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週末読書メモ60. 『私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「私たちが一ドル節約するたびに、他社との競争で一歩先んじることになる。それこそ、私たちが目指していることである」。

世界一の売上を叩き出す企業の強さが、ここに込められています。


石油も、自動車をも超え、売上高世界一となった小売業の覇者、ウォルマート社(その売上額はなんと約50兆円/年)。

本書は、その創業者である、サム・ウォルトンの自伝となります。

成功にはつねに代償が伴うものなのだろう。それをいやというほど思い知らせれたのは、一九八五年一〇月、「フォーブス」誌が「全米一の金持ち」として私の名前を報じた時である。
「サム・ウォルトン?何者だい?」当時、ニューヨークのマスコミ関係者は、こういって首をかしげたに違いない。だがたちまち、ここベントンビルには、レポーターやカメラが大挙して押しかけた。思うに、私が札びらいっぱいのプールに飛び込んだり、湖畔で美女がベリーダンスを踊るのを見ながら、特大の葉巻に一〇〇ドル紙幣で火をつける光景でも期待したのだろう。
だが、あいにく、私は彼らの期待にそえる人間ではなかった。彼らが目撃したのは、荷台に猟犬用の檻を積んだ古ぼけた小型トラックを運転する男であり、ウォルマートのロゴ入りの野球帽をかぶり、散髪は町の床屋ですませる男だった。

ウォルマートが年商五〇〇億ドルを超える会社に成長したのに、なぜ今でもそんなにケチケチするのか、と尋ねられることがある。理由は簡単だ。一ドルの価値をよく知っているからである。私たちの使命はお客に価値を提供することだが、その価値には品質やサービスばかりではなく、お客の支出を節約することも含まれる。ウォルマートが一ドルを浪費すれば、それはお客の懐に直接響くのである。逆に、私たちが一ドル節約するたびに、他社との競争で一歩先んじることになる。それこそ、私たちが目指していることである。

会社の売上高・個人の資産も世界一となった上で、これである。

一体誰が、古ぼけた小型トラックに乗り、散髪は町の床屋ですませるような人間が、世界一の億万長者と分かるのだろう。

もちろん、人並み以上には豊かな暮らしはしていたものの、彼の死後も名実ともに世界トップ企業であり続けられているのは、度を外れた欲望や野心を戒め続け、企業としては1ドルレベルで突き詰めたからこそです。


絶えず新しいことに挑戦し、実験し、事業を拡大する、これがわが社の方針なのだ。
どういうわけか、ウォルマートについて長年、人々は誤った印象をもっている。つまり、ウォルマートは、一人の中年男がひらめきから一夜にしてでき上がり、奇跡的な成長を遂げた、というものだ。たしかに、一九六二年にウォルマート一号店がオープンした時、私は四四歳だった。しかし、それはニューポート以来の経験であり、ほかで成功した新しい試みを実行せずにはいられない私の性分がもたらしたものである。だから、一夜にして成功したという他のサクセス物語も実際は同じなのだろうが、私の場合は、二〇年近くにわたる積み重ねがあったのである。

ウォルマートが成功した要因として、品揃えや商品開発、物流システム、情報技術、市場寡占化戦略、じゅうたん爆撃型出店作戦などを語るのは誇らしくあるが、正直にいえば、わが社の脅威的成長の本当に秘密はこうした要因のどれでもない。本当の秘密は、経営陣と全従業員との間によきパートナーシップを築いたことである。
(中略)売価を下げれば下げるほど儲かるという、ディスカウンティングの原理と同じ理論である。つまり、給料であれ、ボーナスであれ、割引株であれ、従業員と利益を分かち合えば合うほど、自然に会社に利益がもたらされるという原理である。なぜかというと、経営者側の従業員への対応がそのまま、彼らのお客への応対となるからである。そしてまた、彼らがお客に気持ちのいい応対をすれば、お客は何度でも店に足を運んでくれるからである。

