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Spotifyで聴ける土岐英史スタジオワーク名演10選(プレイリスト付)

Introduction

アルトサックス奏者、土岐英史は自身のリーダーとしての活躍は言うに及ばず、山岸潤史達と結成した「チキンシャック」や日野皓正松岡直也との共演でジャズシーンに確固たる地位を築いています。近年もトランペッターの市原ひかりやピアニストの片倉真由子らと意欲的にアルバム製作、ライブ活動を行っており、幅広い年齢層から支持を受けています。
70年代からシーンの一線で活躍している土岐はジャズの世界のみならず、ポップス、ロックシーンでも屈指のスタジオミュージシャンとしてヒットチャートを賑わす楽曲から、知る人ぞ知る名曲で客演してきました。
豊富なレコーディングキャリアから、「Spotfiy」で聴ける楽曲を10曲厳選して紹介します(※最後にその楽曲を含むプレイリストあり)。土岐の演奏を通して、それぞれの楽曲、またシンガーの魅力も楽しんでもらえたら幸いです。  

1.大橋純子「たそがれマイ・ラブ」(1978年)
作詞:阿久悠 作曲:筒美京平

大橋純子の代表曲の1つにも土岐は貢献。本作の作詞は阿久悠、作曲は筒美京平という黄金タッグによって生み出された名曲です。大橋の伸びやかで力強い唄声を受け、土岐も情感溢れるアルトサックスの音色でよく歌っています。ちなみに大橋はこの曲のヒットで初めてTBSの「ザ・ベストテン」に出演を果たします。

2.竹内まりや「かえらぬ面影」(1979年)
作詞作曲:大貫妙子

竹内まりやのアルバムやライブへの参加はキャリア初期から多く、竹内の2ndアルバム「University Street」でもこの曲と“Blue Horizon”で印象的なアルトサックスのソロを聴かせます。竹内及び山下達郎とのコラボレーションは土岐の音楽キャリアを語る上で外せないトピックである事は周知の事実。本曲でも相性抜群、後々まで続く強固な関係も納得です。

3.寺尾聰「二季物語」(1981年)
作詞作曲:寺尾聰

現在も俳優として渋い演技で存在感を放つ寺尾の大ヒット曲“ルビーの指環”(作詞は松本隆)を含む大ヒットアルバム「 Reflections」。収録曲はどれもハイクオリティ、捨て曲無し。作曲は全て寺尾で、その豊かな才能に舌を巻くばかりです。土岐は上記楽曲のエンディングで曲の世界観を保ちながら、見事な余韻を残すソロを披露しています。  

4.濱田金吾「グッド・ラック・シティ・ロマンス」(1983年)
作詞:Kann Chinfa/Kingo Hamada  作曲:Kingo Hamada/Yasu Chinka

クラフトというフォークグループで74年にデビュー、その後ソロ活動に移り、良質なAOR作品を残すだけでなく、楽曲提供も多数行う濱田金吾。この曲は夜の都会を想起させる歌詞とタイトなサウンドが光ります。アーバンな世界観は土岐の十八番。まるで眼前に夜景が広がるようなソロが気持ち良いです。  

5.中森明菜「恋人のいる時間」(1985年)
作詞:Show 作曲:神保彰

昭和を代表する歌姫、中森明菜。1985年発売のアルバム「BITTER AND SWEET」は当時カシオペアで活躍中のドラマー、神保彰が携わっていました(もちろんドラム演奏も)。「BITTER〜」は中森の代表曲、「飾りじゃないのよ涙は」(作詞作曲:井上陽水)が収録され、他にも角松敏生飛鳥涼松岡直也が作曲に携わり、演奏陣も日本音楽界の名手が揃っています。大物達を従えて、弱冠20歳であった中森の成熟した艶っぽい歌唱は鳥肌物。紹介する“恋人のいる時間“での土岐は随所に効果的にサックスを絡めています。  

