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何かがいる部屋

今の家に住み始めて2年になる。今までずっと気付かないふりをしていたが、どうやら我が家には僕以外の『何か』がいる。

今こうして1人ベッドに寝転んでいる間も、ずっと『何か』の視線を感じる。具体的に何か実害があるわけでも、実際に見たり異音がしたりしたわけでもないのだが、それでも確かに『何か』がいるのを感じるのだ。うまく説明出来ないのがもどかしいのだが、確かにそこにいることを感じるのだから仕方がない。これ以上説明のしようもないのだ。

こう書いている間に、『何か』がベッドの裏から本棚の方に移動していくのを感じた。何も見えない。何も聞こえない。それでも確かにそこには『何か』がいる。それを確かに感じるのだ。不動産屋さんにも一応伝えたが、なんだか曖昧な相槌を返されただけでまともに取り合ってくれなかった。おかしいのは俺の方なのだろうか?確かにそこには『何か』がいるのに!

こういう時にインターネットは便利だ。いろいろと検索していると、あるホームページに辿り着いた。そこには俺と同じような『何か』について書かれていた。やっぱりそうだ。『何か』は確かにいるんだ。俺だけが感じられるわけじゃないんだ。そこでは『何か』に対抗するための霊的なグッズがいくつか売られていた。確かに具体的に何かがあるわけではないが、ずっと『何か』がいるというのも気味が悪いと思って、なかなか寝付けなかったり悪夢を見るようになったりしていたところだった。ホームページの記事によると、この症状も単なるストレスなのではなく、その『何か』から発せられる電波による場合もあるのだそうだ。そうだったのか。俺は迷わず32000円を振り込んで、『何か』からの電波を弱める効果があるという金属製のリングを買った。これでひとまず安心だ…。

リングのおかげで俺はぐっすり眠れるようにはなった。しかしこの部屋にいる『何か』がいなくなったわけではない。俺は引き続き『何か』について調べてはいるが、まだまだ情報も少なく謎が多いようだ。最近はいつもの『何か』とはまたちょっと質感の違う『何か』もまた増えたような気配がする。クソ忌々しいやつらだ。俺はいつものように何も見えない虚空に向かって悪態をつくと、首筋を掻きむしった。

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