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週末読書メモ71. 『RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

答えのない不確実な世界で、答えを創るヒントがここに。


昨今、「1万時間の法則」や「グリット」等、ビジネスでも、スポーツでも、早期より狭い分野に絞ってフォーカスすること(超専門家化)が、望ましいという話を耳にします。

そんな状況に一石を投じたのが、本作となります。

成功した人たちは、ある分野で得た知識を別の分野に応用するのがうまく、また、「認知的定着」を避けるのも上手だった。彼らはホガースが言うところの「遮断装置」を用いていた。つまり、外部の経験や例を活用して、もはや効果がないかもしれない従来の解決方法に依存する傾向を遮断していた。彼らは、昔ながらのパターンを「避ける」スキルを持っていた。問題が曖昧で、明確なルールがない「意地悪な」世界では、「幅(レンジ)」が人生を生産的に、かつ効率的にするための術となる。

副題にもある通り、知識の「幅(レンジ)」が強力な武器になると。

その実は、アナロジー思考(水平思考)が、この不確実で意地悪な世界でも答えを創る鍵である、と述べた一冊でした。


現代の生活で思考の「レンジ(幅)」が必要なのは真実だ。思考の幅があることによって、遠く離れた領域やアイデアが結びつく。
(中略)「テーマは一つの特性から別の特性へと容易にシフトし、適切なカテゴリーを構築する。対象物を実態(動物、花、道具)で分類したり、材料(木、金属、ガラス)、あるいは大きさ(大きい、小さい)で分類したりする。一つのカテゴリーから別のカテゴリーへと自由に動ける能力は『抽象的な思考』の大きな特徴である」

「訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる」。言い換えると、多くの文脈で学べば学ぶほど、学習者は抽象的なモデルをより多く構築するということだ。学習者は、これまでに見たことがない状況に知識を応用するのがうまくなる。これこそが、クリエイティビティーの根幹だ。

アナロジー思考。つまり、類推力。

それ自体をテーマにした、細谷功さんの一冊でアナロジー思考とは、”複雑な事象に潜む本質的な構造を見抜き、それを別の分野に応用すること”だと。

不確実性、複雑性が増した現代。正解など無いその世界の中で生き残るには、新しい答えを創る必要性が増しています。正解を導くロジカルシンキングでは限界がある中でも、突破口となりうるのが、このアナロジー思考であり、幅(レンジ)、と本作の筆者も主張します。


前述の細谷さんの本で、アナロジー思考の発想力の要素には2つあると言います。1つは「それらをいま発想の対象としているものに結びつけること」。そしてもう1つが「多様な経験や知識を持っていること」。つまり、料理をする技術、そして、そもそもの料理をする材料の量質だと。

この後者が、本作の筆者が述べている幅(レンジ)ということかと思います。では、レンジを広げるためにはどうすればよいか。それは「学習」と「実験」だと言います。

「自分の信念をうまくアップデートできる人は、よい判断ができる」。その人たちは、賭けをして負けたら、勝った時に信念を強化するのと同じように、負けたロジックを受け入れ修正する。
このことは、一つの言葉で表すことができる。「学習」だ。学習では、経験をすべて脇に置かなければならない場合もある。

無数の研究が示しているように、あちこちに寄り道をしながら考え、実験するほうが、特に不確実生の高い現代では力の源になる。ヘッドスタートは過剰評価されている。最高裁判事のオリバー・ウェンデル・ホルムズは、アイデアを自由に交わし合うことについて、1世紀ほど前にこう書いている。
「それは実験である、人生のすべてが実験であるように」


かのビル・ゲイツさんも絶賛の本作(余談ですが、2015年時点で、1万4000冊以上の蔵書がある彼の知識のレンジはどうなっているのだろうか…)。

我が意を得たりという内容でした。個人的な経験としても、読んだ書籍が200冊、500冊、1,000冊を越えるごとに、見える世界・創れる解に変化があった実感があります。

この筆者は、自らの主張の正当性を増すために、「スペシャリスト」を揶揄し、「ゼネラリスト」を推奨しています。おそらく、そのどちらが良いということではなく、どちらのやり方にしても相応の能力と努力は必要。

しかしながらも、「スペシャリスト」や「論理的思考」が持て囃される中で、「ゼネラリスト」や「アナロジー思考」での戦い方もあることを示した点でも、本作は十分に価値があるように思えます。

現代においては、知的労働力・情報の量質が、組織における価値源泉となることは、揺るぎようの無い事実。その中で、いかに個人・チームの知識の幅(レンジ)を生み出すか。これが、今後の大きな競争優位性となる鍵になることも示している気がしてなりません(そして、それは農業のようなレガシーな産業であれば尚更)。


【本の抜粋】
成功した人たちは、ある分野で得た知識を別の分野に応用するのがうまく、また、「認知的定着」を避けるのも上手だった。彼らはホガースが言うところの「遮断装置」を用いていた。つまり、外部の経験や例を活用して、もはや効果がないかもしれない従来の解決方法に依存する傾向を遮断していた。彼らは、昔ながらのパターンを「避ける」スキルを持っていた。問題が曖昧で、明確なルールがない「意地悪な」世界では、「幅(レンジ)」が人生を生産的に、かつ効率的にするための術となる。

20世紀において、時代が進むにつれて、IQテストの正解数が伸びていくことは、「フリン効果」と名づけられ、今では30ヵ国以上で立証されている。その伸びは驚異的で、10年ごとに3ポイント。たとえば、現在平均的なスコアの成人は、1世紀前なら上位2パーセントに入る。
(中略)直接的に観察できるモノや現象に関する言葉では、現代の子どもが祖父母を負かすことはなかった。だが、直接に感知できない概念では、大幅に進歩していた。

現代の生活で思考の「レンジ(幅)」が必要なのは真実だ。思考の幅があることによって、遠く離れた領域やアイデアが結びつく。
(中略)「テーマは一つの特性から別の特性へと容易にシフトし、適切なカテゴリーを構築する。対象物を実態(動物、花、道具)で分類したり、材料(木、金属、ガラス)、あるいは大きさ(大きい、小さい)で分類したりする。一つのカテゴリーから別のカテゴリーへと自由に動ける能力は『抽象的な思考』の大きな特徴である」

「訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる」。言い換えると、多くの文脈で学べば学ぶほど、学習者は抽象的なモデルをより多く構築するということだ。学習者は、これまでに見たことがない状況に知識を応用するのがうまくなる。これこそが、クリエイティビティーの根幹だ。

不確実な環境と意地悪な問題を前にした時、幅広い経験はとても貴重だ。親切な問題には、「狭く深く」の専門性が大きな効果を発揮する。問題は、超スペシャリストがその専門分野で高い力を持っているために、彼らが意地悪な問題にも魔法のような力を発揮するではないかと期待してしまうことだ。だが、そうした期待は悲惨な結果を招く。

「自分の信念をうまくアップデートできる人は、よい判断ができる」。その人たちは、賭けをして負けたら、勝った時に信念を強化するのと同じように、負けたロジックを受け入れ修正する。
このことは、一つの言葉で表すことができる。「学習」だ。学習では、経験をすべて脇に置かなければならない場合もある。

無数の研究が示しているように、あちこちに寄り道をしながら考え、実験するほうが、特に不確実生の高い現代では力の源になる。ヘッドスタートは過剰評価されている。最高裁判事のオリバー・ウェンデル・ホルムズは、アイデアを自由に交わし合うことについて、1世紀ほど前にこう書いている。
「それは実験である、人生のすべてが実験であるように」

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