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全景千原007

れもんらいふの新女子力

千原
僕の周りはほとんど女性で。れもんらいふのデザインは女の子が「おもしろい」と思えるようなものを求められることが多いので、仕事場は女の子が活躍する空間になっていると思います。

デザインの仕事って体力勝負みたいなところがあって。頑張って徹夜して期日までに仕上げたり。女性にとっては体力的に厳しい仕事で、デザイナーが男向きな職業になっている現状はそこに理由があるんですね。れもんらいふは「女性たちでそこを乗り切りながら、どのようにして〝おもしろい〟とか〝かわいい〟というところを見つけていくのか」ということが重要だと思っています。

僕、この間、Numéro TOKYOの軍地彩弓さんというエディターの方に〝新女子力〟という言葉をいただいたんですね。「れもんらいふって新女子力でやっているよね」って。女子力という言葉って男目線からすると「女の子の力」という風に思っていたのですが、実はそうではなく。軍地さん曰く、「女子力って結局、お茶をサッと出せるとか、一歩後ろを歩けるとか、結局男のためにある言葉だよね」って。

言葉では「女の子の力」っていう風になっているけど、それは〝男を立てるための言葉〟で、良い響きはあるけれど実は女性を立てる言葉ではなく、ふたを開ければ男社会を立てているんですよね。

新女子力というのは、「女性が自分のアイデンティティで、自分の主張をして、自分の力で何かをやっていこう」ということ。そこに男性はあまり関係なくて、女の子が「自分のフィールドで自分の好きなことをやるんだ」というニュアンスがあって。「あ、うちはそういうことを目指せばいいのかな」って、嬉しい気持ちになりました。そういう風にやっていけたらねって。

れもんらいふは、みんなが「かわいい」とか「この女優さんいいよね」とか、そういう会話から仕事がはじまったりするので、そのノリが生まれて、みんなが盛り上がってデザインが形成されていくんですね。男性より女性の方が活躍できる職場かもしれませんね。

男社会を変えるには構造から

千原
戦後社会自体が何も考えず〝男性が働く〟というモノの作り方をしてきたので、「社会自体が男のもの」という感じがずっと続いてきましたよね。今の世の中は「そうじゃないよ」と言っているけど、システムを何十年もかけて作ってきた分、まだそこから抜けきれないんですよ。グラフィックデザインだってアメリカだと一つの仕事に対して依頼が来るのが半年前とかなんですね。

だから、余裕を持ってゆっくりと準備をはじめることができる───つまりみんなが幸せな状態でクリエイティブに向き合えるんですね。お金もちゃんと「半年分出します」という形で業界が動いているのですが、日本はまだそうじゃない。戦争に負けたっていうのが大きくて「誰よりも働いて豊かにしよう」という姿勢できたので、その状態が続いているんだと思うんです。

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当たり前のように期日の一ヵ月前とかに「この広告作ってください」という依頼がきて、そうなると来週にはアイディア出しで、再来週には撮影で、その翌週にはデザインを仕上げなきゃいけない。結果的にデザイナーたちは徹夜せざるを得ないんですよ。そうなると「そもそも男しかできないよね」って。構造自体がそうなっているからなかなか抜け出せない。

れもんらいふは「それをどう一週間期限を延ばしてもらうか」とか「そういう仕事は断っていこう」とか、あるいは「女の子の価値観としてもっとおもしろく仕上げていこう」など。そいうことを常に考えながらやっています。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。