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第7号宗会だより

第7号宗会だよりに第323回定期宗会の通告質問が掲載されています。ここでは、「新しい領解文」に関する質問を抜粋して転載します。一部宗会議員の報告書も添付しました。宗会だよりは発行側の要約なので合わせてご確認ください。全文は末尾のPDFよりご覧ください。


第7号2024年3月発行 宗会だより
※「通告質問ダイジェスト」より新領解文の問答を抜粋

那須英信議員(備後・八五倶楽部)

①勧学寮と学階有階者の関係性
②現況の解決策
問 

①新しい「領解文」発布には勧学寮の同意もされ、同年2月1日号の「本願寺新報」に勧学寮が「今回発布された消息文を以上のような味わいで唱和くださいますことをここに念じます」と解説文を締めくくっています。令和3年4月15日のご親教「浄土真宗のみ教え」の解説書が出され、数人の勧学はご門主さまが宗祖のご法義を示されたと味わわれています。ところが昨年3月に「勧学・司教有志の会」が新しい「領解文」に異論を唱え、「取り下げられるまで活動していく」と表明しました。令和5年10月の『宗報』での回答で、淺田勧学寮頭は「有志の会が主張する内容は『教義に違する』とは言えません」と述べられています。この齟齬について次の2点に質問します。
①教学最高機関である勧学寮と、学階有識者との関係性を歴史的、法規的にどのように捉えていますか。
②先述について、矛盾点をどう理解し、解決策をどう講じられてきたのですか。


①勧学寮が法規上に規定されたのは、大正1年からであり、法主(現在の門主)直属機関として置かれました。その後、昭和2年に宗制・宗法の制定に伴い、勧学寮規程が制定、勧学寮は独立の機関となり、寮員8人で組織し、そのうちの1人を寮頭とする体制となりました。また、勧学寮には、教義の研鑽とそれに必要な調査及び審議を行うため、従前通り出仕が置かれ、寮員以外の勧学及び司教全員を任命することが規定されています。このように勧学寮と勧学・司教有階者の関係は無関係ではなく、勧学寮は、勧学及び司教有階者が一体となり運営される体制でした。平成24年の機構改革で、寮員は8人から5人に減員されるとともに、勧学寮出仕の規定も削除され、現在の体制となりました。

②令和5年12月15日付で、勧学寮頭より総長宛公文書「勧学寮の見解」が提出され「現寮員の原点は、2022(令和4)年12月1日付の同意文書にあることに相違ないこと」、「本願寺新報等に掲載された「ご消息解説」が現勧学寮の新しい「領解文」に対する見解であること」が示され、続いて、「しかし、現在の宗門内の新しい「領解文」に対する反対は、解説文作成時には想定していなかった批判がなされたり、教学的見解の相違が主張されたりしています。これらの批判に対して、勧学寮としても如何に対応するかを急がなければならないと考えております」と述べられています。総局としては、その早急な対応を察頭にお願いしているところです。議員の「勧学寮の発信と、勧学・司教有志の会の意見に齟齬がある」との指摘については、勧学寮が対応されることとは存じますが、勧学寮と学階制度の在り方やご消息発布の手続きの在り方など制度上に課題があるのであれば研究が必要と考えています。

渡邊幸司議員(安芸・顕心会)

新しい「領解文」について

新しい「領解文」による混乱の原因はみ教えが変わるのではとの不安、役職者の教学理解不足、手続きの問題です。令和5年2月3日の法義示談における相馬一意和上の新しい「領解文」には「少し誤解される恐れがある。大きく誤解されると宗意安心に反する異安心の恐れがある」との発言から不信感が募り、様々な会議の場で問いましたが手続きに瑕疵はないとの説明のみでした。勧学寮に、発布に同意された経緯と消息の内容の詳細説明をお願いしたいです。総局、勧学寮と、勧学・司教有志の会、考える会などが対立する前に話し合いができなかったのでしょうか。役職者、宗会議員は、教学の研修を受ける必要があります。


