ピン酢

ポン酢とは、柑橘類の果汁に酢を加えて味を整えた調味料である。レモン、ライム、ゆず、すだち、かぼす等、使われる柑橘類は多岐に渡る。ポン酢に醤油を混ぜた『ポン酢醤油』も一般的には略してポン酢と呼ばれることが多い。

ポン酢の語源に関しては諸説あるが、和歌山県の一部地方で、『ポン』と呼ばれていた柑橘類に由来するという説が有力である。ポンはすだちの一種だがとても風味が強く、高級ぽん酢の原料として使われているが、ある一定の高さの山間部でしか育たず、日照時間や水やりや土などの管理も難しく、現在でも栽培は原産地である和歌山県の一部地方に限られていた。

そのポンの産地で山火事が起きたのは3年前のことだった。幸いにも死傷者は出なかったが、ポンの林の9割が焼失し、再生には数年を要することとなった。大手調味料メーカー各社でポン酢(ポン酢醤油を含む)の一斉値上げと、一部商品の生産停止があったのは、この山火事が原因なのである。

ある調味料メーカーでは、収穫の出来なくなったポンの代わりにインドネシアからポンと風味のよく似た果物の輸入を始め、商品化に成功している。その果物は現地では『ピン』と呼ばれており、現在我々が利用しているポン酢の一部は、実はポン酢ではなく『ピン酢』なのである。