同性婚についての違憲判決のメモ 判決文の読解に役立つことを願って その1
1 はじめに
2021年3月17日、同性婚について札幌地裁にて違憲判決が出ました。
こちらはCALL4というサービスにより判決が出た、というニュースが出るのとほぼ時を同じくして判決文を読むことが出来ます。
判決文のリンクは以下のとおりです。
ニュースでも取り上げられていますが、せっかくだから判決文を読みたい、という方もたくさんいらっしゃると思います。
しかし、独特の語り口。しれっと出てくる難しい法律論。そしてページ数)47頁。これらは、きっと弁護士でない人には読みにくいのではないかと想像しています。
一方で、この判決文は僕の勝手な見方ですが、多くの人に読まれることを意識しているように思われ、かなりの力作です。
これは多くの人が読みたいし、作者も読まれたがっている。しかし、判決文というものを読み慣れていない人には読みづらい。
ということで、少しでも読みやすくなるよう、メモを作ってみました。
お役に立てれば幸いです。
あくまでメモですので、判決文を読む際の手助けとして見てもらうことを想定しています。
間違えている点や改善点等あれば教えてもらえるとうれしいです。
どんな意見でも大歓迎です。
書いていてあまりに長いので記事を分けることにしました。
2 訴訟の概要(第2の1~3)
・原告(裁判を起こした人)は
男性カップル2組、女性カップル1組
・国に対し、それぞれ100万円の支払を求めている
・違法と主張しているのは
同性の者同士の婚姻を認めていない民法と戸籍法が
憲法13条、14条1項及び24条に違反しているのに、
必要な立法措置をしていないこと
・問題となった条文(本件規定)
婚姻が異性間でなければすることが出来ない旨規定している
民法第739条(婚姻の届出)
婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 (省略)
戸籍法第74条
婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 (省略)
3 争点(第2の4)
⑴ 本件規定は憲法13条、14条、24条に違反するか
⑵ 本件規定を改廃しないことが国家賠償法1条1項の適用上違法か
⑶ 原告らの損害額はいくらか
・憲法の条文は以下のとおり
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 (省略)
3 (省略)
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
・国家賠償法の条文は以下のとおり
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② (省略)
4 性的指向について(第3の1⑴)
・性的指向とは
人が情緒的、感情的、性的な意味で、人に対して魅力を感じること
・異性愛と同性愛
恋愛・性愛の対象が異性に対して向くことが異性愛
恋愛・性愛の対象が同棲に対して向くことが同性愛
・性的指向が決定される原因、同性愛となる原因
解明されていない。
精神医学に関わる大部分の専門家団体は、性的指向は人生の初期か出生前に決定され、選択するものではないとする
心理学の主たる見解も、自己の意思や精神医学的な療法によっても性的指向が変わることはないというもの
・性的指向別の人口
我が国における異性愛以外の性的指向を持つ者の人口は明らかではない。
複数の調査によると、いわゆるLGBTに該当する人は、人口の7.6%、5.9%、8%とするものがあり、異性愛者の割合は9割超
5ー1 歴史的背景について(明治期)(第3の1⑵、⑶)
同性愛=変質狂 OR 先天性の疫病
=絶対に禁止すべきもの
・明治民法における同性婚
同性婚の拒否について議論なし。
同性婚が認められないのは当然で、あえて民法に規定を置くまでもないとの認識。
学問を妻とするとか、書籍を配偶者とするなどの比喩を用いる場合と同様に、婚姻意思を全く欠くものと整理。
・明治民法における婚姻制度
家を中心とする家族主義。戸主権。夫の妻に対する優位が認められていた。
・明治民法における婚姻制度を巡る議論
婚姻の目的が種族の永続にあるという見解があったことから、「子をつくる能力を持たない男女(老年者や生殖不能な者)」は婚姻を許すべきではないのではないか、という議論があった。
5-2 現行民法制定時頃の歴史的背景(第3の1⑷)
・医学、心理学領域における同性愛に関する知見
精神異常者、病理、性的不適応。
異性愛に対する障害を取り去ることが根本的対策
・外国における知見
同性愛=精神病質人格 OR 人格障害
・教育領域における同性愛の扱い
同性愛=倒錯型性非行
5-3 民法改正時(昭和22年)における婚姻(第3の1⑸)
・婚姻制度について旧民法からの変更
戸主権、婚姻について当事者以外の同意を要求、夫の妻に対する優位等が憲法13条、14条、24条に違反するとして変更。
同性婚については議論なし
・民法改正時(昭和22年)に考えられていた婚姻
婚姻=男女の当事者のみができる
夫婦関係=夫婦関係を築く男女の精神的・肉体的結合
婚姻意思=当事者に夫婦たる身分を与え、子どもに子たる身分を取得させようとする意思
・同性婚に対する理解
同性婚は婚姻ではない。
学問を妻とするとか、芸術と結婚するなどと比喩する場合と同列のもの
5-4 昭和48年以降における同性愛に関する知見(第3の1⑹)
・外国における同性愛に関する知見の変化
米国精神医学会、昭和48年、同性愛を精神障害のリストから取り除く決議
米国心理学会、昭和50年、米国精神医学会の決議を支持
世界保健機関、平成4年、ICD-10にて同性愛を疾病分類から削除。同性愛はいかなる意味でも治療の対象とならない旨宣言
・我が国における同性愛に関する知見の変化
昭和56年頃から精神医学的に同性愛は問題にすべきものではないとの認識が広がる
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