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俺の書いた俺たち

「オイお前、何で俺たちの恋愛はいつもうまくいかないんだよ!」と、これまで書いてきた作品の主人公たちが文句を言ってきた。

「仕方ないじゃないか、俺は恋愛経験が少ないんだ。恋愛でうまくいくってことがよく分からないんだよ!」そう文句を言い返してやると、主人公たちはぶつぶつ言いながらも引き下がってくれた。さすがは俺が書いた登場人物たち、俺の言うことはよく分かってくれるようだ。

「しょうがない、俺たちがお前の恋愛がうまくいくようにサポートしてやるよ。今は気になる人とかいないのかよ」そう切り出したのはタカシだった。タカシは作中で俺がよく使う名前で、既婚者を好きになったりSNSの向こう側の相手を好きになったり、久しぶりに会った元カノといい感じに盛り上がってホテルまで行ったのに結局フラれたり、俺自身の恋愛のうまくいかなさを体現してくれている存在だ。

「気になる人はいないこともないけどさ、お前たちのサポートでうまくいくとは到底思えないのだが…」なんてことを言いながらも、俺は最近気になっている仕事仲間の話をした。三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。俺の登場人物たちは揃いも揃って恋愛に不器用極まりないやつばっかりだったが、話を聞いてもらっているうちに何となくいけそうな気がしてきて、俺は彼女とデートの約束を取り付けたのだ。やった!主人公ズとはハイタッチをして喜びを分かち合った。

デートを終え、俺は『俺』に詰め寄っていた。「オイ『俺』!どうして俺の恋愛はいつもうまくいかないんだよ!」仕方ないじゃないか、俺は恋愛でうまくいくってことがよく分からないんだから。

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