コロナ禍での病院の面会禁止・外出制限~ほんとにそこまでする必要ある?
11月9日に大阪府の信号が黄色になったことを受けて、私の勤務する精神科病院でもこれまでと全く同様に、『直接面会禁止』『入院患者の外出制限』を実施する通達を出そうとしました。
医療機関や老人施設での面会については日本全国、コロナ禍が始まって以降、同じように禁止されました。今も面会を原則受け入れていない施設も少なくないと思います。
私の勤務先は精神科の病院です。詳細は省きますが、家族の面会は『特別な場合を除き』禁止。家族を病棟に立ち入らせません。特別な場合とはもうすぐ亡くなる、あるいはそれに準じた状況。防護服を着て入ってもらっていました。
それ以外は、病院が用意したパソコンを利用してのオンライン面会を実施しているので、事前予約の上、家族はパソコンの画面を通じて入院している家族と話をすることになります。
外出については、精神科の病院ですので、入院患者の中には理解力や判断力の低下した長期入院の人もいます。ですが、一定の社会的ルールを守れる人は、コロナ前は昼間は自由に出入りできていました。
また、急性期で入院した人にとっても病状回復後の自由外出は退院に向けた重要なリハビリなのです。
コロナ禍が始まり、混雑する商業施設に行けてしまうのは良くないだろうということで、そこまで往復できないようにと1回の外出時間が30分、15分と大幅に短縮されました。おそらく、全国の精神科病院でも似たような対応を取っていて、今でもそうだと思います。
この3年間、大阪府が出す信号に合わせて、外出と面会の規制を緩めたり厳しくしたりしていました。つまり緑になったら解除、黄色になったらこう、赤になったらこうと段階的に変化させていました。
ですが家族との面会ができない事や、患者が病院内に実質閉じ込められてしまうことの弊害は深く考えるまでもありません。
コロナが始まった頃は、私も制限やむなしと思っていました。
ですがオミクロン株になり、重症化・死亡リスクがインフルエンザ以下となった今、今回の黄信号点灯で対応を1ミリも変えず、単に機械的に制限をかけようとしたことに、さすがにこれはおかしいと思い、院長と話をしました。
やはり詳細を省きますが、結果的に今回の通達は見送られ、面会も外出も制限しないことになりました。
私はこの話を、自分の手柄話として披露しているのではありません。
医療機関というのは非常に硬直した世界です。
特に大規模な公立病院や大学病院では、一人のスタッフが何か言ったくらいでは即黙殺されるのが常。政治と同じで根回しとか派閥とか、変えるのには相当な労力と時間を要します。
ですが、今の状況を考察・検証しないままでいいのでしょうか。
ただでさえ入院というのは本人家族双方に大きな不安をもたらします。状態がどうなのかも電話だけでは分からない。画面にうつる顔だけでは分からない。
直接の面会を禁じるということの重大さを、医療・護施設の責任者はもっと考えて欲しいと思うのです。
現状で病院・施設内に一人たりとも感染者を入れない・発生させないことを目指した対策はどう考えても合理的ではありません。
高齢者施設は厳密にすべきだ!と言う声が聞こえてきそうですが、高齢者が感染症で死なない世界などないのです。
コロナだけを持ち込まないことにこだわり、必死で感染対策をして家族とも会えず、コロナにはかからなかったけどやがて別の感染症で寿命が尽きるなんて、そんな余生、送りたいですか?送らせたいですか?
コロナ自体は向こう何年も何十年もなくなりません。同じ対策を繰り返す意味を検証すべきではないかと思うのです。
私は何の後ろ盾もないただのスタッフ医です。発言力も決定力もありません。それでも今回は黙っていられませんでした。大病院ではかなわなかったかもしれません。
それでも、『今の状況で面会禁止っておかしいよね?』思っていたら、何か出来ることはないでしょうか。
施設の職員の方も、ミーティングの時に話題にしてみるとか出来ないでしょうか。
国が全面的に対応を変えるのを待っていたら、その間に家族に会えずに、あるいは今際の際にしか会えない何人の人が人生を終えてしまうでしょう。
精神科病院の状況を言いますと、長期入院で家族にも会わせず外出もさせないのが治療上デメリットしかないことも明らかです。
過剰な感染対策による弊害は数え上げればきりがありません。
もう、こんな社会が死ぬほどイヤなのです。
食事制限もないのに、外出制限があり、写真みたいなお団子を食べに行く楽しみも奪われる、それはやっぱりおかしいです。
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