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風から少しだけ電気を作る

ここ何年か、風から少しだけ電気を作るための研究をしてきていまして、今日も、対応しかけの論文リバイズをオフィスに残して、地下室で風車の低温試験に1日を捧げていました。眠くなるまで何か書きます。

なぜ、そんな研究を?それは、南極大陸の電気のないところで、オーロラの写真を何ヵ月も撮り続けたいと思ってしまいまして、カメラと、そのカメラを動かすパソコンには電気が必要で、太陽の昇らない季節のことなので太陽パネルも使えないということで、こうなっています。

南極は寒すぎて、そこで使える風力発電システムは売っていないので研究をしている、ということになります。マイナス80℃でも、くるくる回って発電できる風車とかが必要なのです。

風車の回転部はベアリングと呼ばれるパーツで、ここを冷やしてみると、マイナス30℃くらいから限界が見えてきます。低温で金属が縮むこと、グリスが固くなること、などによって回転がスムーズに行かなくなります。

この「冷やす」という基礎的な試験からして、とても単純なようで、実は奥が深そうです。私は幸運にも名誉教授の先生に教えて頂きながら、何度か試行錯誤させてもらいましたが、やはりやっただけ、少しだけ上手になってきました。今回は2日前から一人で準備を少しずつ重ねて、美しくスムーズに実験できました。準備が8割。

いろいろコツがわかってきて楽しいのですが、最もクリティカルなことを挙げるならば、温度計です。私は、この低温試験をやるまで、温度計を作らないといけないなんて考えたことありませんでした。

普通の温度計は、マイナス40℃まで測れますが、それ以下の温度になると計れません。マイナス40℃以下になると、単に物体がいま何度になっているのかを正確に知ること自体が、そう気軽にできなくなるのです。私の場合は、ロガーにK型熱伝対をつけて、温度計にしています。もっと他のやり方があるのかもしれませんが。

なにはともあれ。こういう基礎実験も面白い。もう決まりきっているように思えて、やってみなくとも大丈夫のように思えることでも、面倒だけど実際にやって確かめてみると、なんとそうなんですか!そっちですか!?というようなことが時折起こったりしています。

しめきりがあるので、喜んでばかりもいられませんが、思うように行っても、思うように行かなくても、どちらにしても、面白いことには違いないんですよ。研究って楽しい


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