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トイレの性悪説

公共トイレの手洗い場は大抵、手をかざすとセンサーに反応して水が出るか、ボタンを押すと一定時間水が出るような仕様になっている。ここ10年か20年くらいだろうか。蛇口を捻ると水が出るような水道は今やほぼ見掛けなくなった。

どうしてこうなったのかを考えると、パッと思いつく理由がまあある。蛇口をひねって水を出しっぱなしにするイタズラがあったんだろうなとか、公共の場で水をポリタンクか何かに入れて持ち帰るような輩がいたんだろうなとか、そういう理由だ。そういえばどこかの学校でプールの水を出しっぱなしにしていて数百万円の金がかかったというようなニュースがあった。ひねれば水が出るようなシンプルな水道ではなくセンサー付きのものにするのにはおそらくかなり余計に金がかかるだろうが、その先行投資をしてもいいくらい、イタズラや水泥棒があったのだろう。そういえば予備のトイレットペーパーが盗まれないようにガードされているトイレをよく見るようになったのもここ数年のように思う。

手洗いだけじゃなく、便器もセンサーで自動的に流れるトイレが増えた。これも単純にトイレを流さないやつがいるからだろう。日本のように水洗トイレが普及している国は珍しいという話を聞いたことがある。流さないやつがいるというのも、水洗トイレが少なく、トイレを流す習慣のないような国から来る人が増えたせいもあるのかもしれない。水道はセンサーで、或いは時間で止まるようになって、トイレはセンサーで勝手に流れるようになっている。どうせお前ら蛇口をきちんと閉めないだろ、水を盗むんだろ、用を足したあと流さないだろ、清々しいまでに利用者のことを信頼していない、徹底的な性悪説による設備だ。ここまでにあっただろう紆余曲折を想像すると面白い。ボタンを押したりレバーを引いたりして水を流すのは公衆衛生の観点からよろしくないので……なんてそれっぽい建前まで容易に想像がつくのは僕の性格が捻れているからだろうか。

ここまで書いてふと気づいたが、これはトイレ会社の利権もあるのかもしれない。より高いものを売りつける、そしておそらくセンサーの故障などによる定期的なメンテナンスも必要となる。そのための自動化。水の出しっぱなしによる費用を考えると100万円削減出来るんですよ?他でもやってますよ?なんてセールストークで簡単に契約が取れそうな案件だ。疑心、利権、不信、悪意……水に流せないような人間の汚い部分を反映しているのが、トイレという場所なのかもしれませんね。

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