コンピュータサイエンスでPhDプログラムに留学したい方へのアドバイス
だいぶ音沙汰がなくてすいません... _(. _ .)_
というのも、実は12月ごろから、アメリカでは絶賛就活シーズンでして(Facultyなどのアカデミア就活)、もう忙しいのもあり、ずっと宙ぶらりんの状態が続くのもあり(大体11月ごろから始まって、最終的に決まるのは、4-5月なのです。 長すぎ笑)、博論を書いたりもしないといけないし、ちょっと落ち着くまで一旦休憩しよう、と思い、放置していました。笑
そんなこんなの生活を送っていると、この前こっちに留学してる友達と飲んでいた時に、「コンピュータサイエンスの分野で最近アメリカの大学に留学した人がいるらしいですね」という話を聞き、よく見ると、現在、東大の五十嵐研にいるYuka Takahashiさんがアメリカの大学のコンピュータサイエンスのPhDプログラム(MITが第一志望とのこと)に合格したとのこと。
おめでとう!٩(ˊᗜˋ*)و
最終的に、彼女は、MIT、Stanford、CMU、UW、Harvard、Brown、Princeton、UMDからPhDプログラムへのオファーをもらったとのことです。めでたい!ヾ(o´▽`)ノ
月日はさかのぼって...
実は、彼女とは去年の夏頃にTwitterで少し知り合って、少しだけアドバイスをしていました。というのも「CSの分野で、海外留学をしたいのだけど、誰かアドバイスをしてくれる人がいないか探している子がいる」というのを風の噂で(実際は、Jun Katoくん(@arcatdmz)経由で)聞き、なにかヘルプできることはないかなと思い、留学した経験をもとに少しお話してました。
というのも、コンピュータサイエンスのPhDに留学する人って、(ここ2-3年で比較的増えてきた印象はありますが)かなり少ないのです。特に、自分に近い分野だとなおさらで、例えば HCI / Graphics の分野では、僕が出願した時は、1人か2人くらいしか知っている中ではいなかった状況でした。
留学する時に、誰もが経験する孤独
そういった状況なので、彼女の孤独具合はよくわかり、少しはお役に立てたみたいで本当によかったです。:)
ただ、最初に言っておくと、彼女が留学先に受かったのは、100%彼女の努力と彼女を支えてくれた先生や周りの方や家族の方のおかげであって、おそらく僕のアドバイスなどは、ノミの毛ほども結果には関与していないと思われます。(あっても、0.01%くらい笑)
でも、実はこういうアドバイスは、留学してからも何人かにしているんですが、その都度プライベートにやり取りしているので、闇に埋もれてしまっていて、あまり公開情報になっていないことに気づきました。
なので、パブリックに公開できるものは、今後の人のために公開したほうがいいんじゃないかと思い、今回いくつか残しておこうかと思います。
特に、1年間(もしくはそれ未満)という限られた時間の中で、どう優先順位をつけて、どう戦略的に戦っていくか、また内部から見た選考基準のぶっちゃけた話とかはあまり表に出ていなくて、少しは出願準備をする上で参考になる場合もあるのではないかと思い残しておきます。もし、これからコンピュータサイエンスのPhDプログラムなどで留学を考えている人は、参考程度に見ておいてもらえると。
ゆうかさんとの実際のやり取り
以下は、その後のDMでのやり取りです。(ゆうかさんの部分は質問以外は、大体削っています。あと、個人名であまり公開するべきではななさそうな部分も削っています。ちなみに彼女には了承済みです。)
ちなみに、当初はUC Berkeleyのインターン先の先生が第一志望とありますが、その先生がMITに移ったため、MITが第一志望になったとのことです。(ちなみに、アメリカではこういう移動は結構あって、特にPhDに入ったあとにその先生が移ると、その先生に付いていって別の大学に移れたりも普通にします。ただ、単位のtransferなどが若干めんどうなので、入る前に移ってくれているのであればそれに越したことはないですが)
あとで聞いたところ、やはりその人のレターをもらえたことと、大学訪問できたことは大きかったとのことでした。
その他、補足
少しは参考になったでしょうか?