勧学寮の現状認識については令和5年12月15日付の勧学寮頭より総長宛の公文書において「現在の宗門内の新しい「領解文」に対する反応は、解説文作成時には想定していなかった批判がなされたり、教学的見解の相違が主張されたりしています。これらの批判に対して、勧学寮としても如何に対応するかを急がねばならないと考えております」との見解が示されています。総局としては、この見解を尊重し、是非とも協働していきたいと考えています。

竹中了哲議員(富山・顕心会)

①総局が、徳永前勧学寮頭と深川勧学を監正局に申告していることについて
②本来の「領解文」の位置づけについて


①総局が令和5年10月に徳永前勧学寮頭を、令和6年1月に勧学・司教有志の会の代表深川勧学を申告した目的は何ですか。ご法義より宗門内の秩序が重要と考えているのですか。勧学や司教はご法義を誤らないように指導するのがその使命です。そのような学者を総局(宗会議員でもある)が申告することは考えられないことです。宗門の活動の根底には常に浄土真宗が流れていなくてはなりません。その中心にあるのが勧学や司教です。

②富山教区での新しい「領解文」の学習会で、総局から「蓮如上人の作と言われているが、確実ではないから本来の『領解文』は聖教ではなく、準聖教でもない」との説明がありました。私は今まで本来の領解文は、『宗制解説』(本願寺出版社)にあるように、「御蔵版」でもあることから、聖教に準ずるものとして宗門は扱っていると考えていました。総合研究所のホームページにも、聖教解説欄には、「領解文」の著者は蓮如上人とあります。さらに第16代宗主文如上人は、「いまひめおきし蓮如の真蹟を模写し印刷して、家ごとに伝へ、戸ごとに授けて、永く浄土真宗一味の正意を得せしめんと思ふなり」と述べておられます。その他、「領解文」について総合研究所の公式発表として、これは、真宗教義を会得したままに口に出して陳述するように第8代宗主蓮如上人が作られたとされ、山科本願寺落成の頃から読むようになったと言われている、とあります。そのような浄土真宗領解の歴史をも否定することになります。


①監正局の懲戒手続きを定める宗則「審査審判規程」第15条に「懲戒手続き又は審判手続きに関する一切の書類は、別に定める場合を除き、処分又は審決が確定するまでは、これを公開してはならない」と規程されています。現在、処分又は審決が確定していませんので答弁できないことをご理解ください。

②従来の「領解文」は、宗制に定める「御文章等」の「等」に入らないのは蓮如上人作について諸説があり確定していないからです。『蓮如上人御一代記聞書』も、蓮如上人の語録でほぼ間違いないと考えられていますが、語録であり一言一句の正確性は担保できません。聖教は本当に確かなもののみという厳密な判断によっております。総合研究所のホームページは、「領解文」が「蓮如上人作」と表記していますが、「蓮如上人が作られたとものとされる」との本文の記述が正確です。表の表記は「(蓮如上人)」に直ちに修正します。

松野尾慈音議員(東海・一信会)

門主無答責に関わる総局の姿勢について

新しい「領解文」末尾に「龍谷門主釋専如」とあることから、一般社会ではその内容について、記名のあるご門主さまに責任があるとみなされます。宗法では、門主無答責と定められていますので、新しい「領解文」の内容については、申達した総局に社会に対する説明責任があると思いますが、いかがですか。


申達責任は総局が負いますが、あらかじめ教義に関する最高機関の勧学寮の同意がなければ、総局は申達立案を上款できません。総局はご消息の内容について判断できる立場にないため、勧学寮が責任をもって同意することになっています。このことから、「法規通則」には、「ご消息は、門主の署名並びに総長及び勧学寮頭の副署をもって発布する」と規定されており、副署した総局としても責任をもって、同じく副署した勧学寮に対し、想定しなかった批判や教学的見解の相違に対する早急な対応をお願いしているところです。社会に対する説明責任は、申達した総局にあります。

加藤一英議員(安芸・八五倶楽部)

