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花束をもらったら。

久々に映画を見てきた。『花束みたいな恋をした』を。

※ネタバレあるのでこれから映画を見る方はこの記事を読まないことをおすすめいたします。







花束をもらったときみたいに華やかで楽しい気持ちになる映画で、絹ちゃんと麦くんの会話とサブカルのちりばめ方がとにかくよかったし、序盤は2人の若さと純粋さにニヤニヤして後半は成長と変化にハラハラしてしまったけれど最高だった。なんかもうスクリーン全体がエモくてよかった。

切り花をずっと同じ状態にキープするのは無理な話で、ドライフラワーにして楽しんだり、枯れたら別の花の種を植えたりするように2人の関係性を変えていったり、お互いの変化を受け入れることができなかった物語なのかなと思った。麦くんの「現状維持」という言葉にちょっと残念な気持ちになってしまったのできっと絹ちゃんも同じ心境だったのではないかなぁ。麦くんの気持ちも理解できるけれど・・・。
ずっと2人で駅から家まで歩きながらおいしいコーヒー飲んで、麦くんは絵を描いて、絹ちゃんはいやなことしないで笑っていてほしい。そんな2人をずっと見ていたかったけれど、将来像やお互いの変化を受け入れることができず、あの日あのファミレスで終わるのはすごくいいタイミングで、それを見ているだけの私もほんとうに悲しくて切なくて涙が出てしまった。
といかくこの映画は最高だ。2回目を見に行って2人の会話をかみしめながら見て本棚を観察したい。いや、ブルーレイ発売を待つべきか。
ちなみに昨日のつぶやきは完全に絹ちゃんに影響されています(笑)


あと、この作品を見て世の中は2種類の人間に分けられると思った。押井守の作品を楽しみながら生きる人間と押井守を知らなくても楽しく生きる人間だ。どっちがいいとかわるいとかないけれど、私は前者でよかったなぁと思わせてくれる映画だった。あの状況で押井守を見つけたら私は動揺して挙動不審になるだろう。まじで神だもの。偶然ペンと色紙を持っていてもおそらく声はかけられない。だって押井守は神だから。(私は「神山健治も同席していたらどうしよう?」という妄想までしてしまうヲタクです。(すべて敬称略))

子どもの頃から完全なる陰キャで人見知りで千葉県内で学生時代を完結させた私は(陰キャは変わらずだけど人見知りは克服しつつあると信じている)学生時代に小説を読んだり映画を見ても語り合えるの友人は少数だったし、下北沢のライブハウスに行っても終電が早いのでどこにも寄らずに電車に飛び乗っていたし、本やCDにお金を使っていたので服は古着屋かGAPかユニクロでたまに買う程度だったし、人数合わせの合コン(カップルがほぼ成立している少人数の飲み会というべきか)には1回だけ呼ばれてアメカジで参加するようなタイプだったのでこの映画は見ていてまぶしかったがとても楽しめた。絹ちゃんと麦くんから花を分けてもらったのでドライフラワーにして心の片隅に飾っておきたい。ちなみに劇中に出ていたマーガレットの花言葉は「秘めた愛」だそう。ううう、エモい泣ける・・・。
主人公と同世代の人はどんな気持ちでこの映画を見るのでしょうね。20代の人たちがうらやましいなぁ。


ハタチ過ぎくらいの頃だろうか、田辺聖子の短編小説『ジョゼと虎と魚たち』を偶然手にとった。ちょうど映画が公開されるタイミングだったのでコンビニに文庫本が並んでいて何気なく買ったのだ。祖母と2人暮らしで足が悪く外の世界を知らないクミ子と貧乏大学生の恒夫の物語なのだが、私はこの作品に20代前半で出会うことができてほんとうによかったと思っている。小説を読んでから映画を見ることができたのも幸運だった。

30代後半の今はじめて読んでも好きになる作品だと思うが、20代で読むことで感じられる登場人物の心情やその年代の独特の雰囲気を味わえたことは何にも代えがたいものだ。最近、田辺聖子の短編集をぱらぱらと読み返したのだが、私と同じくらいの年齢だった登場人物が年下になったり、年上だった人が同じくらいの年齢になったりしていて感じ方や感情移入する人物が変わっていておもしろかった。読書はこういう楽しみ方もあるのだ。

本好きの老婆心がむくむくと沸いてきたので少し書かせていただきたい。子どもの頃はとにかく好きな絵本をたくさん読んでほしいし、本が好きな人、読むのが苦ではない人は幅広く古典や現代文学を読んでほしい。個人的には小学生のうちに『ハリー・ポッター』シリーズを読んでほしいし、中学生くらいになったらタイミングを見て『ライ麦畑でつかまえて』、『車輪の下』、『海辺のカフカ』などを読み、10代後半くらいで『ノルウェイの森』、『キッチン』、『ジョゼと虎と魚たち』はぜひ読んでいただきたい。数ページで飽きてしまう人もいるだろうが『孤独な旅人』、『グレート・ギャツビー』もすばらしいのでおすすめ。ご紹介した作品は30代以上で未読の方もぜひ読んでいただきたいものばかりだ。

私の場合は『ハリー・ポッター』の1巻出版が18歳の時だったし、『ライ麦畑でつかまえて』を読んだのが20代だったがなかなかいい読書人生を送ってきたと思っている。海外文学は旧訳と新訳を読んで違いを楽しむこともできるので家にいる時間を持て余している読書好きの方はぜひ。

本を読んで脳内で映像化できるタイプの人はとにかく若いうちに好きなジャンルを読みまくって楽しみながら本を読む集中力と体力を高めてほしい。私は速読に近い状態になった時期があって、薄めの本なら1日3冊くらい読めるようになって次々好きな作品の世界に入り込めておもしろかったなぁ。
年をとると読書する時間を確保するのがむずかしくなったり、集中力も体力もなくなって読む量が減ってしまうのだ。もちろん年齢を重ねてもたくさん読める方もいると思うが、私の身近では読書量が減ってしまった人が多い。読書をよりよいものにするためには映画もたくさん見た方がいいがこの話はキリがないのでもうやめます(笑)

映画や読書は純粋に物語を楽しむためのすばらしい娯楽だが、私にとっては自分ではない誰かの人生や別の世界を疑似体験できたり傍観できて現実を忘れて没頭できる大切な時間でもある。私はいろいろ考えすぎてオーバーヒートしてしまうことがあるので、たまにまったく別の人生や物語の中に身を置くことが必要なのだ。そうすることで自分のことを客観的に見ることができるしクールダウンにもなる。『花束みたいな恋をした』はいい意味で熱を持って先月見てから余韻に浸っていたがこういう感じもいい。
特に今は多くの人が苛立ち、落ち込み、赤の他人から悪意を感じることもある異常な状況なので現実から少し離れる時間が必要な人もいるのではないだろうか。

この記事の見出し画像はコスモスでマーガレットではありません。白いコスモスの花言葉は「優美」だそう。容姿はともかく心は優美でありたいと思う。

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