見出し画像

『息吹』の「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」を読んで気付かされたこと

私は『息吹』がテッド・チャン氏の作品の中で一番初めに選んだものとなりました。

全ての物語がそれぞれの意味で心を揺さぶるものでした。

中でも 、私は「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」についてお話したいと思います。

まだ読んでいなくて、物語について情報を得たくない方は、読んでから、この文章に目を通すことをお勧めいたします。

息吹 https://www.amazon.co.jp/dp/4152098996/ref=cm_sw_r_tw_apa_i_.EH7DbPER437J




この物語は生物AIの開発者と、AI自身の物語です。
開発者たちは生物の AI を開発し、彼らを成長させながら日々を過ごしていきます。
彼の知能が向上するとともに周りの状況はどんどんと変化をしていきます。
その変化は必ずしも AI にとっては良いものではありませんでした。 彼らを救うために開発者たちは様々な策をめぐらしていきます。
開発者達はとても誠実で AI たちに私たちが何を考えてどう行動するかということを伝えています。 そのコミュニケーションの中で開発者たちは AI が私たちが思った以上に成長していることに気づかされます。

私はAIが開発者達に要求することについて、とても不気味だと感じてしまいました。
なぜならば、彼らは開発者たちが、自身にできる作用や拡張を知った上で、それを自身に使うように要求してくるのです。
AIの成長段階を過去に戻してやり直すことや、 活動を一時的に停止させることは、開発者たちにとっては日常的におこなっていることです。
しかし、AI 自身がそれを理解した上で、行為が開発に対してメリットがあると話しながら、作用の行使を要求するのは、私に恐れを抱かせてきました。
人間が、自身に加えられない変更を、 私たちは AI に対して行っています。だからこそ、彼ら自身が変更できることを常識として、開発者に接することについてなんとも言えない気持ちになるのです。


さらに、この物語は私が気づいていなかったことを、気づかせてくれます。
開発したAIたちを、私たちはコピーして、身体を入れ替えて、全く別の用途に用いることもできてしまうということです。
作中の開発者たちは、今まで「動物」として接していた彼らと、「人間」として接することになる可能性に向き合わなければならなくなります。
それは、自身が成長させてきたAIたちが、性の対象としても見られることを意味し、 どのような選択をすれば彼らにとって最も良い状況となるかを、葛藤とともに考えさせてくるのです。
もはや開発者ではなく、「親」としてAIのことを思うようになるのです。

これからもAIの開発者は増えますし、一般の方がAIと触れ合う時間も増えていくはずです。
だからこそ、作中の開発者の葛藤を、私達も感じる必要があると思います。
ぜひ、読んでほしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?