6.五輪真弓「ミッドナイトレーサー」(1987年)
作詞作曲:五輪真弓

なんと言っても、“恋人よ“のインパクトは絶大でありますが、確かな歌唱力でどんなタイプの楽曲でも五輪のカラーに彩りながらしっかり表現できる、やはり実力者だと思います。このナンバーはベースが効いたグルーヴィーなナンバーで中盤にブレイクが入ってからスタートする土岐の力強く爽快なサックスソロは短いながらもしっかりとインパクトを残しています。

7.南野陽子「8月の風」(1991年)
作詞作曲:南野陽子

南野陽子の現時点でのラストオリジナルアルバム「夏のおバカさん」。90年代にヒット作を連発したレコード会社ビーイングの長戸大幸プロデュース。アルバム表題曲の作詞は秋元康ですが、それ以外の楽曲は作詞作曲共に南野によるもの。この曲、土岐の切ないサックスが中盤ソロで炸裂、エンディングでもいわゆる“土岐節”を堪能できるのでファンの方には是非聴いてほしい1曲。

8.山本達彦「愛はただそれだけで」(1992年)
作詞:吉元由美 作曲:山本達彦

シンガーソングライターの山本達彦の作品にも土岐は度々参加しています。シティポップ文脈で語られる山本のサウンドはジャズフィーリングも程良く香り、土岐と相性ピッタリ。この楽曲では、イントロから土岐の都会的な甘くもキリリとした表情をしたサックスが魅せてくれます。本作発売の時期は先述した「チキンシャック」での活動はもちろん、ジャズスタンダード集「In A Sentimental Mood」をリリースするなど、益々その音色に磨きがかかっていた頃だけに充実ぶりが容易に窺えます。筆者としては山本の1983年作“今夜はドラマティック”での演奏もオススメです。  

9.広瀬香美「Still」(1993年)
作詞作曲:広瀬香美

「冬の女王」としてお馴染みの広瀬ですが、上記曲収録のアルバム「Good Luck!」は3月発売。本格ブレイク前の作品です。同年12月発売の「Success Story」には“ロマンスの神様“が収録され、タイトル通りの快進撃が始まります。1年で2枚のフルアルバム発売という当時のハイペースなリリースには驚かされると共に90年代CD絶頂期の栄華に想いを馳せます。本曲では壮美なストリングスから広瀬のパワフルな歌唱が徐々に盛り上がっていきますが、土岐も熱いアルトサックスで盛り上げに貢献しています。

10.工藤静香「僕よりいい人と・・・」(1994年)
作詞:愛絵理 作曲:都志見隆

2人の娘も芸能界デビューを果たし、自身は画家としての活動もしている工藤は80年代後半〜90年代多くのヒット曲を放ってきたが、歌手としての活動は今の10〜20代にはあまりピンとこないかもしれませんね。木村拓哉の奥様という認知の方が多いでしょう。筆者はシャ乱Qはたけのペンによる「Blue Velvet」(アニメ、ドラゴンボールGTの第3期エンディングテーマ)が印象深いですね。話をこの曲に戻します。工藤の特徴的な歌声がフックとなり、土岐のキレのある情緒豊かなサックスも早速登場。もちろんソロでもキラリと光りますが、一聴すれば土岐の音色だとわかるアイデンティティを感じます。  

Studio Works Play List

上記楽曲を含むプレイリスト(89曲)を下記公開します。10曲に選んでいない楽曲も魅力的なラインナップですので、それぞれお好みの楽曲を見つけて、土岐氏のサックスを堪能していただけたらと思います。全部聴くと6時間以上あります(笑)。

終わりに

土岐氏のポップスフィールドでの活動を振り返る事によって、日本の70年代から現在に至るまでの音楽シーンの返還を体感できると共に、彼の唯一無二のサウンドがいかに日本の音楽シーンに貢献してきたかを私自身も改めて知る事ができました。また今回はSpotifyで聴ける曲に限定したので、山下達郎および90年代以降の竹内まりや楽曲への紹介、言及ができておりません。そちらはまた機会があれば。

ジャズファンの方はこれを機にポップスシーンの方へ、ポップスファンの方はジャズシーンの方へ興味が湧いてもらえたら嬉しいです。

※参照元※
土岐英史ホームページ




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