見出し画像

週末読書メモ80. 『トヨタ「家元組織」革命 世界が学ぶ永続企業の「思想・技・所作」』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

日本最強企業の今が、ここの本の中に。


名実ともに日本一の大企業、トヨタ自動車株式会社。

日本、そして、産業を超え、世界のTOYOTAとして知られる世界一の自動車会社。その社長、豊田章男さんの経営とリーダーシップについてまとめた一冊が本書となります。

始祖豊田佐吉が織機で大成功をし、TOYOTAの礎を作り、その息子であり、トヨタ自動車の創業者であり、純国産車に人生を懸けた豊田喜一郎。豊田章男さんは、トヨタグループの11代目であり、豊田喜一郎の直系3代目。

日本最大の企業を背負い、章男さんが多大な苦難の末辿り着いたのは、”家元”という手法でした。


家元とは世襲と誤解されることが多いが、そうではない。家元は、その流派の思想と技のオーナーであり、また、それらを非凡なレベルで体現する伝承者である。

豆腐工場で私が見たのは、章男の次の行動だった。
1 鳥の目で俯瞰して、全体の流れを把握
2 「情報、モノ、人」を整理
3 標準をつくる=手順を極める
4 改善策や改善できる単純な仕組みのものをつくる
(中略)思想を体現化するために、技があり、その基礎と修練に所作がある。「道」と名がつく芸事や武術には「思想、技、所作」が一体化して流派を成している。トヨタの強みとは「思想、技、所作」であり、章男が自ら現場においてトヨタの強みの原点である「思想、技、所作」を体現する非凡な名人、つまり「家元」であるということだ。

自動車・トヨタを愛し・信じ、世の中の幸せへ貢献するという思想。その根底の手段となるTPS(トヨタ生産方式)という技。そして、思想と技を結果に繋げる日々の所作。

グループ総勢30万人以上、関わるステークホルダーに至っては500万人を越える人数を背負う経営手法の要諦は、その3つを非凡なレベルで実現するリーダー(家元)と自らを成したことでした。

日本古来、お茶をはじめ、芸や武の世界で、永続する組織の運営手法として存在していた家元方式。それを、日本最大の企業で行う凄まじさ…


家元組織の詳細は、本書に譲るとして、特筆すべきは、豊田章男さんのリーダー、トップとしてのあり方です。

章男さんと言えば、積極的なメディアでの発信、そして、過酷なテスト・レースに自らマスタードライバーとして車と接していることが挙げられます。

しかし、この本に併せ、読んだ6年前の週刊東洋経済でのインタビューに、目を覚まされるような内容がありました。

ーーファッション誌やマツコさんの番組に出るのは?
(章男)あれはね、性格からいったらね、嫌なんですよ、ああいうの(笑)
ーーたぶん世の中の人は社長が目立ちたがりやだと思っています。
(章男)だからほんとは嫌なの。嫌なんですけど、何であんなことやりだしたかというと、私は商品の最終責任者だ。
(中略)若い人や会社以外の老若男女と付き合ってみるとか、そういうことでも見方が変わってくるんですよ。これこそが、もっといいクルマづくりのセンサーを研ぎ澄ます活動になる。

ーー社長がレース好きだということで、走り屋向けの車ばかりになるのでという不安もあります。
(章男)そういうことではない。それとね、レース好きじゃないです、全然。レースは意味があってやっている。

なんとまあ(笑)

今はどちらの活動も、その実績から価値を認められているものの、当初は周りからも決して賛同は少ない(ないしは大反対の)中から始められたと言われます。その上、本人自体も好きではなかったと。しかし、その価値を見通していたからこそ、逆風の中でも10年以上も続けられてきたその姿に背筋が伸びます。


思えば、豊田章男さんが大御曹司であることは事実である一方で、その人生は苦難に満ち溢れていました。

上記の動画にもある通り、入社時より嫉妬や羨望、軽蔑から人並みのように扱われず、一時は苗字を捨てることすら本気で思い悩むほどに。

章男さんがトヨタに入社したのは1984年。社長になったのは2009年。自分の記憶だと、圧倒的な実績をもとに、世の中から偉大なリーダーとして言われ始めたのがこの5~6年のことだとしたら、その半生30年以上、苦難の中を戦われていたと。

