(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
信念ある人間の表と裏の両方が書き上げられています。
多くの小学校に銅像があった人物、二宮金次郎の人生を描いた一冊。
著者は、日本で有数の歴史小説化の童門冬二さん。
この方による『小説 上杉鷹山』の内容が非常に良かったため、本作も高い期待を持って読んでみました(好きな本に挙げられることも多い名作)。
胸に刺さる内容でした。何が良かったかというと、冒頭にもある通り、人間の表と裏の両面を掘り起こしていたことです。
表面としては、二宮金次郎の傑出した業績、そのあり方が書かれています。
勤勉で勤労、農村復興をした人物というイメージが強いですが、その実は、組織の再生人でした。
両親を失った貧しい生家から始まり、地域の他の名家を続き、その実績と評判から、ついには町規模での再生を手がけました。
(その功績の詳細は下の動画で)
彼の抜きん出ていた点は、ソフトとハードの両方から、改革を仕掛け、実現したことです。
上記のような、組織再生・人間再生の原理原則を、地道で愚直な実体験と膨大な読書から会得し、そして、それを再生先の人間達に植え付けます。
また、人間育成を第一に置きつつ、具体的な結果を出す技術を持ち、それを駆使・継承することで、再生先の状況を確実に変えていった手法には、目を見張るものがあります。
このソフトとハードの改善は、正のスパイラルを持っていて、一度が回り始めると、どんどん結果が大きくなっていきます。
加えて、再生人の二宮尊徳が、誰よりもハードワークをしていたので、その結果は弾み車のように回転していたことが想像されます。
毎日朝3~4時起きという笑(本人は苦とも思っていなかっただろうけれど)
以前、五常アンドカンパニーの慎泰俊が言っていたように、この手法は、現代の名経営者、京セラの稲盛和夫さんや日本電産の永守重信の再生手法と、非常に似通っています。古今東西、組織を変えること、突き詰めると人間を変えることの方法は、殆ど変わらないと。
一方で、二宮金次郎の裏面としては、その信念が強すぎる上、周囲、そして自分自身の心を焼き尽くしてしまっていた様子が描かれています。
誰も悪くない、けれど、周りと軋轢を産んでしまう、このやり切れなさ。
誰よりも努力・苦労した人間、誰よりも志の高い人間が陥りがちな、これ。
あああ、既視感がある…
振り返ると、本人の柔軟性の足りなさに起因しているのだけれど、何度か痛い目に合わないと、自分の至らなさに気が付けないんだよな…
本人が一寸の余裕も無いくらい必死だったりするので尚更。
上記のようなハードワークや困難でも屈しない尊徳も、周囲の人々と自分の間に生まれる軋轢や摩擦のどうしようもなさに、心を痛めていたようです。
誰よりも聖人君子のように見える二宮金次郎でさえ、欠点があるのだから、自分も周りも完璧な人間では無いという悟りが、まず必要なのだろうなぁ。それを忘れないだけで、きっと、少しは人間関係が上手くいくはず。
先週の曹操といい、 人間というのは、複合的で複雑な存在であることを、改めて感じます。
結局、突き詰めると、人。
経済も、政治も、社会も、全て人。
この何年かインプット源は実務書や歴史書に集中していたけれど、腰を据えて、人と向き合い直す段階に来ているのかもしれない。
P.S.
農業インターン・副業・プロボノ大募集!
学年や年齢、農業経験の有無は問いません!
インターン・副業・プロボノに興味のある方は、ぜひご応募ください!
農業界の未来を、共に切り拓いていきませんか?
【①インターン】
【②副業・プロボノ】
※個別対応のため、TwitterのDMでお問合せください(下はイメージ)。