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財布にまつわるエトセトラ

愛用していた財布の小銭入れのボタンが壊れてしまったので、昨日の仕事終わりに新しい財布を買った。

財布を買いに向かいながら、財布を選びながら、買いながら、買って帰りながら、財布のことについていろいろとりとめのないことを考えた。こんなにも財布について向き合った時間は初めてだったかもしれない。その時考えた財布にまつわるつれづれを書き残しておこうと思う。

僕が財布を選ぶ基準は、価格、使い勝手の良さ、そして推しのサッカーチームのチームカラーである青と黒が入っているか、である。幸い青と黒の入った財布は割とある。お店でいろいろ財布を手に取りながら、これは青が弱い、これは青の主張が強すぎるなどと思い悩みながら、どういう基準やねんと自分で脳内ツッコミを入れるなどした。

『財布が壊れたので財布を買う』と書くと、何となく諺のような趣がある。故きを温ねて新しきを知る、的な語感だ。まあごく当たり前なことを言ってるだけだけどね。

財布というものはお金を入れるための道具である。しかしそれにお金を払って買うということは、財布に入れるべきお金が減ってしまうということになる。『財布を買って金欠になる』なんてのもまた諺として成立しそうな気がする。本末転倒であるさま。

財布、或いは眼鏡やカバンや靴のようなものもそうかもしれないが、普段使うものを新調するというのは何となく自分がリニューアルされるような感覚がある。財布を買ってタカシマヤのタイムズスクエアを歩きながら、僕はキンタマがキュッと引き締まるような思いだった。『自分がリニューアルされるような感覚』を表現する言葉として『キンタマがキュッと引き締まるような思い』という言い回しが適切であるかどうかはさておきである。

財布売り場で悩みながらお店のお姉さんにずっと絡んでいたおじさんがいて少し嫌だった。「お姉さんお姉さん、僕はね、もうちょっとこういうやつがいいんだよ」とか言いながら、お姉さんが勧めてくれる財布を次々と手に取って悩んでいた。こういうお店で接客にかこつけて女性に話し相手になってもらう類のセクハラもあると聞く。でも線引きが難しい問題だよなぁと思うなどした。おじさんは結局財布を買って帰って行った。冷やかしだというわけでもなかったのだ。

財布を買って帰りの電車で、『俺の中の陽気なスタンダップコメディアンが、「財布を探す暇があるのなら、いい加減ワイフでも探した方がいいんじゃないのかい?」っていうから穴掘って生き埋めにした』とツイートしたら、何人かの友人が乗っかってコメントしてくれて楽しかった。

財布に限らず、ブランド名のロゴがデカデカと書かれたものはあまり好きではないなぁと、カルバン・ク〇インの財布を手に取りながら改めて思った。カ〇バン・クラインのロゴがこれ見よがしに書かれてさえいなければ、昨日見た財布の中では一番しっくりと使いやすそうな財布だったのに。

いざ新しい財布を決めてレジでお金を払うにあたって、当然ながら古い財布を取り出した。その時になって初めて、今まで使っていた財布が随分とくたびれて汚れていることに気がついた。新しい財布を買う時になって初めて気がつく古い財布の古さ。これまた諺みたいだなぁと思った。

ここまで読んでお気づきの通り、財布を買うあれやこれやの中で、諺みたいだなぁをやたらと思ったのだが、そういえば財布にまつわる諺って何も思い出せない。『財布の紐が緩む』とかは諺と言うよりも慣用句ってやつだもんな…と思って調べてみると、『財布の底と心の底は人に見せるな(自分の財産と心の内は無闇に他人に見せない方がいい)』、『財布の紐は首に掛けるより心に掛けよ(財布の紐を首にかけて盗まれないようにするよりも、無駄遣いしないように心がける方がいい)』なんて諺があるらしい。へー。

財布を買って帰って、古い財布から新しい財布に中身を移すことになるたびに、こんなポイントカードもう使わないよ…みたいなやつが2~3枚出てくるよね。定期的に整理できるといいんだけど、どうも色々溜まっていくよね。

そういえば今までの人生で、財布を落としたことはない。ずっとポケットに収まるような二つ折り財布を使っているのもあるだろう。財布を拾ったことは2回ある。2回ともちゃんと届けました。えらい。

初めて自分のお金で買った財布はピングーの財布だった。ピングーと妹のピンガちゃんが端っこにかわいくプリントされた、マジックテープで閉じるタイプの二つ折り財布で、気に入ってボロボロになるまで使ったような記憶がある。新しい財布に買い換えた後も名残惜しくてしばらくウォールポケットに入れて飾っていたけど、いつどのタイミングで捨てたんだったかな。

結局新しい財布は、1万6000円くらいのものにした。40代男性の持ち物としては安物かもしれないが、貧乏芸人としてははまあ分相応だろう。同じブランドのほぼ同じデザインの財布で、少し傷が入っているからと半額になっているやつがあって正直大いに迷ったのだが、ずっと使う財布をケチるのもなんだか縁起が良くないような気がして新品無傷の定価の財布にした。その判断は悪くなかっだと思っている。

…と、財布にまつわるエトセトラでした。新しい財布から出したお金で買ったおにぎりを食べながらお届け致しました。

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