①総局・宗会議員の権限に関する法的解釈について
②「新しい『領解文』」に関する教義的見解の相違について、勧学寮への説明責任を求める提案


①宗法第70条には「宗門の宗務機関は、その職務に属する事項を行うについて、互いに他の宗務機関に不当に干渉してはならない」と規定され、総局は勧学寮が同意したご消息の内容に立ち入ることはできないと説明しています。従って、ご消息の取り下げや、その内容の撤回を総局は判断できる立場にないと考えられ、宗会も同様と思われますが、法的解釈はどうなるのですか。

②淺田勧学寮頭は、新しい「領解文」に関する勧学・司教有志の会の声明に、「『教義に違する」とは言えません」と『宗報』(令和5年10月号)で回答しています。混乱の収束に努めることは、「伝わる伝道」の研究と実践上、避けて通れぬ重要課題です。対応を急ぐとともに、総長は公文書をもって、勧学寮に教義に関する最高機関とし丁寧な宗門内への説明責任を果たすよう要請し、回答を求めるべきです。


①総局は、法規に従い、勧学寮の同意を得て、ご門主さまよりご消息を発布賜ったものであります。法規に定められる手続きを経て発布賜ったご消息は、確定事項であり、法規上、取り下げや撤回はできません。

②新しい「領解文」の各教区での学習会が始まった折、参加者から「勧学寮から説明を求めたい」という要望があり、総局としては、勧学寮に学習会に出向していただくようお願いしましたが、実現はしていません。しかし、現在の勧学寮の見解として、勧学・司教有志の会の批判等について「如何に対応するか急がねばならない」との返答をいただいているので、総局としては、この見解を尊重し、是非とも協働していきたいと考えています。

髙屋顕裕議員(福井・誓真会)

新しい「領解文」問題の対応について

勧学・司教有志の会から、新しい「領解文」問は宗意安心に相違しているとの「声明」とともに、取り下げを求める申し入れがなされています。教学は勧学寮、行政は総局が管轄し、問題は区別し論じるべきです。行政面では宗務機関同士の不当な干渉を禁じた宗法第70条により、総局が取り下げをすることはできません。新しい「領解文」で問題にされている「私の煩悩と仏のさとりは本来ひとつゆえ」は「仏のさとり」の内容で分別が無い仏の智慧「無分別智」を示します。私たちは自力ではさとれない凡夫で、あくまで分別を通してしか理解できません。ある意味、真宗学ではご安心、さとりの領域を分別を通して知ろうとしますが、論理的に究めたとしても、それは「さとり」ではないのです。安心は「如来より賜りたる安心」で「私の安心」ではありません。新しい「領解文」も、領解の仕方が正しいか、間違いかはあくまでも分別であり、凡夫の側が判定できるものではありません。お互いを認めながら折り合いをつけてゆくことも肝要なのではないでしょうか。


総長の執務方針及び答弁の通り、令和6年度の宗務の基本方針に、新しい「領解文」を掲げることは、宗門内の混乱を長引かせることとなり、また、併せて取り扱いについては、強制的なものではなく、寺院にあってはご住職が、また、別院にあっては輪番が、というように、現場の責任者が唱和するかを判断していただくように致します。

松原功人議員(山口・顕心会)

現代版「領解文」制定方法検討委員会答申とご消息について

現代版「領解文」制定方法検討委員会とご問消息に関してご消息の作者と、「新しい「領解文』(浄土真宗のみ教え)」の名付けは誰か?令和6年の改悔批判で現代版「領解文」を取り上げたが、それを決めたのは誰かについて質問します。さらに、ご消息で「拝読・唱和いただき」とあるのは敬語の誤用であり、門主が発布されたことは門主を貶めることになること、執務方針演説での総長の「ご消息を制定いただいた」との発言は、制定の権限のない門主を法規違反者としてしまう発言で看過出来ないものであること。また、現代版「領解文」制定方法検討委員会で「改悔批判では現在の領解文を用いるべき」との強い意見を、委員会メンバーでありながら無視し、現代版「領解文」も取りあげた行為について指摘し、追及します。


