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【ショートコント】リソース不足

〔登場人物〕
生徒:集中できない。
先生:集中させたい。


生徒:集中できないよー。
先生:どうしたっていうんだ?
生徒:先生。さっきから、全然、授業に集中できないんです。
先生:いつもは集中できているのに、どうしたっていうんだ。
生徒:黒板を見てください。前の時間の世界史の板書が、うっすら残ってるんです。
先生:それは大変だ! 黒板はきれいに消さなくてはならないというのに!
 (先生が黒板を消す)これで、私の授業に集中できるな。
生徒:うわー。集中できないー。集中できないよー。
先生:黒板はきれいになったのに、どうしたっていうんだ。
生徒:黒板を見てください。まだ何かがうっすら残ってるんです。
先生:すまない、私としたことが。どこかな?
生徒:左端です。窓際のところ。
先生:確かに。うっすら何かが残っている。
 (先生が黒板を消す)消えないぞ。……いや、ちょっとまて。
生徒:どうしたっていうんですか。
先生:これは、黒板消しでは消えない。
生徒:どうしてですか。チョークの跡じゃないんですか。
先生:君が知らないのも無理はない。あれは、十年前にこの教室の窓から飛び降りた生徒の霊だ。
生徒:それはますます気になる! これじゃ、授業に集中することなんで、絶対にできない!
先生:分かった。少し待っていなさい。
 (先生が霊を払う)ほら、きれいに消えただろう。
生徒:どうやったんですか。
先生:それは、私の授業では教えられない。
生徒:集中できない。集中できないよー。
先生:どうしても知りたいっていうのかい。除霊は、家庭科の範囲だ。私が教えるわけには……。
生徒:違うんです。先生の頭の上で、黒い物体がゆらゆらと動いているのが、気になるんです。もしかして、さっきの霊が悪さをしているんじゃないですか。
先生:ん? 違うぞ。これは先生の頭髪だ。
生徒:頭髪? そんなはずがありません。頭髪は、そんなふうにゆらゆらと動いたりしません。
先生:これは、そういう髪型なんだ。
生徒:なんてことだ。先生の髪の毛にレイヤーが入っていて、自然で軽やかな動きが表現されているせいで、集中できないー。
先生:よく分かっているじゃないか。少し待っていなさい。今すぐ、抜くから。
 (先生が髪の毛を抜く)ほら、これで何者も君の集中を妨げたりはしない。
生徒:ダメだ、集中できないよー。
先生:私が大切な髪の毛まで犠牲にしたっていうのに、この上、いったい何が君の集中を妨げているんだ。
生徒:後ろの席から、白くて小さなものが飛んでくるんです!
(先生は床にかがんで、何か小さなものを拾い上げる)
先生:こ、これは! 消しゴムの切れ端だ! 少し待っていないさい。今すぐ消すから。
(先生は消しゴムの切れ端を拾い集め、指先で捏ねて固める。その消しゴムを、親指で弾いて後ろの席の生徒を消す)
生徒:ありがとうございます! ついでに、両側も。
(先生は、言われるがままに、生徒の両側の席の生徒を消す)
先生:これで集中できるようになったかな。
生徒:ダメだ! やっぱり、集中できません!
先生:これ以上、一体何が問題だっていうんだ。
生徒:集中して授業を受けたいのに、肝心の授業が、ちっとも進まないんです。
先生:そうか。集中できていなかったのは、私の方だったのか!
 (先生は、チョークを飛ばして、目の前の生徒を消す)
 では、授業を進めよう。

Photo by Barry Zhou on Unsplash

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