壊を伴う経済成長の安定した継続を可能とする。こうした政治経済制度の整備なくしては、物的・人的資本の投入も、知識や技術の導入もむなしい ー

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