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【読書】前科者(1~2巻まで)

本書との出会い

世の中には突然自分の目の前に現れて、衝撃的な何かを自分の中に突き刺していく作品が時々ある。

この作品もその1つである。

Amazonで1~2巻が期間限定で無料(2021/6/10迄)だったので読んだが
これほどの作品が世に埋もれていたとは…。

単に自分の視界に入ってこなかっただけで、出会えたことに感謝。

物語のテーマと2軸の主人公

さて、物語のテーマはタイトルの通り「前科者」と、
それと向き合う「保護司」のお話。

前科者と言うと皆さんどんなイメージを持つだろうか?

正直プラスのイメージを持つ方の方が少ないのは当然だろう。

1度「罪の道」を通ってきていることが確定している人なのだから。

1巻につき1人の「前科者」がテーマになっているこの作品
(2巻まで読んだ段階の感想)

「前科者」とは?

1巻の「前科者」も、2巻の「前科者」も数ページ読むと
とても「凶悪な犯罪者」ではないことが分かる。

但し「前科者」になり得る背景としての狂気は
そこかしこにチラチラと姿を現す。
分かりやすいところだと、彼ら彼女らの表情に。

そこに真正面からぶつかるのが「保護司」の佳代。

「科者」の存在が「前科者」と「保護司」を試す

「前科者」に対してはそれ以外の登場人物も多く絡んできて、
立ち塞がり、時にぶつかったり、陥れようとしてくる、
本物の「科者」がいる。

「科者」は今自分が思いついた言葉で、
法的に罪を定義されて「前科者」とはなっていないが、
それ以上にタチの悪い「捕まっていない犯罪者」のような存在。

ある意味で罪を償って出て来た「前科者」よりもタチが悪い。

そういったより強烈なキャラクターに対し、
「前科者」そして「保護司の佳代」はどう立ち向かうのか?

佳代や前科者の魂の叫びは誰に向けて言っているか?

まだ未熟な佳代は迷いながらも、精一杯の魂の叫びで
それぞれと立ち向かい、良い意味で何度も体を張って立ち塞がる。

不惑の僕に対しても佳代は大きく立ちふさがって来た。

「安全な場所からそうやって見下ろしているんだろう?」

これはとある「前科者」の言葉。

この言葉は作中のとある、意地の悪いキャラクターに対しての言葉であるが
同時に読者である僕自身へも刺さった。

「前科者」というものをどういう目線で見るか、
一般の方の多くは「悪」といっしょくたに見てしまうのだろうか?

この作品を見ると、その価値観は大きく変わる。

世の中の本当の悪は表には出て来ない。

刑務所には根っからの悪は10%しかいないそうだ。

本当の「悪」はどこに潜むか?(まとめ)

では現実世界にはどれだけの
「まだ捕まっていない根っからの悪」がいるのだろうか?

2巻までお試し無料版を読んで、全巻購入を決めた。

ちなみに2巻では「杜子春」や「蜘蛛の糸」など芥川龍之介の名著になぞらえた話も出てくるのが面白い。漫画の中で読書自信がテーマになるのだ。

梅雨のじめじめした季節に、ある意味更に心に陰りを落としつつも
保護司の佳代と一緒にその陰りを晴らしていきたいと思う。

梅雨明けに向けて。大人向けのダークフィクション。おすすめ。

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