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ゼロイチの3大疾患 - こうして新規事業の立ち上げは失敗する

製造業向けに検品AIを提供するアダコテックの河邑(かわむら)です。大企業から飛び出してベンチャー経営に向き合うこと早2年半。とにかく紆余曲折・試行錯誤・七転八倒してきた中で、自分が経験した新規事業立ち上げの3つの罠と、それをどう回避すればよいか?という内容をまとめました。

対象読者
・アーリーステージのベンチャーに携わる方
・新規事業に携わる方

ゼロイチの3大疾患とは?

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疾患①: One Fits Allを目指しすぎ病

事業を立ち上げるときに必ず言われるのは「マーケット選定が全て!」というお話。この言葉を見事に履き違えると「TAMは大きければ大きいほうが良い」という理解のもと、多くの課題を汎用的に解決できるソリューションを目指してしまう症状が発生します。

実は、これ「わかってても、やってしまう」ことが多いと思っています。いざ事業に向き合うと「市場を限定してしまうと、ニッチな課題を解決してしまう小さなプロダクトになってしまうのではないか?」とか、「間口の広いソリューションを作れば、刺さる顧客が出てくるのではないか?」とか考えます。しかし、これらの発想はすべて幻想でした。

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結局は中途半端に作ったサービスは誰にも刺さらないという厳しい現実が待ち受けておりました。ここは、意を決してレーザーフォーカスする勇気を持つことが大切だったと振り返ります。弊社の事業領域も「検品」という色んな業種に跨がる数兆円の巨大なマーケットなのですが、ターゲットを思いっきり絞り、数億円規模のターゲットに絞ったところで、お客様から鮮明なフィードバックを頂けるようになり、一つの大きな前進がありました。

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疾患②: お客様のことをわかったつもり病

続いても重病なのですが、お客様のことをわかったつもりになるのは、陥りやすい罠だと思っています。特に社内に業界出身者が多かったりすると発生しがちです。

症状としては、「担当者のペインは解決できていたが、決裁者のペインが解決できていなかった」とか、「デモのときは”いいね!”と言ってくれていたのに、いざリアルに使おうとすると決定的な機能がなくて”ダメ”と言われた」など。お客様への解像度が不足していると、絶対にサービスは売れないのだと、身をもって感じました。

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これに対して解決の近道はなく、お客様の解像度を上げまくったことが功を奏しました。とにかく「1次情報がすべて!」で、実際にお客様の工場に泊まり込んで検品をやらせて頂いたり、100社以上のお客様と対峙したりする中で、少しずつ解像度が上がっていきました。量が自信に繋がります。

また、社内の議論を「お客様視点」とすることも良い処方箋になりました。社内で議論していると、どうしても利益や開発工数など、会社本位の議論になりがちです。あくまでお客様にとってどうなのか?という視点で、営業も開発も議論ができるようになると、大きくは外さなくなりました。

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疾患③: とりあえず作り始める病

これもけっこう恐ろしいです。なぜなら「作る」ことは、それ自体が満足度が高い甘美なプロセスだからです。一方で、作る前の調査や検証はかなり地道。なので、つい、作ることに逃げてしまいがちです。

私は当時「モノを作らないとフィードバックがもらえない」と考えていたのですが、それも幻想でした。作る前に検証できることは山ほどありました。周囲の優れた起業家は徹底的に検証をやり切ってから、モノを作り始めています。究極としては、モノをつくる前に、サービスの説明資料を作って、値段をつけて、お客様に実際に売ってみる。そして、売れたら作り始める。これくらいのタイミングでもよいと今は思っています。

もう一つ、厄介なこととしては、一度、作り始めると、作ったものをベースに考えるようになってしまうという問題です。本来であれば、「お客様が何を欲しいか?」という視点で常に考えるべきなのに、モノがあると「どういう機能をつければそのモノが売れるか?」という視点で考えるようになってしまい、ますます理想のプロダクトから遠ざかっていく・・・という現象も経験しました。

とにかく作るのをギリギリまで我満するのが大切だと学びました。

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たとえば、もし電車の自動改札機を作るのであれば、まずは手動で何度も何度も切符を切って、色んなパターンを試行錯誤してから、最後に形にする。モノを作りたくなったときは、私は、いつもこのタモリさんの動画を思い出すようにしています。笑

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結局のところ、銀の弾丸はない

今回、触れたような”3大疾患”がなぜ起こってしまうのか?を考えたところ、やはり新規事業がとても大変だからなのではないかと思っています。暗闇の中を突き進まないといけない時間が長いため、どうしても何か大きなブレークスルーを求めてしまう心理が働く。結果として、焦りが生まれ、3大疾患のようなことに、頭ではわかっていても、陥ってしまう。

私もまだまだ事業もサービスもこれから、というステージですが、愚直にお客様に向き合い、何十回も仮説検証をしながら、コツコツとサービスを作り込む・・・をやっていきたいと思いますので、皆様と一緒に頑張っていければと思っています!

最後に宣伝ですが、アダコテックでは世界的に唯一無二のAI技術を活用して、製造業の検品を自動化する画像解析SaaSを、国内外に展開しています。もし少しでもご興味を持って下さる方いましたらお気軽にDM下さい!



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