「やりたいことをして影響を与える」という歴史的ファクトがある _フカイの仕事論<やりたい仕事編#3/3>
やりたいことを追求し続けながら、現実でも結果を出す。
それを、歴史上でもっとも美しくやり抜いた存在として、前回は、墨子を紹介しました。
前回はコチラ▷▷▷500年続く大戦争時代に愛を叫んだ異端のリーダー _feat.墨子
墨子が信じた理想は、彼が生きている間は成し遂げられませんでした。でも、死後に弟子たちが引き継いで、その思想が墨家として影響を与え、後世に残りました。
そして、戦国時代に博愛主義を諦めなかった存在がいた歴史的事実を、ニ千数百年後に現代人である僕が知ったんです。
これが脈々と続く、歴史の魅力でありすごいところです。
古代中国で墨子がもし理想を諦めていたら、彼が広めようとした博愛主義と、それを大戦争時代にどうやって貫こうとしたかを僕らは知ることはありませんでした。
墨子が絶対に諦めなかったことで、僕たちは、その思想のバトンを受け取ることができたわけです。
墨子のやり方をコテン創業に生かした
実際のところ、僕は、墨子の理想と現実に対するスタンスに大きく影響を受けています。
2016年にコテンを創業する時、墨子のやり方を参考にしたところがあります。
コテンが主軸とする、約3000年分の世界史データベースをつくる事業は、すぐにマネタイズできる事業ではないことは、創業する前からわかっていました。
とはいえ、約3000年分の史実を網羅したデータベースの構築には、結構な資金が必要になります。
マネタイズプランがないと、当たり前ですけど資金調達は難しいですし、そもそも企業として成り立たせるのは困難です。複数のベンチャーの役員をしている自分だからこそ、そこは重々承知しています。
ビジネスとして事業を成立させることを最優先に置けば、それなりのやり方もありました。でも、その形だと、僕の心は動きませんでした。
何よりも、世の中に寄せすぎることで、自分や人類にとって、あまり意味のないものになってしまう危険性を感じました。
現状データベース化する資金の多くは、僕の個人資産の持ち出しです。自分が得意とする経営サイドのスキルを生かして、数社の取締役や役員に就き、その報酬をそのまま注ぎ込んでいます。
やめずに続けていれば、必ず社会に影響を与えられる事業だと思って、諦めないことが大切だと思って、続けています。
何か起きるかも、と始めたコテンラジオ
事業としてのマネタイズが遠いことがわかりながら、やりたいことを曲げずに、諦めずに、会社とサービスを続ける。しかも、現実に即したスキルを発揮してそれを事業に活かす。
これこそが、「戦国時代に博愛主義を広めようとした」墨子から、まさに学んだことです。
現時点では、おそらく自分だけが未来を描けている事業の可能性を、結果で証明できるまで諦めない。具体的にどう証明できるかはまだ明確ではないですが、その明確ではないけれど、自分の中で価値があることに時間と資金を注ぎ込んだら何か起こせるなと思ってます。
Podcast番組「歴史を面白く学ぶ COTEN RADIO(コテンラジオ)」も、2018年に似たような気持ちで始めました。儲かるかはわからないけれど発信することで何か起こると3人で続けていたら、ありがたいことに人気番組に育ってくれました。
やりたいことが明確にあるなら、やろう
やりたい仕事やキャリアを考えるとき、まずやりたいことが明確に決まっている人と、模索中の人は別々に考えたほうがいいです。
やりたいことが明確にあるならば、コテンの事業と同じです。
条件が厳しかろうが、報酬が安かろうが、稼げなさそうであろうが、難易度が高かろうが、さっさと始めたらいい。
"社会的”結果が出るかどうかは、神のみぞ知ること。飽きるか、死ぬまでやればいいと思います。
モチベーション維持にがんばらなくていいことを
20代、30代でやりたいことがない人・探している人がそこに近づくためには、自分のエネルギーが湧きやすいことを考えてみる。思い当たるところから選択していくといいです。
それは、モチベーションを上げるのをがんばらなくてもいいことでもあります。
やる気が出やすいことを考えていくと行き着きますが、自分のエネルギーが出やすいことと、やりたいことは、必ずしも一致しません。辛いのはわかっているけれどもやろうと思えることと、自分が好きでやりたいことというのは違います。