従前より「総局は内容に関与していない」と繰り返し説明しています通り、現代版「領「解文」制定方法検討委員会の答申を踏まえ、内事部長を通して、ご門主さまにご依頼し、その後、内事部長より、ご消息の名称を含めたご消息全文の提示があったため、総局としては、そのまま文案について、勧学寮の同意を経て、ご門主さまにご消息発布の申達をしました。
「本山典令」第9条に、本願寺住職の職務として、「改悔批判の与奪」が規定されています。従って、かかる事務は本願寺において行われ、まず担当部・式務部が与奪者について申達し、本願寺住職によるそのご認証後、あらためて式務部が「改悔批判」の内容について申達してご認証を得るという手続きになります。「改悔批判」の内容は、新しい「領解文」の解説唱和を含んだものであり、本願寺住職のご認証を得て、「改悔批判」が行われました。
執務方針演説に関する指摘につきましては「ご消息を発布いただいた」に訂正します。新しい「領解文」については混乱が生じておりますが、覚悟をもってその解決に向け取り組んでまいります。

梨本興正議員(国府・顕心会)

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)

新しい「領解文」の発布から宗門が混乱しているのは明白です。▷門主制度解体の目論見▷宗会無用論(常務委員会があれば事足りる)▽仏教学と真宗学の論争を背景に、門主無答責を隠れ蓑に進めたのが、この度の混乱の原因だと確信しています。まずは立ち止まり、分りやすい、みなが共に慶べるご消息を申達によってご門主さまに発布していただくのが、解決の道だと確信します。


「門主制度解体」や「宗会無用論」のような認識はもっておりません。ご消息を再度発布すべきとのことですが、総局の見解としては、ご消息の内容の変更は考えおりません。総局は、法規の定めるところに従い、勧学寮の同意を得て、ご門主さまよりご消息を発布賜りました。法規に定められる手続きを経て発布賜ったご消息は取り下げや撤回はできないと認識しています。

那須野淨英議員(滋賀・顕心会)

新しい「領解文」による混乱は三業惑乱に匹敵するもので、教団に影響する法論は、総局の明確なる判断を求めます

新しい「領解文」への勧学・司教有志の会が提出した声明文は、総局や教団の護持運営に携わっている私たちに混乱と不信に陥らないように、また安心上の混乱が大きくならないようにと提出されたものです。会の代表、深川勧学を申告した経緯を教えてください。また新しい「領解文」は起行論、安心門のどちらで述べられているのですか。ご門主さまのご消息の内容や文案には石上前総長は「一切関係していない」とのことでした。令和5年1月16日のご消息発布式後に出されたご消息の全文が掲載された「本願寺新報」の号外を受け取りましたが、誰に責任がありますか。令和6年度の宗務の基本方針から新しい「領解文」の唱和の推進が外されました。唱和は現場に一任では丸投げな気がします。


申告は処分又は審決が確定してませんのでお答えしかねます。新しい「領解文」のご消息全文が掲載された「本願寺新報」号外は、申達立案でご認証を得、号外の準備に入ります。特に機密性が高いことから、統合企画室長が指名する複数人の職員で、号外の一言一句に間違いがないかの確認を行いますので、号外の「文責」は統合企画室長です。
また安心門と起行門については、新しい「領解文」の第一段の「救いとられる自然の浄土」までが安心門で、「仏恩報謝のお念仏」は起行門です。ここまでは、第十八願における「信心」と「称名」それぞれの意義を分配されています。第二段の「師徳」の讃嘆と、第三段の「決意表明」は、起行門にあたります。この第三段の起行門安心門と受け取るため、「むさぼりいかりに流されず」などの私たちの起行の在り様を、規則の枠にはめてしまう誤解となっていると考えています。

清岡大地議員(大阪・顕心会)

新しい「領解文」に関連して
①教区学習会に関連して
②ご消息発布に関連して
③「改悔批判」や「得度式」での依用について


①公聴会は欠席者にも説明動画を配信し意見を求めましたが、新しい「領解文」の学習会は普及の場であるのに録音・撮影を禁じたのはなぜですか。世相に鑑み、宗会も含め公開すべきですし、欠席者からも広く意見を取り入れるべきと考えます。また、ご消息の発布、学習会開催、唱和推進の順が妥当と考えますが、学習会が後手になったのはなぜですか。令和5年8月30日から始まった学習会の日程を考えても、慶讃法要最終日にご発布を賜ればよかったのではないですか。

