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炎上しないために、今できること

SNSを利用していると、「炎上」という現象をよく目にします。

ぼく自体はこれまでに「炎上」に対して、何か言及してきたことはありません。騒ぎが収まっていく光景を静かに見つめてきました。「関心がない」ということではなく、また、自分の中に考えがないというわけではありません。関心もあれば、考えもある。ただ、何かを発言する際には、できる限り慎重であろうと努めます。そこで燃え上がっている炎は、たまたま自分ではなかっただけなのだから。

一部を除く、ほぼ全ての「炎上」は故意に起きたことではありません。むしろ、「人を楽しませよう」とか「共感してもらえるんじゃないか」など、ポジティブな想いから生まれたものが多いように思います。次々と想定外の反応が起きて、収拾がつかなくなっていく。発信した側からすると「そんなつもりじゃなかったのに…」というケースがほとんどではないでしょうか。

価値観の違い、想像力と配慮の欠如、短絡的な表現。原因はいろいろあります。批判を受けても仕方がないのかもしれません。ただ、「誰かを楽しませようとした」という気持ちに嘘はないのだと思うのです。その無邪気さが周囲に恐怖を与えていることも事実です。知識(あるいは品性)がなかったことを決して褒めようとは思いませんが、それが「誰かを楽しませよう」という動機で起きたことである限り、その「炎上」は他人事とは思えないのです。

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今こそ、対話のある表現を

常に「自分は社会の一部だ」と認識していた方がいいように思います。自分の中に社会がある、ということではなく、社会の中に自分がいる。向こう三軒両隣というわけではありませんが、自分のことばは確かに社会とつながっている。それは、自分の知っている「社会」ではなく、自分が知らない「社会」をも含めた、総合的な「社会」です。「小学校」と一口に言っても、自分が通っていた小学校がすべてではないことと同じです。

何かを発信する時に考えることは、この総合的な「社会」のことです。影響力がある人ならば、尚のこと考えなければいけません。今まさに自分が発信しようとしていることばが、社会ではどのように受け止められるであろうか。その想像力を働かせるためには、社会の声に耳を傾けなければいけません。

「対話」は相手を受け入れるところからはじまります。たとえば、人がふたりいて、互いが自分の考えだけを相手に伝えようとすると、対話は成立しません。一見、ふたりは話をしているように見えますが、そこにはひとりごとが二つあるだけです。「対話」は、相手のことば(考え)を受け入れるところからはじまります。

それは、「相手のことばをすべて肯定すること」という意味ではありません。共感できない内容であったとしても、まずは受け入れる。「共感できない考えがある」ということを受け入れることから、建設的な対話へとつながっていきます。

難しいことを言っているように感じるかもしれませんが、シンプルに言うと、相手の考え(気持ち)を想像することと同じです。それが「社会」という大きな枠に移っただけのこと。社会の声に耳を傾けてみる。賛同できることもあれば、できないことももちろんある。でも、その「声」を知っていると、次にこちらから語りかけることばは変わってくるはずです。

相手(社会)の考えを尊重した上で選ぶことばは、同じ内容であったとしても表現は異なります。価値観や意見が違ったとしても、相手を深く傷つけるような表現にはならないはずです。

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「炎上」のほとんどは、「伝え方」にあるのではないでしょうか。つまり、表現方法。価値観や意見は違ってもいいんです。むしろ、「違う」という点に人間のおもしろさがある。だからこそ、使うことばや表現には慎重になった方がいい。相手の考えや感情を受け入れるところからはじめていたとしたら、響き方は違ったはずです。

「とはいえ、少々刺激的な表現の方が広まりやすいんです」と言う人がいるかもしれません。でもね、もうその方法はあまり流行らないような気がするんです。あっという間に消費されて、おしまい。本当に心を打つことばや、相手のためになる物であれば、速度は遅いかもしれないけれど確実に広まっていく。インターネットがそれを可能にさせたのだから。

刺激とか、速さとか、そういうことではなく、相手を尊重した上で紡ぐ確かなことば。自分の信念や思想の伝え方。そういうことが大切だと思うんです。進歩には好奇心は大事だけれど、品性もまた同じくらい大事だとぼくは思っています。

方法は間違っていたかもしれない。でも、「誰かを楽しませよう」とした気持ちは尊いものです。それを奪うよりも、社会の声に耳を傾け、表現に工夫を入れた方がいい。

今こそ、対話のある表現を。




「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。