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217号室

日本では4や9が死や苦を連想して縁起が悪い数字だと言われるように、スコットランドでは217という数字が忌み嫌われており、ホテルやアパートなどでは217号室を作らないことも多いらしい。しかしその由来については諸説あるようだ。

最も有力だとされる説は、1800年代中頃にグラスゴーの高級ホテルで起きた大規模火災の火元が217号室だったからという説だ。たくさんの死傷者を出した痛ましい事故であり、その原因については各新聞社が競うように様々な理由を書き立て大きなニュースとなった。しかし本当に火元が217号室だったかどうかは未だにはっきりしないらしい。

もう1つの有力な説は、1908年に刊行されたトマス・リヴィングストンの人気犯罪小説『黒い手』に出てくる殺人鬼が住んでいたアパートの部屋が217号室だったからという説だ。『黒い手』は、殺人鬼ウィリアム・スミスと、それを追う刑事スミス・ウィリアムズをそれぞれの視点から描いた人気作である。欲望のままに殺人を繰り返し、自身無惨な最期を迎える殺人鬼の住む部屋として何となく避けられるようになり、そこからホテルやアパートで217号室が作られなくなっていったという説だ。作者のトマスが晩年はアルコール依存症に苦しんだことも何となく217の不気味さに拍車をかけた感もある。

その他の説としては、ごく一部の地域に伝わる伝承にある、217歳まで生きた女性は魔女になるという話が由来だというのもある。魔女になるのを避けるため、女性は217歳の誕生日を迎える前に首を絞めて殺さなければならないのだそうだ。初期のサイレント映画『かげろう』の冒頭シーンに217と書かれた扉が出てくるのが由来だという説もあるが、これについては現在そのフィルムの完全版は失われており、真偽のほどは定かではない。

近年はそんなものは迷信だとして気にしない人も増え、マンションやホテルなどにも普通に217号室がある所の方が多い。しかし2020年に放送されたテレビのバラエティ番組で、217を気にしない若者VS大人の討論企画に気にしない側として出演していた大学生が交通事故に遭ってしまう事件があり、またしても217には不吉なエピソードが追加されることとなってしまった。何の因果か、彼は2月の17日生まれだったらしい。

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