②宗会や学習会でも新しい「領解文」の内容には触れられないと回答されてますが、ご消息の全文を発布当日に「本願寺新報」の号外で配布されたことからも、内容の事前確認や勧学寮への質問はできたはずです。現代版「領解文」制定方法検討委員会は「宗法第11条に規定される消息をもって制定いただくのが最も相応しい」と答申し、御正忌報恩講の改悔批判では満井勧学が「ご制定いただいた新しい『領解文』の内容にもふれてみましょう」としてお伝えになりました。広辞苑に「制定」は(1)おきてや規則として決めること(2)法律を公の立法機関で一定の手続きにしたがって定めること、とあります。新しい「領解文」は法律でしょうか。また、ご門主さまに「制定」する権限はあるのでしょうか。学習会で「ご門主が発布されたものだから」と「発布=制定」の図式で説明されたのも混乱の一因と考えます。

③勧学寮が「内容に誤解を生じる恐れがある」とされた新しい「領解文」を、改悔批判で依用されたのはなぜですか。また2月の本願寺評議会での評議員の得度式で新しい「領解文」の依用をやめるようにとの要望に対し、内局は「宗派から依頼があった」との説明があったと聞きます。しかし、学習会で総局は「得度式は本願寺の執務行為であり、宗派は関われない。依用に至った理由はわかりかねる。」と答えたと聞きます。責任のなすりつけ合いでは、受式者があまりにも気の毒です。真相をお聞かせください。そして令和6年度の宗務の基本方針で、新しい「領解文」の唱和を推進されないのならば、得度式での依用、宗派出版物等へ掲載も取りやめてください。


①学習会の録音は禁止していませんが参加者の録画はご遠慮いただきました。理由は昨今のSNSでの情報拡散の容易さです。新しい「領解文」の発布以降、特に学習会の開催を調整していた慶讃法要期間中や法要後、SNSで時には個人の名誉にも関わるような記述も確認しました。参加者が安心して学習会に臨める環境を担保するためです。学びを深めていただくために、直接、参加者と出向者が向き合うことが最善と考え、学習会は各教区単独開催し、直接現地に赴き、オンラインも使用しました。聴会は複数教区が同時刻に、宗務所と現地をオンラインでつないで開催しました。学習会が後手でないかとのご指摘ですが、ご消息やご親教を賜れば重く受け止め、そのお心を体して速やかに宗務に反映すべきと考えます。従って、慶讃法要での唱和や各現場での唱和の含め、推進した次第です。

②ご消息は、内事部より回移の文案を宗法第11条に基づき、総局があらかじめ勧学寮の同意を得てご門主さまに申達し発布賜るものです。総局は、内事部から回移された時点でご消息文案を知り、内容は教義に関わることであり、総局は判断や質問ができる立場にありません。また、ご消息は法規にはあたりませんので、発布をもって制定されたとは言いません。あくまで、ご消息は、ご門主さまが、教義の弘通のため、又特定の事項について意思を宣述するため、発布されるものであります。

③改悔批判では、従来の「領解文」出言後、誤解してはならない部分の注意を喚起してから新しい「領解文」唱和の次第を採りました。従来の「領解文」も許諾である「後生たすけたまへ」が請求の義に誤解された歴史的事実もあり、今回の改悔批判でも触れています。誤解のおそれがあるから読まないのでは、従来の「領解文」の表す「先手のよび声への許諾」という深意を見失ってしまうでしょう。自身の違和感のみを信じるよりも、深意を汲み取ろうとする姿勢が重要と思います。得度式の本願寺評議会の質疑について、先般の宗門総合振興計画推進会議で、本願寺の内務室長が説明した通り「新しい『領解文』の得度式での依用は総局から指示された」事実は一切ありません。得度式での依用を中止するかは本願寺の判断です。また出版物への新しい「領解文」の掲載中止は、総長の執務方針での今後の取り扱いに基づき判断していきます。

