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審美眼を磨く3つの方法

尊敬する人に会った時、必ず質問していることがあります。

それは、「どのように審美眼を養ったのですか?」ということです。この問いを差し出すことは、「わたしはあなたの審美に敬意を抱いています」という意味が含まれます。おおかたは、「良いものを見続ける、体験する」という答えが返ってきます。あるいは、「気にしたことがない。好きなことをやっているだけ」とはぐらかされます。

確かにそれは論理を超えた領域であり、それを習得する方法は一概に「これだ」と断定できるものではありません。それでもぼくが問う理由は、その人の答えが聴きたいからです。ぼくは「ぼくの答え」を自分で発見する。ただ、「あなたの答え」も参考にしたい。

それは、ぼくの人生におけるテーマのある部分に、「美しさ」への探求心があるからだと考えます。美しいものをつくる人は、美しい眼を持っています。正確には、世界を美しく見る眼です。

「審美眼」とは、美しいものを見極める眼識のことです。きれいなもの、価値のあるものを識別することができる力。

究極のところ、確かな審美眼の持ち主であるならば、どのような社会でも生きていくことができると思っています。自分がつくることはなくとも、モノの価値を見極め、世の中に提示していくことができれば、価値を創造できます。「キュレーター」のような存在。それは美術品だけでありません。価値のあるモノを、適切な場所に、適切なタイミングで置くことができれば、経済が生まれます。

それだけでなく、「美しいもの」はこころの豊かさにも密接に関係しています。

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〈Art de Vivre〉

これは、「暮らしの芸術」や「生き方の技法」などと訳されるフランス語です。生活の中に、美しいものを融け込ませていく。そのことによってコンディションを整え、心地良さをしつらえていく。こころの調和を生み出す技法です。

ぼくの大切にしている概念であり、日々の暮らしの中で意識している姿勢です。人生をより深く味わうこと。こころを豊かに育むこと。

「審美眼」は経済的な側面と、精神的な側面に影響を及ぼします。モノの価値について、それから、こころの豊かさについて。

ぼくにとって、それらを思考することは生き方のエチュードです。長い人生の中で磨き上げていきたい。ある意味、主題のようなものかもしれません。

ただ、「絶対的な美」への追及といった大げさなものではありません。もっと生活に根づいたものであり、呼吸するように軽やかなスタンスです。しっくりくるのは、やはり「ライフスタイル」に近い「Art de Vivre(暮らしの芸術)」ということば。

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審美眼を磨く3つの方法

1.触れる

モノを見る眼を磨くためには、やはり美しいものに触れることが大切だと思っています。たくさん見て、たくさん触れて、生活の中に融け込ませること。眼だけではなく、五感で味わう。音や香りが眼に見えないように、ポエティックな佇まいはそこに醸され、漂います。全身で感じてください。

2.知識を仕入れる

本を読むことも役立ちます。古典と呼ばれる書物には、本質的なモノの見方が既に書かれてあることは決して珍しくありません。ただ、それを全て鵜呑みにする必要はありません。「羅針盤」くらいに考えておくとよいでしょう。知識は大切ですが、頼り過ぎると感受性が衰退します。やはり、自身の内側に湧き起こった感情や、体験を通した発見が最もフレキシブルです。

知識は羅針盤であり、自分の体験を通して答え合わせができると良いのではないでしょうか。

3.言語化する

「なぜ美しいのか」「なぜ心地良いのか」を言語化する。

最も大切なことは自分の感知力です。後付けでよいので、論理的に考えてみてください。美しいものの共通項を発見できたり、再現性に気付くことができるかもしれません。言語化は審美眼を磨くエチュードです。

何より、気分が上がります。自分の「好き」を分析することで、納得が生まれ、自分自身を肯定することにつながります。

それらを続けていると、審美眼は磨かれていきます。「美しさ」というものは、きわめて複合的なものです。一面だけでは説明できません。複数のレイヤーによって形づくられています。それを正確に掴みとるためには、感覚と論理の両輪が必要になります。

その蓄積の副産物として、「世界を美しく見る眼」が養われていきます。同じ景色を見ていても、豊かな受け取り方ができるようになってくる。美しさの多くは、既にそこにあり、発見するものです。それを抽出したり、提示したり、光の当て方を変えたり、イメージを形にしたり。異なる発想が結びつけば、新しいクリエーションが生まれます。その機能が働くと、インプットが、アウトプットに転化します。

このエチュードを、ぜひライフスタイルに取り入れてみてください。共に、こころの豊かさを育みませんか?



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