双方向に被害者を生む、凄惨なミャンマーのクーデターをスタンフォード監獄実験から考察 一日も早い解決を願って
今回は、懸念されるミャンマーのクーデターをスタンフォード監獄実験から考察しながら、何が起きているのかをお伝えできればと思います。
クーデターのはじまり
2021年2月1日、ミャンマーでクーデターが発生。
クーデターはミャンマー国軍により実行され、軍部出身である、ミンスエ第一副大統領が暫定大統領となり、憲法417条の規定に基づき非常事態宣言を発出しました。
これにより、国軍が政権を掌握すると、ミン・アウン・フライン国軍総司令官に全権力が委譲され、事実上の国家指導者となったことをミャンマー軍が一方的に宣言します。
クーデター前に国民民主連盟政権の実質的な指導者であったアウンサンスーチー氏は拘束され、無線機の不法輸入などの容疑で訴追されました。
増大する被害者
2021年4月7日時点で、ミャンマーの軍の弾圧による死者は、少なくとも581人に上ると発表しました。
国際人権団体セーブ・ザ・チルドレンは22日の時点で、2月1日に起きたクーデター以降、ミャンマーで20人以上の子どもが治安部隊に殺害されたと指摘しており
「最も憂慮すべきことだ」
と表明しています。
クーデター以降、国軍の残虐性は増大し犠牲者も増え続けており、今後も被害の拡大が懸念されます。
スタンフォード監獄実験
実は、スタンフォード監獄実験については、
『使ってはいけない心理学シリーズ』
で、記事にしようとしていました。
スタンフォード監獄実験は、2000年以降に、新事実の発覚から研究内容と結果に疑義が生じており、その部分をクローズアップし考察しようと考えていたのです。
そのため、今回は、簡単に概要を説明しながら、ミャンマーのクーデターの異常性を解説していきたいと思います。
【スタンフォード監獄実験の内容】
この実験は、1971年にアメリカ・スタンフォード大学心理学部で、心理学者フィリップ・ジンバルドー が責任者として実施されました。
その内容は、
『普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう』
ことを証明しようとしました。
疑似的な刑務所(実験監獄)はスタンフォード大学地下実験室を改造したもので、実験期間は2週間とされます。
実験の参加者は、新聞広告などで集めた普通の大学生などの心身ともに健康な21人でした。
被験者の内、11人を看守役に、10人を受刑者役にグループ分けし、それぞれの役割を実際の刑務所に近い設備を作って演じさせます。
その結果、
『時間の経過とともに、看守役の被験者はより看守らしく、受刑者役の被験者はより受刑者らしい言動が認められることが証明された』
とジンバルドーは主張しました。
クーデターの異常性と権力への服従
ミャンマーは文化・風習、政治・経済など様々な点で日本とは違いがありますが、弾圧により5歳の子どもを始めとする多くの民衆を殺害・拘留する、などの事実は受け止められないほど重たい現実です。
今、日本で生活している大多数の人は、この現状を残酷だと捉えるでしょう。実際、私もそう感じます。
スタンフォード監獄実験の結果は、
【権力への服従】
強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう。
【非個人化】
元々の性格とは関係なく、役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまう。
と、しているため、今回のクーデターの異常性を理解しやすく表現していると感じます。
つまり、ミャンマー国軍の人民は、生来の性格に関わらず、
「権力への服従」
「非個人化」
と、いう心理的作用から、自分の社会的役割を演じてしまう。
その結果、多くの国民の命を奪うという残虐的な行為を永続的に繰り返してしまう。
果たして、本当にそうなのでしょうか。
まとめ
ミャンマーのクーデターの残虐性を考えた時、スタンフォード監獄実験で証明された
「権力への服従」
「非個人化」
と、いう表現は一見、根拠があるようにも感じます。
しかし、事理善悪は地域や人種により多種・多様であり、一般化させることは困難であるといえます。
そのなかで、普遍的に人間の行動原理の大きなものとして、
「生存本能」
「防衛機先」
と、いうものがあります。
これは、
「生きようとする本能」
「自分を守ろうとする本能」
で、あるとも言えます。
そして、それらを根幹に考えた時、
加害者側である軍部の大多数の人間も、被害者になり得ると考えられます。
それは、軍の命令により、加害者も被害者も将来に渡って、大きな被害を被ることになるということです。
なぜ、この様なことが引き起こされてしまうのでしょうか。
一刻も早く、平和的な解決が図れることを願うとともに、無関係な人の犠牲が少しでも減るように、自分なりに何かできないか考えてみたいと思います。
記事を書き始めた時は、独裁・軍事政権が与える心理的影響や責任についても伝えさせて頂けたらと思いましたが、信憑性のある情報が不足しているため、続編でその辺りも含めて再考察していけたらと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
このコラムは私の個人的な知見に基づくものです。他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、生活に役立てて頂けたら幸いです。
【文献】
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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