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バックミラーを見ている

映画や演劇を見る時、皆さんは何を見ているだろうか?今どんなお話になっているのか、登場人物は今どんな気持ちなのか、この先どうなるだろう、まあだいたいそんなようなことに比重を置いて見ているんじゃないかと思う。

先日、同じ舞台を見た人と感想をお話するという機会があった。あんなシーン良かったよね、あのシーンではこんなことが表現されていて凄かったよね、こうなると思ってたらそうじゃなくてびっくりしたよね……そんな感想を聞きながら、自分がそこまで深く物語に没入していなかったことに気がついた。あれ?ちゃんと見てなかったのかな?じゃあ俺は何を考えてたんだ?振り返ると、自分はどうやら舞台を見ながら、それによって湧き上がってきた自分の感情や過去の経験を思い出しながら見ていたようだ。演劇だけじゃなく映画を見ている時も、割とこうなっていることが多いかもしれないなと気づかされた。

映画好きを自認しているが、ストーリーのはっきりしたメジャー系の作品よりも、いわゆるミニシアター系の作品の方が好きだ。それももしかしたら、いやもしかしなくても、ストーリーを追うよりも見る側に考える余地を持たせる作品の方が自分に合っているということなのだろう。ヨーロッパの短編アニメーション、アートアニメーションとカテゴライズされるような作品が好きなのも、ストーリーや人間模様や意味ではなく、それを見て心に湧き上がるものを楽しむのが好きだということなのだろう。何となく自分でも腑に落ちた。

ストーリーの理解ではなく作品を楽しむ……その原点は何だろうと考えた。思い立ったのは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』だった。細かいやり取りのストーリーラインは分かって見ていたけれど、人類補完計画って何だとか、セカンドインパクトって何だとか、ストーリーや世界観の根本的なことは全く理解してなかった。なんなら今でも理解していない。理解してない、分からない、でも面白い、好きだという感覚。例えば物語やテーマではなくアクションのカッコ良さやセリフ回しのけれん味などの表層の面白さを楽しむという楽しみ方、その先に、自分の中に湧いてくるものを味わう楽しみ方があるのかもしれない。

僕にとって『いい作品』とは、それを見て、聴いて、自分の中にたくさんのものが湧き上がってくる作品だ。「とても面白かった!」そう言っていたとしても、ストーリーや登場人物の感情を理解しているかと言えばそうでもなかったりする。そこはどうかご容赦いただきたい。作品の楽しみ方は人それぞれなのである。

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