「創業者のサム・ウォルトンが亡くなってから一〇年目ですが、この間、もっとも変わったことと変わらなかったことはなんですか」
彼らの答えは、「経営方法は客のためにドンドン変わっています。しかしその変わり続けていることこそ、以前とまったく変わらない経営姿勢だといえるでしょう」。
その根底にある考え方は、①すべての努力は客のためであって、企業のためではない。②失敗を恐れず、改善と改革とに挑戦し続ける、という二つの確固たる信念である。

絶えず新しいことに挑戦し続けたこと、全ての仲間達とパートナーシップを築くことに腐心したこと、そして何よりも顧客第一主義であったこと。

これらの経営指針が、ウォルマートの強さの根底であったことも疑いがありません。しかし、20世紀最高峰の経営者であり商人であったサム・ウォルトンの凄みは、冒頭にあった金銭感覚、哲学が、他の人間から突き抜けていることのように思えます。


彼の哲学に、日本でも稲盛和夫さんとKDDIを創業したイー・モバイル会長の千本倖生さんの下の言葉を思い出します。

その際の単位は常に1円です。資本金が数千億円でも数千万円でも、これは変わりません。常に1円でも多く売り上げを立て、1円でも多くコストを削る。それが鉄則です。

ベンチャーというのは、つまらないことを諦めずに繰り返すことの集積です。誰もが諦めようとしたとき、あと0.1パーセントだけ、0.1円だけ、と、粘れるか。それが何兆円というビジネスを創っていく。

なんという…襟を正されます。

本書の内容、サム・ウォルトンの哲学は、前回取り上げたアマゾン社のジェフ・べゾス氏も大いに参考にしたと言われています。

アマゾン社の経費の倹約ぶりも有名で、創業時はオフィス用の机は自作を求めたという逸話もあり(その中でも、サム・ウォルトンの哲学と同じく、従業員への給料だけは惜しまないというのも、示唆があります)。


「あと0.1パーセントだけ、0.1円だけ、と、粘れるか」か。

何兆、何十兆という企業にして、いやだからこそ、この言葉。

その背中は随分と先にあるけれど、この考え方・企業文化は、自分が関わる会社の大事な価値観にしていきたい。


【本の抜粋】
「創業者のサム・ウォルトンが亡くなってから一〇年目ですが、この間、もっとも変わったことと変わらなかったことはなんですか」
彼らの答えは、「経営方法は客のためにドンドン変わっています。しかしその変わり続けていることこそ、以前とまったく変わらない経営姿勢だといえるでしょう」。
その根底にある考え方は、①すべての努力は客のためであって、企業のためではない。②失敗を恐れず、改善と改革とに挑戦し続ける、という二つの確固たる信念である。

成功にはつねに代償が伴うものなのだろう。それをいやというほど思い知らせれたのは、一九八五年一〇月、「フォーブス」誌が「全米一の金持ち」として私の名前を報じた時である。
「サム・ウォルトン?何者だい?」当時、ニューヨークのマスコミ関係者は、こういって首をかしげたに違いない。だがたちまち、ここベントンビルには、レポーターやカメラが大挙して押しかけた。思うに、私が札びらいっぱいのプールに飛び込んだり、湖畔で美女がベリーダンスを踊るのを見ながら、特大の葉巻に一〇〇ドル紙幣で火をつける光景でも期待したのだろう。
だが、あいにく、私は彼らの期待にそえる人間ではなかった。彼らが目撃したのは、荷台に猟犬用の檻を積んだ古ぼけた小型トラックを運転する男であり、ウォルマートのロゴ入りの野球帽をかぶり、散髪は町の床屋ですませる男だった。

幸いなことに、私たちはヨットを買いたいとか、島を丸ごと所有したいなどと思ったことは一度もなかった。こうした欲望や野心が、多くの好調だった企業を駄目にしてきたのである。生活レベルをあげるために、自分たちの持ち株を少しずつ売って、ついには会社を乗っ取られ、破産してしまう家族もいるのだ。私がこの本を書いている本当の理由の一つは、私の孫やひ孫がいつの日かこの本を読み、次のことを肝に銘じてほしいからである。「もしお前が愚かな浪費を始めたら、私はこの世に化けて戻ってくるぞ。だから、そんなことはけっして考えてはいけない」

