アトピーの肌と治療痕だらけの歯と

アトピーがひどくて、痒くて痛くて、保湿をちゃんとして薬を塗っても肌はボロボロ。
歯も悪くて弱くて、治療痕だらけで、いくら頑張って歯磨きしても、昔治療した歯の内部が虫歯になっていると言われ、何回も何回も治療する羽目になってお金ばかりかかる。

ある日、何もかもが嫌になって
「化粧水も要らないような、丈夫で健康な皮膚と、虫歯が1本もない健康な歯があれば、それ以外何も要らなかったな」
などと考えた。

考えてすぐに私の中から「本当に?」との問いかけが生まれる。

健康な皮膚と歯があれば、本当にそれ以外何も要らないの?

今、私の周りにいてくれる、大好きな母と優しい兄たち。
父はちょっと難ありだけど、アル中でもないし性的暴行もされたりはしない、ちょっと癖が強いだけ?で、仕事帰りには大体電話をくれて「何か買っていくものはないか」と聞いてくれる。
いつも一緒にいてくれるかわいいかわいい猫たち。
そして思慮深く高いこの精神性(敢えて自分で言う)。

これらのものを捨ててまで、健康な皮膚と歯があれば、本当にそれで幸せなのだろうか?

思慮が浅く、粗暴で、道端の草花や虫や犬や猫を見ても何とも思わない、皮膚と歯は健康でも内臓に疾患があるかもしれない、ヤバい男ばかり好きになっちゃって暴力振るわれたり体売らされたり…
幸せを感じることも満たされることもなく、いつも何か足りない、あれもこれも足りない足りないと、自分の幸せに気づけない、
そうなったとしても、皮膚と歯さえ健康であれば、それでいいの?

…いや、それは嫌だな…。
私はなんだかんだ言って、今の家族が好きなんだ。
そして、ボロボロの皮膚と歯と、高い精神性を持つ、この自分のことも好きなんだ。
手放したくないんだ。

そう思ったら、なんだか涙が止まらなかった。

人はいつも無い物ねだりをする。
他の人から見れば、自分がどんなに恵まれてるかなんて思いもせずに、あれも足りないこれも足りないと、持ってないものばかり数える。
だけど、冷静に自分を眺めてみれば、きっと充分幸せで、今の自分以外何もいらないと思えたりもする。

なんてことを考えてたら、5年ぶりくらいに風邪をひいて、鼻が詰まって呼吸が苦しくてだるくて鼻水も出て、まるで
「さあどうだ?こんなに苦しくてもまだその体に居たいか?」
と何者かに試されているような気分になって、まだ居るよこの野郎、と悪態をついた。

(風邪はもう治りました)






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