森眞仁議員(大分・一信会)

①ご消息発布にかかる法規について
②得度式における新しい「領解文」の唱和について

 
①令和5年5月と9月に示された、新しい「領解文」に関する総局見解1・2では「ご消息発布にかかる経緯」として、令和4年12月1日、改めて勧学寮部長より統合企画室長に対し、勧学寮全員がご消息文案通りに同意するとの報告を受け、その旨、統合企画室長より内事部長に報告。その後、内事部長から統合企画室長へご消息文案が回移され、所務部<法制担当〉が、宗法第11条第2項に基づき、勧学寮の同意を得るため立案を起案。立案決裁を経て、総長名で勧学寮頭宛、同意要請にかかる公文書を回移。夕刻に、寮頭名にて総長宛、同意要請のあったご消息文案について同意する旨の公文書が回移され、これを受理。同年12月20日、勧学寮からご消息文案の同意を得たことにより、ご消息発布の申達立案を起案。同日付、御認証を得る、と示されています。宗法第11条の要旨は「門主は、総局の申達に基づいて、教義の弘通や特定事項に関する意向を公表するために、消息を発布することができるが、そのためには事前に勧学寮の同意が必要だ」ということで、ご消息発布の主体はあくまでもご門主さまです。つまり、「総局が、勧学寮頭に対し同意要請し、寮頭が同意する旨の公文書を総長に回移する」という手続きは不要です。ご門主さまが出されたご消息文案にあらかじめ勧学寮の同意があれば、総局が申達しご消息を発布賜り、その全ての責任は申達した総局が負う、というのが「宗法」に示された本来の法解釈ではないですか。総局と勧学寮部長の見解を伺います。

②令和5年6月の得度式から、新しい「領解文」を唱和するよう式次第が変更されました。私は企画諮問会議や宗門総合振興計画推進会議などで再三、得度式での新しい「領解文」の依用は慎重な検討を要望しましたが、その都度、「得度式は本願寺で決めること、本願寺内局の担当」と説明を受けました。しかし、本山・宗門協力体制総合調整会議は、「宗門又は本山における法要儀式並びに行事並びにその協力体制の調整に関すること」を協議するとされており、その得度式の式次第の変更内容を総局は十分に調整できる立場にあったはずですがこれまで一度も協議されていないのですか。また今後、協議する意向はありますか。


①宗法第9条第1項「門主は、宗務機関の申達によって宗務を行う」の原則の通り、ご消息の発布は、「総局の申達によって」行われますが、総局はご消息文案について内事部から正式に回移されてはじめてその内容を知るのであり、ご消息の内容は教義に関わるものであるため、総局は判断できる立場になく、その内容について勧学寮のお墨付きが必要とのことから、「消息の発布は、あらかじめ勧学寮の同意を経なければならない」と規定され、勧学寮の同意を得て、手続きは総局がご消息発布の申達を行います。

②新しい「領解文」の各教区での学習会でも、得度式での依用を見直すよう、多くの意見を賜っています。その際、総局からは、「本願寺内局にお伝えします」と返答してきました。そのご意見・ご要望については、その都度、本願寺内局にお伝えしています。総局の見解としては、従前から申しあげている通り、得度式の内容については、本願寺内局が決定されるとの立場に変わりはありません。本願寺内局とも同様の認識を共有しています。

下川弘暎議員(福岡・顕心会)

①新しい「領解文」発布に関わる疑問点のいくつかを指摘し、普及中断を求めます
②宗法改正されて2年になります。改正された現宗法の問題点のいくつかを示し、宗法修正の意図が、有りか否か御尋ねいたします

問 
①現代版「領解文」の制定は、宗門長期振興計画で計画され、『拝読・浄土真宗のみ教え」の「浄土真宗の救いのよろこび」の刊行で終了しているが、再度計画された理由と、平成30年6月に総局に「拝読・浄土真宗のみ教え」改訂編集委員会が設置され、大変に好評だった「浄土真宗の救いのよろこび」を削除した理由は何か。

