龍雨市

小説や日記用

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最近の記事

KINYA

いつからか自分の感覚が自分の身体が自分のものだという確証が揺らいでいる。遡る。過去の記憶では僕は運動会で100m走をしていた。転けて擦りむいて、僕は白いテープを目掛けて懸命に走った。芳しく無い結果に終わったが両親は褒めてくれた。あの時はまだ実感があった。今でも運動場の砂の感触や10月特有の日照りの激しさ、クラスの同級生たちの歓声を正確に思い出せる。今は自分の一挙手一投足が他人事の様に思える。大学生になって、家とキャンパスと行きと帰りの電車だけが僕の世界だった。いや、それも自分

    • trial mode

      地下鉄構内は腐った小便の匂いがする。ホームのギリギリを歩いていた。涙が溢れ足が震え出した。決めた事は叶わなかった。ホームの中心へとヘロヘロと戻る自分が情けなかった。飛べやしなかった。飛べやしないのに、線路を見つめる度に鮮明に過るこの映像を、このイメージを誰か止めて欲しい。誰か止めて欲しい。ただやはり鉄の塊には圧倒される。その風圧や巨大な質量を感じさせる巨躯には人間を死へと至らしめる説得力があった。俺は震えながら帰路へ着いた。この家には時代遅れのブラウン管とこれまた埃っぽいスー

      • 大学2年間大反省 

        今日は良い一日だったと思う。何ならこの2年間で最も有意義な1日だった。学部三年年を控えたこの春休み最終日、私は咽び泣きながら将来や大学生活についてぐるぐる考えていた。いや、何なら昨日からずっとこの2年間の事について振り返っていた。この文章を書く寸前、今の今までグズグズと泣き崩れていた事からも分かるように私は決して毎日精神的に安定し続けていられる方では無い。断言調で言い切ってしまったがこの文章を書こうと思ったきっかけ、というか本日最大の気づきは本当に生来私はそういう奴だっただろ

        • 日記、雨の日が好きと言うこと

          朝から雲行きが優れなかった。バイト先に今日もギリギリで滑り込み、朝9時半から17時半まで暫くレジを打ち、気心の知れた先輩方と笑いながら軽作業に従事するなどしていたらいとも簡単に労働が終わった。もはや大学も完全リモート授業の体制になってから3ヶ月が経とうとしている。自分にとっての会話の場、テキストベースであったり人工的なデバイスを介さない環境下での他者とのリアルタイム性のあるコミュニケーションに限っては最早バイト先かたまの友人との食事の機会程度に留まる。週に2日程の貴重なコミュ

          一週間続いた憂鬱の原因を考えてみる

          先週の日曜日、私は些細な事でバイト先の年長者に注意を受けた。それは至極真っ当な指摘であったし原因は私が怠惰であったことだ。「何で貴方はレジをあまり打たないのか、君はレジ打ちでお金を貰ってるんだからそれは間違っている、先輩が沢山動いていて君が動かないのは道理が通っていない。」彼の言葉は大体この通りである。勿論私にも言い分があったし、本当に何にもしていなかった訳ではなく他の作業を任されていたし、色々言いたいことはあった。若年者の言葉、特に私のような気性の者にはその時発言は許されて

          一週間続いた憂鬱の原因を考えてみる