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魔王の敗北

魔王として長らくこの世界を支配してきたが、伝説の勇者が現れ、配下の四天王が順番に倒され、捕らえていた姫が奪い返された時点で、いつか伝説の通りに勇者に倒されることはどこかで覚悟していたのかもしれない。しかしどうやら私は、勇者に倒され続ける世界をループしているらしいことに気が付いた。

最初に勇者に倒された時の記憶が残っている。勇者とその仲間は、敵ながら伝説に相応しい強さだった。光の装備に身を包んだ勇者、怪力無双の戦士、様々な魔法を操る大魔道士、神の力で傷を癒す僧侶。死闘の果てに、私は勇者の持つ光の剣の一撃に屈した。そしてループした私の前に再び現れた勇者たちは、更なるレベルアップを果たしていた。光の装備以上に光り輝く勇者、鎧がはち切れんばかりに筋骨隆々となった戦士、無尽蔵の魔力で最強の攻撃魔法を放つ大魔道士、もはや神かと見まごうレベルの僧侶…。私は勇者たちの強さに為す術なく、たった3ターンで倒されてしまった。そして次。勇者たちは強さはそのままに、身につけている装備がおかしかった。勇者が手に持っていたのはどこでも売っているようなどうのつるぎ、戦士は大きな冷凍マグロを背負い、大魔道士は魔法を使わずに杖で殴ってきたし、僧侶に至ってはもはや素手だった。しかしその強さの前に私は手も足も出ず、散々いたぶられた挙句、冷凍マグロに腹を貫かれて私は敗れ去った。これを超える屈辱的な負け方はないと思った。

再びループした私の前にやってきた勇者たちは、これまでとは少し…いや、大きく様子が違っていた。勇者はそのままだったが、戦士も大魔道士も僧侶もいなかった。勇者が代わりに連れていたのは、3人のインドカレー屋だった。戸惑いながらも戦いは始まった。勇者は何もせず攻撃補助の魔法を唱えるだけで、攻撃してくるのはインドカレー屋だった。私は激辛のカレーを浴びせられ、熱々のナンで殴られ、揚げたてのパコラを投げつけられ、最後はラッシーをかけられて敗れ去った。何だこれは!もうたくさんだ!こんなことをやられるために魔王になったのではない!!私の叫びが届いたのか、それともただ単に勇者がこのゲームに飽きてしまったのか、それが私と勇者の最後の戦いとなった。私はようやく眠りにつくことが出来たのだ…。

私がインドカレー屋にボコられる動画はyoutubeに投稿され、再生回数はもうすぐ300万に届くようだ。よろしければ是非高評価&チャンネル登録お願いします。

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