上のやり取りで、大体、重要な点については上でほとんど言ってますが、何個か補足を。
TOEFL / GREについて
ちなみに、TOEFL / GREですが、大学側もそこまで重要視していないのは、例えば最近、UC BerkeleyのiSchoolなどがGREを撤廃したことからもわかります。
ですが、一応点数見られはするし、足切りもされる可能性は十分にあるので(特にStanfordとかでは、比較的チラホラ聞いた)、一応準備してください。重要ではないというのは、ある程度の点数以上であれば、という意味です。(僕はたしかTOEFLは102-105点とかで、GREは... 完全に忘れました笑)まぁでも、TOEFL / GREについては、これ以上言うことは何もないかも。
Publicationについて
これは、なかなか難しいところです。というのも、やはりユニバーサルな指標はあまりないのです。ただ、僕のところ(コロラド大学ボルダー校 - トップ校ではないと思いますが、CSランキングで僕がいるHCI = Human-Computer Interactionの分野では大体、上から8-10位くらい)に出願してくる学生の観測例ですが、カンファレンスのフルペーパーが1-2本くらいあるな、という人は多々見かけます。
ちなみにCS Rankingsというサイトで分野ごとの順位などは見られます。まぁ若干誤差ありますが、どういう研究者がいるかも見れてかなり便利
スタンフォードやUC Berkeleyでインターンしてた時の観測例では、極端な例だとCHIやUISTなどを合わせてすでに5本あるような人もいました。笑(スタンフォードのMitchellくん 。彼のCVの2016以前を見るとわかると思いますが、彼はRochesterの学部にいた時にPhilip Guoと論文量産してました。が、この量は異常。笑)
ですが、逆にそうではない人もいるので、なかなか難しいところです。ちなみに上で言ってもいますが、僕も後者の人です。そもそも僕は、CS専攻ではなかったし、HCIという分野自体も出願の2-3ヶ月くらい前に初めて知り、そっちの分野になだれ込んでいった人なので、まぁpublicationがないのは当然ですが。(本当に今思っても、なんで受かったんだろ笑)ですが、後述するように、僕の場合も、そしておそらくYukaさんの場合もだと思いますが、Letterとコネクションが重要になっていると思います。(少なくとも、僕のケースでは、実際に取った指導教官などにそう聞きました)
レターとコネクションについて
日本で、レターとかコネが重要とか言うと、「裏口入学か!」というような印象を持たれそうですが、そうではなく、信頼関係という意味です。
なにせ、アメリカでは教授が大学院生を雇う仕組みになっているため、学生を一人PhDプログラムに入れるということは、給料やら学費やら一人あたり大体1,000万円/年くらいの投資をするということにあたるわけです。そんなのを一枚ペーペーのSOPやらCVやら、ましてやTOEFLやGREの点数で測るのはリスクが高すぎます。
そこで、最も重要になってくるのは、アカデミアにおける人間関係・信頼関係になるわけです。「だれだれ教授が推しているのであれば、取ろう」とか、「カンファレンスで話したあの子か。たしかに彼/彼女の研究は面白かった。取ろう」ということになるわけです。
ちなみに、推薦状といっても、先生も嘘は書きません。嘘を書いて変な学生が来たことがわかれば、信頼関係が崩壊するので。
分野にもよるとは思いますが、かなりspecificかつ客観的に書かれていると思います。例えば、コンピュータサイエンスの場合、プロジェクトや研究が重要になるので、これこれこういうプロジェクトでどういうことに貢献した、とか。経済の分野だと逆に、どちらかというとコースワークが重要なので、コアのコースワークで上位何%だった、というような。
でも、実際に会って話したことがある、とか、自分がよく知っている教授(特に、過去にコラボレーションしたことがある教授)の教え子、というのはかなり重要な要素になります。そういう意味で、レターは「何が書かれているか」というのは元より「誰が書いているか」というのも非常に重要になっていると思います。そういう意味での、レターやコネクションは非常に重要という意味です。
SOP(Statement of Purpose)について
SOPについては、それこそ、もはや分野で違うというレベルを超えて、その人その人で違うので、ユニバーサルなアドバイスは存在しません。笑
一つだけ言えるのは、誰か経験者やそれに近い人(留学したことがある人や、留学者を出したことがある先生など。もちろん自分の指導教官も)に添削してもらうといいと思います。
