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週末読書メモ46. 『ゲームの変革者 イノベーションで収益を伸ばす』
(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
変革者の姿、ここにあり。圧巻。本物。
今や、事業も人材も一流と呼び声高いP&G。
そのP&Gの中興の租、A・G・ラフリーと、世界的な実務よりの経営学者、ラム・チャランの共著となります。
(ラム・チャランさんの『経営は実行』は紛れもなく名著)
本書は、本当に結果を出した人・ゲームを変革した人でしか記せない知見に溢れています。
本書の根幹は、サブタイトルにもあるようにイノベーション。ラフリーさんの功績の肝は、イノベーションを業務の全てに、組織の全てに取り込んだことになります。
P&Gにおける私の仕事は、イノベーションをすべての業務に取り込んでいくことだ。
(中略)工場の製品工程を考えてみると、インプットがあり、それが何段感もの加工作業を経て、アウトプットとなっていく。私たちはイノベーションの流れでも同じことが言えるはずだと考えた。
(中略)第二に、製品・技術・サービスのみにならず、ビジネスモデル、サプライチェーン、コンセプト、経費削減に関するものも、イノベーション対象に含めることとした。
(中略)第三に、イノベーションはリスクが高いことは周知の事実だから、リスク要因をあらかじめ把握し、それを管理するツールやノウハウを身につけた。
イノベーションは企業を攻めの姿勢に変える。
(中略)イノベーションを事業の中心に置き、トップから末端の社員までがイノベーションを中心に考えるようになると、業績が改善される。同時に、もっと生産的で、もっと機敏で、もっと人を巻き込み、もっと楽しく働く方法がみつかる。
この視点は重要。イノベーションは、画期的なプロダクト・サービスだけの物だと捉える人も少なくありませんが、プロセスをはじめ、全てに適用可能であることを示しています(トヨタやユニクロだって、際立っているのは、そのビジネスプロセス・オペレーション)。
そして、プロダクトよりも、オペレーションの方が、イノベーションの結果を出せる領域だと、実業の世界で生きる人間としては感じてなりません。
加えて、ラフリーさんの凄みは、下の内容から滲み出ています。
「重要なことからやっていった」の一言に尽きるが、どうやっていったのかが読者の知りたいところだろう。
最初のステップは、業務運営能力を改善して、経営資源をイノベーションに注力できるようにすることだった。
よいチームはホームランだけに頼らない。チャンスがきたら、すかさずつかむ。単打、二塁打でも多くの点を稼ぎ出せる。同様に、ささやかなイノベーションでもたゆまず積み重ねていけば、やがてゲームを変えることができる。
その進め方は、ぜひ取り入れたい。ラフリーさんは傑出した戦略家である上で、現実の世界で結果を出されてきた人だからこそ、兵站や弛まむ実行によって、ゲームを変えると明言されています。
変革を進めるにあたり、前回の『企業変革の核心』では概念レベルで重要な示唆がありましたが、今回の『ゲームの変革者』では戦略から実務までのレベルで重要な示唆に富んでいます。
(些細なことだけど、下のような日常の行動も重要だと説いています)
イノベーション・リーダーには情報が必要だ。だが、すべての情報が数値化できるとは限らない。リーダーは、いつでも話を聞くよ、という態度を示すことが重要だ。廊下を歩こう。個室のドアを開けておこう。コーヒーマシンのそばで油を売ろう。こちらから声をかけて会話をもとう。電話に答えよう。会社のジムで汗を流すときはヘッドフォンを外しておこう。
つまり育成は、体系的に行うのと同時に、ちょっとした雑談を通じて行うものである。
今年度は、クレイトン・M・クリステンセンをはじめ、他にも色々とイノベーションに関わる本を読みましたが、抽象と具体の両方から、アプローチする必要性を感じざるを得ません。
本業の農業を考えると、生産性と収益性が、事業・組織の重要指標となりうる中、この2年間、前者のテコ入れ出来た結果、いよいよイノベーションの世界に足を踏み入れていかなければ。
イノベーションと本気で向き合うと、その難易度の高さ、結果が出るまでの長さに歯がゆいこともあるけれど、やるしかなく。
けれども、かのラフリーさんですら、一つ一つの積み重ねから、大きなうねりを生んでいったという事実は希望でもあります。
【研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし(豊田章男)】
「イノベーションは突然生まれるものではない。トヨタは『3i』の会社だと繰り返し申し上げている。イミテーションから始めて、インプルーブメントを続け、イノベーションを呼び込む。良いと思うことは、真似をする。昨日よりも今日、今日よりも明日がよくなるように、ベターベターの精神で、改善を重ねる。改善後は改善前。つまり、終わりなき改善、その先にイノベーションがある」
それは、TOYOTAですら。
"イミテーションから始めて、インプルーブメントを続け、イノベーションを呼び込む"
"終わりなき改善、その先にイノベーション"
自分が積み重ねてきた数百のカイゼンでは、そもそもの絶対量が足りないという話で、何千・何万のカイゼンの先、きっとゲームは変わっているはず。
【本の抜粋】
P&Gにおける私の仕事は、イノベーションをすべての業務に取り込んでいくことだ。
(中略)工場の製品工程を考えてみると、インプットがあり、それが何段感もの加工作業を経て、アウトプットとなっていく。私たちはイノベーションの流れでも同じことが言えるはずだと考えた。
(中略)第二に、製品・技術・サービスのみにならず、ビジネスモデル、サプライチェーン、コンセプト、経費削減に関するものも、イノベーション対象に含めることとした。
(中略)第三に、イノベーションはリスクが高いことは周知の事実だから、リスク要因をあらかじめ把握し、それを管理するツールやノウハウを身につけた。
「重要なことからやっていった」の一言に尽きるが、どうやっていったのかが読者の知りたいところだろう。
最初のステップは、業務運営能力を改善して、経営資源をイノベーションに注力できるようにすることだった。
イノベーションは企業を攻めの姿勢に変える。
(中略)イノベーションを事業の中心に置き、トップから末端の社員までがイノベーションを中心に考えるようになると、業績が改善される。同時に、もっと生産的で、もっと機敏で、もっと人を巻き込み、もっと楽しく働く方法がみつかる。
適切で意欲的な目標を定めるにあたって会社は、豊富な情報と創造力を駆使して新しい市場でのポジションを決めなくてはならない。あるいは既存市場を構築し直して、戦略と戦術を新たに考えなくてはならない。つまり、どこで戦い、どのようにして勝つかを決める必要がある。
よいチームはホームランだけに頼らない。チャンスがきたら、すかさずつかむ。単打、二塁打でも多くの点を稼ぎ出せる。同様に、ささやかなイノベーションでもたゆまず積み重ねていけば、やがてゲームを変えることができる。
イノベーション・リーダーには情報が必要だ。だが、すべての情報が数値化できるとは限らない。リーダーは、いつでも話を聞くよ、という態度を示すことが重要だ。廊下を歩こう。個室のドアを開けておこう。コーヒーマシンのそばで油を売ろう。こちらから声をかけて会話をもとう。電話に答えよう。会社のジムで汗を流すときはヘッドフォンを外しておこう。
つまり育成は、体系的に行うのと同時に、ちょっとした雑談を通じて行うものである。
イノベーション・リーダーのみる夢は違う。世界をそのまま受け入れるのではなく、どう変えるかと考える。どうすればゲームを変えられるかを考え出そうとする。ほかの人ならうっかり見過ごしてしまうような可能性を探し、新鮮な目で外部環境を見る。そのようにして新たな戦略をつくり出し、もっと強気な目標、適切な目標を選び、それを実現することができるのだ。
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