独りで映画を観る

 忙しい忙しいと言い訳をしてさぼっていたことを深くお詫びいたします。忙しいとは気持ちの持ちようであり、忙しくなかったのかもしれない。
 
 祖父が長い旅に出た。それは長い長い旅で、私が会うには少し時間がかかる。祖父にあげようと思っていたパナマハットはあげられず仕舞いで、こんなにも暑い六月には最適だと思っていたのにな、という感想が一つ。暑いので私が被ろう。
 祖父が置いていったケータイの振込用紙を見ると、50000の文字があった。後に調べると間違いではなく、一人の方に頻繁に連絡をしていた証拠であった。
 元来、祖父は衣装持ちであり、その数々を見てみると色あせていない鰐の柄が入ったポロシャツが多数あった。これもいただいたものなのかなと思いながら、整理していた。
 別れの際に「おばあちゃんと会うんだよ」と親戚の方に言われていたが、私には祖父の顔が少し曇ったように見えた。そんなものはこっちで勝手に決めさせてくれ。ストーリーを作らないでくれ、と。確かに私は数か月前の文に少し美化してしまった部分がある。その人にとっては思ってもみない物語になっていたのかもしれない。
 
 胸元には見たこと無いお札だらけで、それが腹立たしかったので、どけてタバコを置いた。するとニヤリとした気がした。これも私の感覚でしかないが、笑ってくれてよかった。

 今までこのエッセイにはたくさんの登場人物がいたが、その方々には申し訳ない。私目線の価値観でしかない。価値観の押し付けで、私には素晴らしく美しい日々であったと思っているものであったとしても、その人には思い出したくないことなのかもしれない。
 
 しかし事実だけでは面白くないし、カッコがつかんでしょう。これからも思い出として使わせてください。私は忘れたくありません。

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