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聴き手の達人

日々、対話の魅力を発信しています。

大切なのは「相手の話を聴くこと」。想像以上に、人は話を聴いていません。聴いているのではなく、聞こえているだけ。“音”として鼓膜に届いているだけで、「受け止める」ができていないことが多いです。相手の話を聞きながら、「次はこの話をしよう」「この質問を投げかけよう」など、気もそぞろになっています。「聴く」は、相手が発する情報を全身で受け止めること。耳だけではありません。目も、鼻も、肌も、あらゆる感覚を相手に向けて、ことばを受け止める。ことばだけではありません。表情、所作、呼吸、沈黙、ノンバーバルの情報すべてに気を巡らせます。片手間に「聴く」はできません。

さらに言えば、「相手の話を聴くこと」より先に、相手が「話したい」と思える状況を整えることが大事です。突然、不躾に核心を突いた質問を投げかけても、相手にこころの準備ができていなければ話すことはできません。そもそも「この人に話しても大丈夫なのか?」と不審を抱かれてしまいます。「この人だったら、受け止めてもらえるかも」「この人であれば、話してみたい」そう思ってもらえるような関係性づくり、空気づくりが重要です。相手に安心感を覚えてもらう。深い対話に至るためには、信頼も必要です。そこには前提となる相手への敬意、それから、話に呼応するための知性が必要になります。

話し手は鐘です。小さく鳴らせば、小さく鳴り、大きく鳴らせば、大きく鳴る。つまり聴き手の度量に合わせて、話の内容が変わってくるのです。ゆえに、聴き手の振る舞いや知性が誘い水となります。「この人に話してみたい」と思ってもらえる空気と話の運び方が、良質の対話をもたらします。

もっと言うと、「相手が話したい」と思える状況を整えるためには、あなたの中に「話を聴く人」を住まわせる必要があります。相手の話を聴くよりも先に、あなたの話をすべて受け止めてくれる「聴き手の達人」を、あなたの中に宿すこと。「聴き手の達人」は、あなたの声をあまねく受け止めてくれます。嫌な顔一つせず、むしろ、興味深く、真剣に、あなたのことばを聴いてくれます。その人に向かって、存分に話してください。そのうちに、達人の聴き方が見えてきます。どのようなことばも、感情も、沈黙も受け止め、話を前に進めてくれる。話を途中で見失ったら、少し前に戻って、別の角度から訊きなおしてくれる。あなたは、安心して話します。思考や感情が整理されてゆきます。見えなかったものに、輪郭が浮き上がってきます。気が付けば、達人のことを信頼しています。

あなたは、達人の振る舞いから「聴く」を学んでいきます。「受け止めてもらえる」歓びを知ることで、「聴く」尊さを知ってゆきます。そして、何より重要なことは、達人との対話を通して、あなたのこころにゆとりが生まれているということです。余裕のない状態の時、人は相手の話を聴くことができません。余裕とは、こころ、思考、時間、距離、経済、あらゆる要素に言い得ることができます。それは相対的なものではなく、あくまでも主観としての余裕。ゆとりを持つことが、良質の「聴く」を導き出すのです。

「聴き手の達人」との対話を通して、あなたは自然と相手の話を聴くことができるようになります。



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