②令和4年3月25日、第46回常務委員会で議決された「現代版『領解文』制定方法検討委員会設置規程」により8月に委員会設置、11月に答申が出され、12月5日に総局会議でご門主さまに現代版「領解文」制定のご依頼を決定し、同日中に内事部長に伝達、同月12日には内事部長よりご消息文案の提示があっている。宗意安心に関わる重大事項を何故ここまで急いだのか、ご消息文案作成の手続きをおたずねする。新しい「領解文」の総局見解で、令和4年12月15日に統合企画室長との面談で寮頭が示された見解を、翌日統合企画室長はご門主に報告、同日夕刻に勧学寮部長より統合企画室長に寮員会議が開催さご消息文案を原案通り同意すると報告がなされている。統合企画室長は、勧学寮がご消息文案に同意する前のことをご門主に報告し、寮頭以外の勧学は、勧学寮部長から寮頭と統合企画室長の面談の結果を聞いて、事後承認でご消息文案に同意したのではないか。

③寮頭はご消息文案の3点の指摘事項を直接ご門主に伝えることを怠り、独断で見解を示した責任は重大です。また、統合企画室長が、寮員会議で同意を得る前に寮頭の見解をご門主に報告したことも問題です。この勧学寮のご消息文案への同意に疑念がある以上、新しい「領解文」の普及は中断し、手続きの調査をすべきです。
石上総長が勧学寮に勧学・司教有志の会の指導をお願いし(『宗報』令和5年6月号)、淺田勧学寮頭は勧学・司教有志の会の主張は「教義に違する」とは言えず、指導する職責は寮頭にはない〈『宗報』(令和5年10月号)と回答したということは、新しい「領解文」が教学上に疑義があると指摘されたことになる。普及を中断し、経緯を調査すべきである。

④現「宗法」移行後1年が経過し、明らかになってきた問題として、1点目に宗派と本願寺が区分された目的が達成されているかを点検すべきである。2点目は、宗会に決算審査権がなく議決した予算がどう執行されたか点検できないこと。3点目は、常務委員会が単なる議案の承認機関となっている。議決機関は宗会に一本化すべきである。4点目は、「宗法」の改正には出席した宗会議員の4分の3以上の賛成が必要とされていることである。この条文には、我々の決めたことは簡単には変えてはならないという傲慢性が垣間見える。問題が起これば臨機応変に対応することこそ重要であり、この条文を先ず変更すべきである。総長は現行の「宗法」を点検し、問題点を改正する意思はあるか。


①宗門総合振興計画大綱策定委員会に設置された作業部会(第2回平成27年3月)で、「現代版『領解文』の制定と拝読」が提案され、継続検討され具体策も含めた大綱案を同年4月の策定委員会で審議、企画諮問会議で意見を伺いました。その後、作業部会でこの具体策の名称を「現代版『領解文」を制定し、拝読する」として、再度、策定委員会で審議いただき、最終答申が提出されました。あらためて企画諮問会議に報告し、宗会全員協議会で協議後、同年5月の第309回臨時宗会で「『宗門総合振興計画』推進にかかる基本方針案」を議決、常務委員会を経て、同年6月から基本方針が始動しました。ご親教「念仏者の生き方」は「拝読・浄土真宗のみ教え』にも掲載する必要があるとして、設置されました改訂編集委員会が平成30年9月30日付で報告書を提出し、「『浄土真宗の救いのよろこび』の題名と内容については、加筆・訂正を行わない方向で検討すべきとした」としたうえで、最後に「今後は、総局において文言もふくめて、検討、決定して下さいますよう一任します」としています。この報告書提出直後、1月の秋の法要におけるご親教で「念仏者の生き方」の肝要をまとめた「私たちのちかい」が示されました。そのため、総局として総合的かつ慎重に検討の結果、全体構成を「親鸞聖人のことば」「ご門主のことば」「折々のことば」の三部とする具体的方針を決め、「典拠が明確であること」を原則とするうえから「浄土真宗の救いのよろこび」の掲載を取りやめ、令和元年に改訂版を発行しました。

