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経営者の言う「売上をあげろ」は、単に「金を稼げ」と言っているのではない、という話

売上を上げる。これは企業にとって重要なテーマの一つだ。

しかし、“売上を上げろ”という指示を出されても、

「また金の話か」
「そんなことより利用者さん(顧客)のケアに集中したい」
「もっと先に取り組むべき問題があるだろ」

そんなふうに思う人も少なくないと思う。

ただそういう理解になってしまう理由は、売上を上げるということを単に金を稼ぐという表面的な捉え方しかできていないからだ。

ビジネススクールの財務会計クラスでは、まず始めに売上のことをこう定義する。

「売上とは、企業が社会に認められた価値の総和である。」

つまり、企業が提供する商品なりサービスなりを、より多くの人に認めてもらい、購入・利用してもらっているからこそそれが売上になるのであり、売上とはその認められた価値が金額として数値化されたもの、ということだ。

例えば、品切れのないラーメン屋が2つあったとする。
仮にA店とB店としよう。

A店の売上は月1,000万円
B店の売上は月100万円

どちらも品切れしないので、お客さんがくれば確実にラーメンを提供できる。

A店とB店は、どちらが繁盛していると言えるだろうか?
どっちのラーメンがおいしいだろうか?
どっちのラーメン店のほうがよい接客をしているだろうか?
どっちのラーメン店のほうが評判がいいだろうか?
どっちのラーメン店のほうが知名度が高いだろうか?
どっちのラーメン店のほうに行ってみたいと思うだろうか?

ごく単純に素直に考えれば、B店より10倍も売り上げているA店のほうが優れているのではないかと言える。

売上を上げるとは、他のラーメン店に負けないような(もしくは差別化するような)おいしいラーメンを作り、それを心地よい接客で提供し、多くの人に知ってもらい、またここのラーメンを食べたいと思ってもらい、リピーターになってもらうことだ。

これを介護の世界に置き換えると、

優れた介護技術を磨き、それを心地よい接遇とともに提供し、あの事業所は質がいいと言ってもらい、介護サービスを利用するならあの会社だと思ってもらい、実際に利用者の紹介や利用相談が増えるということだ。

それが、自社のサービスが社会に認められているということであり、売上という数値に反映された結果、売上が大きくなるということだ。

売上を上げるというのは、単に金を稼ぐという表面的な話ではなく、もちろん営業に行きまくってなんとかしろという短絡的なことでもなく、経営者をはじめ管理者、現場職員が一丸となって取り組むべき全社戦略の重要な指標をもっとよくしようというなのだ。

「売上とは、企業が社会に認められた価値の総和である。」

企業のあらゆる活動が価値を高めることに繋がっているのが、優れた企業だ。

経営者が戦略策定や意思決定を間違うと、もちろん売上に影響する。

管理者の部下に対するマネジメントが悪いと、現場スタッフのモチベーションが低下してケアが粗雑になってしまうこともある。それも、巡り巡って売上に影響する。

介護現場においては、利用者さんの声掛けひとつとってみても、それは価値を創出する重要な場面であり、そのひとつひとつが積み重なった結果、売上が上がったり下がったりするのだ。現場のケアは量が多いだけにとても重要だ。チリも積もれば山となる。それを宝の山にするのかゴミの山にしてしまうのかは現場の看護介護職員等が提供しているケアの質で決まる。

つまり、売上を上げろという指示に対する現場の解釈は、自身の能力を磨き、それを求められる形で提供し、利用者さんの自己実現を助け、あなたたちの支援があったおかげで私は自分らしい生活を送れていると言ってもらい、ケアを必要としているたちに自社のサービスを知ってもらい利用してもらえるように、自分達が何をすればいいかを問われている、と受け取るのが正解だ。

もちろん、まず経営者自身にこういう解釈ができていることが大前提だけど。

介護サービスの会社を経営しながら、経営学を学ぶため大学院に通っています。起業前の13年間は特養で働いていました。介護現場と経営と経営学、時々雑感を書いています。記事は無料ですがサポートは大歓迎です(^^)/