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週末読書メモ30. 『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの集大成。

帯に書かれた謳い文句、”偉大な企業をつくる「地図」を手に入れよう”。まさに「地図」であり、「コンパス」のような一冊でした。


本書は、『ビジョナリー・カンパニー』①から④に続く、シリーズ最新作。

一作目、偉大な企業の永続の源泉を「基本理念」にあると解説した『ビジョナリー・カンパニー ー 時代を超える生存の原則』。

二作目、飛躍する企業とその経営者の特徴を解説した『ビジョナリー・カンパニー② ー 飛躍の法則』。

三作目、偉大な企業の衰退の真実を解説した『ビジョナリー・カンパニー③ ー 衰退の五段階』。

四作目、不確実でカオスな環境でも勝ち抜く企業とその経営者の特徴を解説した『ビジョナリー・カンパニー④ ー 自分の意思で偉大になる』。

そして、本作『ビジョナリー・カンパニーZERO ー ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』。

本書の紹介文では、スタートアップや中小企業が偉大になる方法を解説したとありますが、内容としては、これまでの集大成となっています。

中小企業が世界レベルの偉大な企業になるため、「リーダーシップ・スタイル」、「ビジョン」、「戦略」、「イノベーション」、「戦術の卓越さ」という5つの観点から、やるべきこと・実現できることが記されています。

いやはや、凄過ぎた。いったい何箇所に線を引いたのだろう。


本書および『ビジョナリー・カンパニー』シリーズでは、即効性のある小手先のテクニックではなく、原理原則レベルのことが記されています。

金言だらけの内容の中でも、最も素晴らしかったのは、筆者のこれまでの研究から導き出された最も本質的な概念を選りすぐり、体系化した「偉大な会社を動かすもの ザ・マップ」と呼ばれるフレームワークです。

「偉大な会社を動かすもの ザ・マップ」
(インプット)
第1段階 規律ある人材
・第5水準のリーダーシップの醸成
・最初に人を選び、その後に目標を選ぶ(正しい人をバスに乗せる)。
第2段階 規律ある思考
・ANDの才能を活かす
・厳しい現実を直視する(ストックディールの逆説)。
・ハリネズミの概念を明確にする。
第3段階 規律ある行動
・弾み車を回転させて勢いをつける。
・20マイル行進(規律ある行動でブレークスルーに到達する)。
・銃弾に続いて大砲を発射し、更新と拡張を続ける。
第4段階 永続する組織
・建設的なパラノイア(衰退の5段階を回避する)。
・時を告げるのではなく、時計をつくる。
・基本理念を維持し、進歩を促す(新たなBHAGを実現する)。
10X型企業
・運の利益率を高める。
↓↓↓
(アウトプット)
卓越した結果
唯一無二のインパクト
永続性

独自の言い回し・例えが多く、本書を精読し、内容を理解する必要がありますが、知っているか否かで天地の差が付いてしまうほどのものです…

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズを全て読んで感じたことは、偉大な企業になるには、組織、そして、そのリーダーが、偉大な存在になる必要性が一貫して説かれていることです。

“偉大な存在”という極めて抽象的なあり方について、どんな要素が必要なのか、そして、どれほどのレベルで必要なのか、これらのことを知れたことが最大の収穫でした。

(※より詳細な内容は、下の記事に分かりやすく要約されていました)


余談ですが、本書で驚いたことは、ファーストリテイリングの柳井正さんが、その膨大な成功と挫折に基づき書いた『経営者になるためのノート』にある内容と、非常に似通っていたことです。

(抜粋『ビジョナリー・カンパニーZERO 』)
自らの言葉を行動で裏づけない経営者には、誰も共感しない。もちろん完璧な人間などいない。誰もが100%理想どおりには生きられない。しかし理想の25%も実践しない経営者もいる。彼らの言葉は飾りにすぎない。その不誠実さを見ると吐き気がする。リーダーとなる資格はない。そして当然ながら、このような経営者に偉大な企業はつくれない。
言行一致、有言実行あるのみだ。

(抜粋『経営者になるためのノート』)
リーダーシップというのは人間が人間に対してやることだから、もっと何か、人間的に根源的なことが重要になってくるようです。
あなたが言行一致で首尾一貫した人間であるかどうかということです。

「あなたは、あなた自身が言ったこと、約束したこと、あるいはあなた自身が言っていることの最大の実践者ですか」ということです。
メンバーというのは、あたなの言葉を信じるのではなく、言葉を言った後の、あなたの背中に信頼性を見出すものなのです。

あなたが信念にしていること、大切にしている価値観、追っかけているもの、こういったものが、ぶれない、変わらない。
こういった姿勢が、人間の芯として感じられる人でないと、相手から本当に信頼を受けることはおぼつかないのではないかと思います。

お二人のこれまでの過程は異なるにも関わらず、上記をはじめとし、同じ原理原則に到達していることに、感動すら覚えました。

どの内容も決して真新しいものではないわけで、経営も人間が行う営みである以上、その原理原則自体は、古今東西変わらないものなんだろなあ。

だからこそ、やれるか否か、どれほどの基準でやれるかの二点に尽きると。


本書でも、リーダーの思想行動というあり方を磨くことが、偉大な企業になれる(可能性を生む)必要条件だと言っています。

この本は、既存の企業を永続的な優良企業に変える方法について書かれています。ジム・ジェンテスのように、自分の会社を特別なものにしたい、賞賛と誇りに値する会社にしたいと考えている人のために書きました。もしあなたが、偉大な会社にしたいと考えている企業のリーダーであれば、この本はあなたのためのものです。