たとえるなら、「めっちゃダイエットしたい」に近い。
ダイエットは、そのダイエット行為自体を好きでやるわけではありませんよね。「どうしてもスリムになりたい!」というエネルギーが勝るから、ダイエットをするわけです。
ダイエットを実行するような気持ちの出し方ができる仕事を選択すると、長期的に成長できるし、成果も形になりやすいです。
自分に適性はないと思っていたアン・サリヴァンも、ヘレンの家庭教師という職に対してエネルギーは湧いていました。
サリヴァンは、まず「自分ができることをやっていく」ことをし、小さな達成感を積み上げていきました。
サリヴァン先生の回はコチラ▷▷▷奇跡の人と呼ばれた非凡な教育者でさえ「天職に就いている自覚」はなかった _feat.アン・サリヴァン
報酬はその人の「できること」に支払われる
「やりたい仕事とできる仕事」を考えるとき、そもそもお金とは、その人ができることに対してしか支払われません。過去の実績と、自分ができると証明できることに対してしか、値段はつかないんです。
だから、「やりたいこと」を考えるときには、「値段(報酬)がいくらつくか」には、こだわらないほうがいいです。
報酬を気にすると、それまでやってきた経験とスキルの消費になってしまいます。
年収維持や年収を上げることにこだわりすぎて転職すると、この落とし穴に陥りやすいと思います。そこには、投資の観点がありません。
過去の経験を報酬に変えていくだけなので、やりたいことができるようになり、それによって生活できる未来は、なかなか来ないと思います。
多くの人が「やりたい仕事しよう!」と考えるとき、やったことはないけれどやりたい理想を10割にしようとしてしまいがちです。すると、死ぬほど年収が下がり、最終的に理想を諦めることになってしまいます。
そうならないように、できることで最低限欲しい収入を得ながら、やったことがないけれども、やる気が出ることを何割かでもやらせてもらえる状態のところへ身を置く。2割ぐらいでいいので、報酬にカウントされない「やりたいこと」ができる環境がおすすめです。
仕事は生きていくための手段でもあるので、「自分の市場価値がある仕事」と「一時的に何割か年収を下げてでもやりたい仕事」のバランスを取る。「やったことはないですが、チャレンジさせてください。その代わり給料は低くても・なくてもいいです」ということに、手を挙げていくんです。
そうしないと、やりたい仕事ができるようになりません。
チャレンジの部分は次第に実績なるので、エネルギーがわくことの割合はどんどん増えていきます。
そうやって20代、30代前半のうちに投資も考えた仕事の仕方をしておくと、やりたいことが仕事になっているようになります。
「自分のエネルギーが出せることを考えて選択する」ことは、キャリアアップを考える時にも大事な軸だと、僕は思っています。
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■コテン 深井龍之介のnote『レキシアルゴリズム』って?
このnoteでは、歴史を学ぶことで得られる「遠さと近さで見る視点」であれこれを語っていきます。
3000年という長い時間軸で物事をとらえる視点は、猛スピードで変化している今の時代においてどんどん重要になってきます。何千年も長い時間軸で歴史を学ぶと、自分も含めた「今とここ」を、相対化して理解できるようになります。
世の中で起きている経済や社会ニュースとその流れから、ビジネスシーンでのコミュニケーションや組織づくり、日常で直面する悩みや課題まで、解決できると僕は信じています。
人間そのものを理解できたり、ストーリーとしての歴史のおもしろさを伝えたくて、歴史好きの男子3人で『COTEN RADIO(コテンラジオ)』も配信しています。PodcastとYouTubeとどちらからでも。あわせて聴いてもらえたらうれしいです。
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株式会社COTEN 代表取締役。人文学・歴史が好き。複数社のベンチャー・スタートアップの経営補佐をしながら、3,500年分の世界史情報を好きな形で取り出せるデータベースを設計中。