②現代版「領解文」制定方法検討委員会の答申を踏まえ、内事部長を通じご門主さまにご依頼させていただき、内事部長より提示されたご消息名も含めた全文案そのままについて勧学寮の同意を経て、ご消息発布の申達をしたものであり、拙速とは認識していません。統合企画室長が担う宗務全般の統合調整の一つに従前よりご消息発布の事前調整として、法定の手続き前に内事より提示の文案を勧学寮に公文書等によらず内々に伝達する役割があり、「室長は勧学寮で同意される前のことをご門主に伝えた」との指摘はその通りですが、必然的なご門主さまへのご報告です。「寮頭以外の勧学は、勧学寮部長より、寮頭と総合企画室長の面談結果を聞き、事後承認でご消息文案に)同意したのではないか」との質問は、勧学寮内のことでわかりかねますが、いずれにしても令和4年12月1日に、あらためて勧学察部長から、勧学寮全員がご消息文案通りに同意する、との報告を受け、統合企画室長から内事部長にそのことを報告しました。

③ご消息発布の申達の手続きに瑕疵はありません。令和5年12月15日付の淺田勧学寮頭の総長宛文書には「現寮員の原点は、『2022年12月1日付の同意書」にあることは相違ない」と明確に示されており、この見解を尊重してまいりたいと思います。従って、調査を行うことは考えていません。

④「宗法」改正で、宗会議員各会派代表や有識者などを委員とする総局の諮問機関・企画諮問会議と、宗派の議決機関・常務委員会という新たな制度が導入されました。これによって、情報の収集、分析、判断、検証がより客観的かつ的確に行われ、常務委員会で迅速に必要な意思決定が可能になりました。宗会制度だけでは、スピード感をもった新型コロナ感染症対策の諸決定は出来なかったと認識しています。基本法規改正の原点、初心、理念を踏まえ、現行制度を基本としており、宗派と本願寺の関係性、宗会、常務委員会の制度設計や基本法規改正における特別多数議決の見直しは考えていません。

羽隆慈議員(山口・顕心会)

①このたびの宗門史上類をみない混乱と不信感にどう対処するか
②常務委員会と宗会の関係

問 
①新しい「領解文」の学習会は、総局が意図した疑念の解消にはほど遠い現状です。総局や一部宗会議員はご門主さまをお守りするといいますが、新しい「領解文」を巡る混乱は宗門を二分し、全国的に伝道推進の意欲が失われています。そのうえ、新しい「領解文」に反対している勧学・司教有志の会の代表である深川勧学らを監正局に申告するという暴挙は混乱にますます拍車をかけています。このような事態を一体どうするのですか。

②常務委員会の委員15人のうち6人は宗会で選出されますが、同委員会は、今年度の宗務の基本方針の一部変更を求める宗会議員大半の申し入れにも耳を貸さず、宗会とは機関が違うという高圧的な態度で無視してきました。宗会の要求を聞こうとしない常務委員会の法規の解釈についお伺します。


①執務方針での「宗門内の状況に鑑み、来年度の宗務の基本方針に唱和の推進を掲げることは、更に宗門内の混乱を長引かせると判断し」の通り見直しを行いました。また、新しい「領解文」について、令和6年3月1日付勧学寮発公文書では教義として「約仏的」に、勧学・司教有志の会は「約生的」に「お領解」として解釈する義の違いからの異なりと受け止めておられます。いずれにしても現寮員の原点は「令和4年12月1日付の同意書」にあることは相違ないことが、令和6年2月27日に全寮員出席の寮員会議で再確認されています。総局は、新しい「領解文」の唱和の推進の見直しをもって、混乱を収束へと導きたいと考えていますが、併せて、真摯に宗務を執行することで、信用いただけるよう努めるとともに、混乱と不信感について勧学寮と協働し対処してまいりたく存じます。

②常務委員会は総局員4人、宗会の正副議長及び宗会で選出された宗会議員6人、そして総長が推薦して宗会の承認を得た有識者3人の合計15人の委員で構成され、宗会議員の委員は過半数の8人です。有識者の委員3人も宗会の承認が必要で、これによって宗会と常務委員会の関係は抑制、均衡が保たれる制度となっています。


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