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【夢日記】気遣い下手

僕は一人、道を歩いていた。車の通りが結構ある場所だった。日頃通り慣れている道ではなかったが、過去に通ったことがある気もする場所を歩いていた。徒歩で家路に向かっているようだった。迷っている様子はなかった。足取りは軽くも重たくもない。ただ一つ、交通量の多さだけが、気に掛かっていた。

(「先に行っていいんかな・・・?」)

「歩行者用道路・車道・歩行者用道路」の幅がかなり狭いからか、僕が歩いている道には、ほとんど信号が無かった。そのため、歩行者と運転者の判断で、その都度、行くか止まるかを判断するような仕組みになっていた。

もちろん、道路交通法的には「歩行者優先」の決まりがあることは僕にも分かっている。それでも、かなりスピードを出して僕の近くまで走って来た車があると、咄嗟に止まってしまうものだ。実際、そのまま突っ走っていくこともある。もしも僕が「歩行者優先」の原則にのっとって飛び出していると、最悪、命を失うおそれすらある。ゆえに「歩行者優先とはいうもののケースバイケース」になるのも、致し方ないと言えよう。

(「車がこっち来ていないかな?」)
(「あっ、近くまで来てる。止まろう」)
(「メッチャ飛ばすやん・・・」)
(「あっ、行っていいよ、のサインかな?」)
(「気付くの遅かったなあ、すんません!」)

状況判断の連続。選択と決断の連続。こういう作業を何度も何度も繰り返すのは、案外、骨が折れるものだ。僕は信号の偉大さに改めて気付かされた。なぜなら「緑・黄・赤」のランプをチェックするだけで「進むべきか・止まるべきか」を判断すれば良いのだから。これは非常に楽だ。

そんなことをボンヤリ考えながら歩いていたら、前方に渋滞が発生していることが分かった。注意深く観察してみると、どうやら工事の影響で、一つの車線しか通行することが出来ないため、渋滞が生まれたらしかった。

(「歩行者用道路も塞がれてるやん」)
(「この場合、俺はドコを歩くん?」)
(「色んな人の顔色を窺うしかないかぁ」)

僕は、オドオドとしながら、車道の方へと歩いていった。工事をしていてソコしか歩ける場所が無いのだからしようがない。運転手の顔色を窺う。交通整理員の顔色を窺う。工事現場で働く人の顔色を窺う。やはり、ケースバイケースなのだ。

運転手からクラクションを鳴らされる。身体がビクッと反応する。僕は音に敏感なタチで、自分が予期せぬタイミングで大きな音を耳にすると、咄嗟に身構えてしまうところがある。足を止めて、車から離れようとした。結果的に工事現場の近くまで足を踏み入れることになった。

工事現場の人が僕の存在を煙たがっている気がする。もしかしたら気のせいかもしれない。けれども、邪魔であることに変わらないのは確かだ。やはり、ココにも居てはいけない。早く前へ進まないと。でも、またクラクションを鳴らされたらどうしよう。八方塞がりの状態。僕は、車にも工事にも、なるべく邪魔にならなそうなギリギリの位置で、足を引きずりながら、歩みを進めた。

交通整理員の人が何らかのジェスチャーを行なっている。運転手に対するジェスチャーなのか、それとも、歩行者に対するジェスチャーなのか、僕にはよくわからなかった。「前に進んで!」というジェスチャーをしているのは分かる。けれども、もしも、運転手に対するジェスチャーを、歩行者に対するジェスチャーだと勘違いして、僕が走り出したらどうなるだろう。当然、車も発進するため、事故を招く恐れがある。やはり、前に進むことは出来ない。僕に出来ることは、足を引きずりながら、ノロノロと進むことしかなかった。

「早く来て!」
「邪魔になってるから!」

突然、交通整理員の怒号が響いた。間違いない。コレは僕に対して言っているのだと悟った僕は、一も二もなく、駆け出した。音に敏感なタチであることも忘れて、駆け出した。そのまま、歩行者用道路まで駆け抜けた。

僕は、それほど長い距離を走ったわけでもないのに、ハァハァと息を切らしていた。メートルで表すと、せいぜい、15〜20くらいなものだろう。肉体的疲労によって息切れを起こしたとは考えづらい。精神的疲労によって息切れを起こしたのであろう。

僕は安全地帯で息を整えていた。車がビュンビュンと行き交う。よっぼど、僕が邪魔だったらしい。そりゃあそうだろう。交通整理員が怒鳴るぐらいなのだから。つまり、「前に進んで!」というジェスチャーは、初めから、僕に向けて出された指示だったのである。

(「邪魔にならないようにしてたのにな」)
(「周囲の状況をくまなく観察したのにな」)
(「結局それが一番邪魔になってたんだな」)

僕は、やるせない気持ちになって、再び、トボトボと歩き始めた。

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