章男さんがの辿り着いた先が家元経営。さながら、これはプラトンの言う哲人政治の現代企業版とも感じる部分があります。

であるならば、その注目すべきは次世代。哲人政治を実現できたマルクス・アウレリウス・アントニヌスからコモンドゥスとなるか、それとも、家元制度を継続できるか。芸や武の世界と経済の世界での最大の違いは、競争の有無。勝たなければならない、生き残らなければならない、その中で、トヨタはどんな歴史を紡ぐのだろうか。

古今東西いななる存在も盛者必須、万物流転の真理からは逃れられません。

しかし、その中でも、創業80年を超えた今なお、一度曇りかかった中で、再び日を登らせたトヨタがどう道を切り開いていくのか。大先輩として、その姿を追い続けていきたい。


【本の抜粋】
家元とは世襲と誤解されることが多いが、そうではない。家元は、その流派の思想と技のオーナーであり、また、それらを非凡なレベルで体現する伝承者である。

「章男さんに早く取締役として帝王学を学ばせた方がいいのではないでしょうか」との進言に対して、章一郎の言葉は実に明快だった。
「章男を特別扱いはしない。それはトヨタにとっても本人にとっても決してよくない。章男は一歩一歩自分の力で登っていかなければいけない」と、何の迷いもなく言い切り、議論にならなかった。
しかし、最後にこう付け加えた。
「だけど、章男には才能がある」

豆腐工場で私が見たのは、章男の次の行動だった。
1 鳥の目で俯瞰して、全体の流れを把握
2 「情報、モノ、人」を整理
3 標準をつくる=手順を極める
4 改善策や改善できる単純な仕組みのものをつくる
(中略)思想を体現化するために、技があり、その基礎と修練に所作がある。「道」と名がつく芸事や武術には「思想、技、所作」が一体化して流派を成している。トヨタの強みとは「思想、技、所作」であり、章男が自ら現場においてトヨタの強みの原点である「思想、技、所作」を体現する非凡な名人、つまり「家元」であるということだ。

ベンチャーマインドは「思想」で維持されるーー。社長就任前から章男は「トヨタらしさ」や「TPS」に対して強いこだわりを持ち続けていた。このことから、創業時の「思想」を埃かぶった古典ではなく、松明のように燃やし続けなければならないと意識していたのは間違いない。

私は、章男の経営は将来の不測の事態に備えながら現在進行中の経営に最善を尽くす「ための経営」であると感じてきた。「ため」とは武道などで相手が動くまで我慢して動かないことを「溜める」と言い、動作の「ため」を指す。「ため」という行為が商品軸経営の要諦であると気づかされた。さらには「我慢する」ことがヒット商品を生み出す商品軸経営の要諦であると気づかされた。

私は章男家元による「相互信頼・共感の権威による経営」を、「日本的集団福祉組織」と考えている。
(中略)過去にトヨタは「資本の論理」に基づき拡大と成長を第一の目標に据えた経営を推進していた時代があったが、その時代にトヨタの強さの基盤が弱体化した。そこで章男は創業の理念に立ち戻り、改めてトヨタの「思想、技、所作」の追求を実践した。そこで築き上げた「相互信頼」と「共感」による「権威」こそが、豊田章男家元経営の基盤なのである。

この研究において、私が学んだ章男の大企業改革のエッセンスを以下要約する。
1 意思決定における組織のスリム化を断行すべきである
2 「決断」する勇気を持つ
3 家元経営の根幹をなす”技”を愛することで求心力を強化する
4 家元経営の強みは教え、教えられる相互扶助の組織にある
5 デジダル時代における章男の改革とは

P.S.
農業インターン・副業・プロボノ大募集!

学年や年齢、農業経験の有無は問いません!
インターン・副業・プロボノに興味のある方は、ぜひご応募ください!
農業界の未来を、共に切り拓いていきませんか?

【①インターン】

【②副業・プロボノ】

※個別対応のため、TwitterのDMでお問合せください(下はイメージ)。

この記事が参加している募集

#推薦図書

42,415件

#読書感想文

187,486件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?