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週末読書メモ120. 『三体Ⅱ 黒暗森林』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「宇宙社会学の公理その一、生存は、文明の第一欲求である。その二、文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である」

「それと、もう一点。このふたつの公理から宇宙社会学の基本的な青写真を描くために、あとふたつ、重要な概念がある。猜疑連鎖と、技術爆発」


前回取り上げた現代SFの最高峰『三体』。

その第2部が、本作『三体Ⅱ 黒暗森林』です。


冒頭に記載した、宇宙社会学の2つの公理と2つの概念。

第2部の主人公羅輯は、第1部での重要人物(三体世界とのファーストコンタクト者)の葉文潔から、それを伝えられるところから、物語は進みます。

物語の核心に触れますが、この公理と概念から導き出されるのは、「宇宙は、ただひたすら暗い」ということ。

「宇宙は暗黒の森だ。あらゆる文明は、猟銃を携えた狩人で、幽霊のようにひっそりと森の中に隠れている。
(中略)もしほかの生命を発見したら、それがべつの狩人であろうと、天使であろうと悪魔であろうと、か弱い赤ん坊であろうとよぼよぼの老人であろうと、天女のような少女であろうと神のような男の子であろうと、できることはひとつしかない。すなわち、銃のひきがねを引いて、相手を消滅させること。この森では、地獄とは他者のことだ。みずからの存在を曝す生命はたちまち一掃されるという、永遠につづく脅威。これが宇宙の全体像だ

地球文明内とは異なり、異文明同士では、互いの違いをコミュニケーションすることが困難。それ故に、生き残るため、やられる前にやるしかないと。


第1部の最後で三体世界から敵対宣告を告げられたのち、第2部では、圧倒的な技術力を持つ侵略者に対する地球人の防衛戦がメインとなります。

埋めることの出来ない力の差。その中で、上記の宇宙の真実に辿り着いた主人公の動向はもちろん、様々な人間たちが己の力を尽くす様は、心打たれるものがあります。


宇宙規模の壮大なスケールで、理学、工学、社会学、哲学。あらゆるテーマを横断する骨太な『三体』シリーズ。

寝食惜しむほど本から手を離せなくなったのは、いつぶりだろうか…


第2部のラストで一旦ひと区切りが着いたように見えて、過去2部以上のページ数を持つ第3部が存在することに、筆者の想像力へ感嘆の意を抱きます。

この物語・歴史の終焉はどうなるのだろうか。


【本の抜粋】
「宇宙社会学の公理その一、生存は、文明の第一欲求である。その二、文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である」

「それと、もう一点。このふたつの公理から宇宙社会学の基本的な青写真を描くために、あとふたつ、重要な概念がある。猜疑連鎖と、技術爆発」

「だれが去り、だれが残るかは、基本的な人間倫理の問題です。この種の倫理は、過去、人類社会における進歩の原動力となってきました。しかし、究極の災厄を前にすると、それが落とし穴となります」

「われわれが地球文明と科学と論理のもとでいま見ている事実は、かならずしも客観的な事実ではないかもしれない。だとすれば、あえてそれを選択的に無視するすべを学ぶ必要がある。発展してゆく過程でものごとがどのように変化するかに注目すべきであって、技術決定論と機械論的唯物論によって未来を決めつけてはならない」

ハッブルⅡ宇宙望遠鏡の発見は、三体艦隊の侵攻という現実を疑問の余地なく証明し、人類に残された最後の希望の火を消し去った。また新たな絶望、パニック、混乱の波が一段落したあと、人類は三体危機下の生活にしだいに慣れはじめた。苦しい時代の始まりだった。歴史の線路が切り替えられ、時間という列車は、大きな揺れとともに、新たな線路の上を走りはじめた。

時間は止めることのできないもののひとつだ。それは鋭利なナイフのように、堅いものもやわらかいものも、すべてを音もなく切り裂きながら、たえず前に進みつづける。ほんのわずかでも時の歩みをぐらつかせることができるものはひとつもないが、反対に、時はあらゆるものを変化させる。

「宇宙は暗黒の森だ。あらゆる文明は、猟銃を携えた狩人で、幽霊のようにひっそりと森の中に隠れている。
(中略)もしほかの生命を発見したら、それがべつの狩人であろうと、天使であろうと悪魔であろうと、か弱い赤ん坊であろうとよぼよぼの老人であろうと、天女のような少女であろうと神のような男の子であろうと、できることはひとつしかない。すなわち、銃のひきがねを引いて、相手を消滅させること。この森では、地獄とは他者のことだ。みずからの存在を曝す生命はたちまち一掃されるという、永遠につづく脅威。これが宇宙の全体像だ」

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