主に中小企業のリーダーのために書いています。なぜでしょうか?通常、会社がまだ小さくて、リーダーの価値観を体現出来ているうちに偉大さの基盤は築かれているからです。

IBMが偉大なのは、IBMが今日のような一枚岩になるずっと前にトム・ワトソンがやったことがあるからです。NIKEが偉大なのは、NIKEがゴリアテに立ち向かう不器用なダビデだった頃、フィル・ナイトが行ったことがあったからです。3Mが偉大なのは、数十年前にウィリアム・マッキン グナイトが会社を彼の価値観に合わせて修正したからです。L.L.ビーンが偉大なのは、メイン州フリーポートの1つのビルで小さな会社を運営していた時のレオン・ビーンの行動があったからです。パタゴニアが偉大な企業であるのは、企業の形成期にクリスティン・マクディビット(パタゴニアの前CEO)が残した忘れられない足跡があるからです。

あり方レベルを変えていくには、極めて長い月日が必要である以上、何者でも無い時からどれ程積み重ねられるか、か…

結局、近道や抜け道はなく。やるっきゃない!


【本の抜粋】
私たちはアップルのみごとな復活を、iPodやiPhoneと結びつけて考えがちだ。もちろんジョブズは、優れた製品開発への情熱を失ってはいなかった。ただ最高の製品を生み出しつづける、時代を超える偉大な企業をつくる唯一の方法は、正しい文化の下で正しい人材が働く状態を生み出すことだと学んだのだ。

自らの言葉を行動で裏づけない経営者には、誰も共感しない。もちろん完璧な人間などいない。誰もが100%理想どおりには生きられない。しかし理想の25%も実践しない経営者もいる。彼らの言葉は飾りにすぎない。その不誠実さを見ると吐き気がする。リーダーとなる資格はない。そして当然ながら、このような経営者に偉大な企業はつくれない。
言行一致、有言実行あるのみだ。

3つの会社に共通していたのは、①自分たちにはミッションをやり遂げられるという信念と、②挑戦する意欲があったことだ。社運を賭ける意欲は、ビジョンを設定するプロセスに欠かせないものだ。不安全地帯に位置するミッション、確実に成功する保証はないが、心のなかで自分たちならできると思える賭けを選ぶのは、経営者の仕事だ。
ミッションは分析だけを頼りに設定するものではなく、分析に直感を足し合わせて決めるものだ。野心的なミッションが100%実現可能か、事前に証明することはできない。要は実現可能だとあなたが直感的に思えるかどうかだ。そのとき役に立つのが、次のシンプルな事実だ。「ひとたび大胆な挑戦にコミットすると、成功の確率は変化する」

大成功した個人や企業は、同じような立場にあった人や企業に比べて、特別多くの幸運や不運に遭遇したわけでもなければ、幸運の質やタイミングが特別良かったわけでもない。そうではなく幸運からより多くのリターンを得ていたのだ。ハンセンと私の結論は「問題は運に恵まれているか否かではない」ということだ。企業を経営していれば、幸運も不運も間違いなく訪れる。それ以上に重要なのは、巡ってきた幸運を「どう活かすか」だ。偉大なリーダーであるかどうかの5割近くは、予想外の出来事にどう対処するかで決まると私は考えている。

私たちの研究すべてで明らかなのは、偉大な企業と凡庸な企業を分けるうえでの規律の重要性だ。真の規律には精神的な自立が求められる。会社の価値観、パフォーマンス基準、長期的野心に反する言動に従わせようとする圧力を拒絶する力だ。真の規律と呼べるのは自己規律だけだ。困難でも、偉大な成果を生み出すために必要なことをすべてやる、という内なる意思である。規律ある人材がいれば、ヒエラルキーは要らない。規律ある思考ができれば、煩雑なルールや手続きは要らない。規律ある行動ができれば、過剰な統制は不要だ。規律の文化が起業家精神と組み合わせれば、組織は偉大な成果の実現に突き進んでいく。

イノベーティブであり続ける企業は、自由と自律の必要性をよく理解している。
(中略)突き詰めると、行動の自由、実験する余地があることは、西側経済が中央集権的な東側経済ブロックより優位に立った最大の要因だ。
(中略)しかし人間の組織には、まさに逆方向へ向かおうとする傾向がある。想定外のサプライズを徹底的に抑えようと、管理と秩序を求めるのだ。
(中略)企業の進化のプロセスでの大きな皮肉は、あらゆる企業は誕生する時点では非常にイノベーティブなのに、成長し、歳月を重ねるなかでイノベーティブな能力を失っていくことだ。創業初期に成長をもたらした精神に、息の詰まる官僚主義や集権的管理主義という厄介なつる草が絡みつく。
あなたの会社がそんな事態に陥るのを許してはならない。

ここで組織にまつわる重要な真実を指摘しよう。「組織には混乱がつきものだ」。あらゆる問題を解決するような万能薬や構造はない。混乱を完璧に抑えようとする試みは、必ず失敗する。もちろん分権化には非効率でコストが増える部分もある。ただ「ここは自分たちの小さな会社なのだ」という当事者意識は、社員の意欲を高め、多少無秩序でも強力なイノベーションを推進していくはずだ。
「民主主義やたしかに混乱に満ちた非効率な制度だが、他のどんな選択肢よりも優れている」と語ったのはハリー・S・トルーマンだ。
分権化と自律性についてもまったく同じことが言える。統制が効かず、非効率に思える。そしてある意味では、実際そうなのだ。業務が重複し、顧客から見て分かりにくいこともあるかもしれない。技術を共有するのも難しい。とにかく手に負えない印象がある。それでも自由や民主主義と同じように、他のどんな選択肢よりも優れている。圧倒的に。

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