ゲリー・ラインボース(初期のウォルマート店長)
「あのころ、サムと商品買い付けのためによく旅行したが、その際、一部屋か二部屋に全員で泊まったものだ。シカゴでは八人が一部屋に泊まったことさえある。そもそも、その部屋はそれほど広くなかったのだ。私たちは経費を限界まで切り詰めていた、といってもいいだろう」
ウォルマートが年商五〇〇億ドルを超える会社に成長したのに、なぜ今でもそんなにケチケチするのか、と尋ねられることがある。理由は簡単だ。一ドルの価値をよく知っているからである。私たちの使命はお客に価値を提供することだが、その価値には品質やサービスばかりではなく、お客の支出を節約することも含まれる。ウォルマートが一ドルを浪費すれば、それはお客の懐に直接響くのである。逆に、私たちが一ドル節約するたびに、他社との競争で一歩先んじることになる。それこそ、私たちが目指していることである。

絶えず新しいことに挑戦し、実験し、事業を拡大する、これがわが社の方針なのだ。
どういうわけか、ウォルマートについて長年、人々は誤った印象をもっている。つまり、ウォルマートは、一人の中年男がひらめきから一夜にしてでき上がり、奇跡的な成長を遂げた、というものだ。たしかに、一九六二年にウォルマート一号店がオープンした時、私は四四歳だった。しかし、それはニューポート以来の経験であり、ほかで成功した新しい試みを実行せずにはいられない私の性分がもたらしたものである。だから、一夜にして成功したという他のサクセス物語も実際は同じなのだろうが、私の場合は、二〇年近くにわたる積み重ねがあったのである。

ウォルマートが成功した要因として、品揃えや商品開発、物流システム、情報技術、市場寡占化戦略、じゅうたん爆撃型出店作戦などを語るのは誇らしくあるが、正直にいえば、わが社の脅威的成長の本当に秘密はこうした要因のどれでもない。本当の秘密は、経営陣と全従業員との間によきパートナーシップを築いたことである。
(中略)売価を下げれば下げるほど儲かるという、ディスカウンティングの原理と同じ理論である。つまり、給料であれ、ボーナスであれ、割引株であれ、従業員と利益を分かち合えば合うほど、自然に会社に利益がもたらされるという原理である。なぜかというと、経営者側の従業員への対応がそのまま、彼らのお客への応対となるからである。そしてまた、彼らがお客に気持ちのいい応対をすれば、お客は何度でも店に足を運んでくれるからである。

「すべての法則を破れ」
デビット・グラス
「サムとウォルマートの成功についてしばらく話をしてみれば、一つのことに気づくだろう。彼は絶えず、『これがすべての鍵だ』『これが成功の秘訣だ』などといっている。魔法の公式などないことを、彼はよく知っているのだ。さまざまな要因が働いたのであり、いずれそのすべてを並べ立てることになるだろう。驚異的なのは、ほとんど五〇年間にわたり、彼がそのすべて同時に、注意を払い続けたことである。それこそ彼の本当の成功の秘訣なのだ」
(中略)とくに、以下の法則のうちの法則一〇に注意を払ってほしい。もし、あなたがそれを正しく解釈できたなら、その真意はこういうことだ ー 「すべての法則を破れ」。
法則一「あなたの事業に夢中になりなさい」
法則二「利益をすべての従業員と分かち合いなさい」
法則三「パートナーたちの意欲を引き出しなさい」
法則四「できる限りパートナーたちと情報を共有しなさい」
法則五「誰かが会社のためになることをしたら、惜しみなく賞賛しなさい」
法則六「成功を祝い、失敗のなかにユーモアを見つけなさい」
法則七「すべての従業員の意見に耳を傾けなさい」
法則八「お客の期待を超えなさい」
法則九「競争相手より経費を抑えなさい」
法則一〇「逆流に向かって進みなさい」

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