ただ、一言添えておくと、上のコネクションとかにも繋がりますが、SOPでは、大抵「なぜ、この大学なのか」という文面を入れます。ここがなかなか大変でした。というのも僕は、留学前にHCIに入ったばかりで、右も左もわからず、誰がどこでどんな研究してるのかも最初は全然わかっていませんでした。(僕はもともと経済学専攻で神取道宏先生という先生の下で、コンピュテーショナル・ゲーム理論をやってました。なぜ移ったかは話が長くなるんですが、一言でいうと、Bret Victorのインタラクティブでコンピュテーショナルなメディアが人間の思考を変えるというアイデアや、ゲーム理論のExplorable Explanationsというアイデアに感動したのです)
そんな状態だったので、とりあえず、大体、1大学あたり30人くらいの教授のホームページとCVを見まくりました。大体10校くらいに応募したので、おそらく少なくとも300人くらい(おそらく、応募してない学校もいっぱいあるので、その2倍か3倍くらい)。そして、興味がある先生や大学に関しては、さらにピックアップして、掘り下げて重要そうな論文を4-5本読んでました。
ひたすらアメリカの研究者調べてたら知らない内にマップが引けた
これは、必要にかかられてやっていたわけですが、結果的に(副次的に)、自分なりの研究分野のマップを作ることにもつながってよかったです。例えば、なにかアイデアを思いついた時に、あの人のあれとこれが関連してるから〜みたいな感じで、30本くらい論文思いついて、そこから新規性があるのか調べられるし、学会とかで会っても、「あの研究してる、あれこれさんですよね!あの論文めっちゃ面白かったですよ。あとあれも。あれってどうやって始めたんですか?」みたいな話を、研究初めて3ヶ月後くらいにはできるようになってたと思います。(実際、カンファレンスで会う時に、メール書いて会ったりしてました。)
今では、先に述べたCS Rankingsというサイトで誰がいるのかなども分野ごとに見られるようになったので、この労力はめちゃくちゃ少なくなったと思いますが(当時は、これがなくて、CSのFacultyを片っ端から見てたので結構大変だった)。
そういう意味で、そういうカスタマイズの部分も大事だとは思いますし、なんでそこに行きたいのか、なぜその先生なのかという情熱も忘れずに。
おわりに
以上が、大体PhD留学で出願する際のポイントになりますが、実は案外みすごされがちですが、意外と重要な点は「行動力」だとも思います。彼女の例でもそうですが、いろいろな人に自分から積極的にアドバイスをもらいに行ったり、インターンに行ったり、大学訪問をしたり、というのが結果に結びついているのは想像に難くないと思います。
僕も専攻を変えたり留学準備をしている過程で、全く見ず知らずの人にふつうにメールすることはもはや当たり前になりましたが、それが実は日本人の中では、当たり前ではなかったということに気づきました。
なので、そこの部分も一応意識してみるといいと思います。留学してる日本人は大抵みんないい人ですし、みんな相談に乗ってくれると思います。特に僕の分野の、Human-Computer Interactionということであれば、人間を扱っている分野ということもあって、なんかいい人も多いです笑(めっちゃ適当 + バイアスかかってますが笑)。要は、みんないい人が多いということです。(ただ、メールは10分の1、返ってくればいいほうですが。)
なので、積極的に行動していくことも良い結果につながると思っていますので、頑張ってください。
ちなみに、余談ですが、別の要件でLA/SF近辺に行った時、UC Berkeleyのある先生に会いたくて、メールを2-3回したんですが、まぁ返信は来ず。まぁせっかくだからとりあえず訪問だけしてみようと思って、伺ったところ、先生に会って少しだけ話すことができました。
最終的に、バークレーには受からなかったですが、その後その先生の元でインターンさせてもらえたので、まぁ結果的にはよかったのかな、と。(というか、最初の頃の訪問は、今考えるとだいたい全部こんな感じでした。もちろんその日はずっと、忙しくて断られるパターンもありましたが。)
ちなみに、僕は何回か大学やインダストリーでインターンしていますが、全員、カンファレンスなりで会って、直接知り合った direct connectionな人で、半分は自分から半分は向こうからという感じでした。ただ、基本的には指導教官とかが取り計らってくれたら、もっと圧倒的にラクなので、知り合いの方や指導教官の方などに頼んでみるのもいいと思います。
追記
その他
ちなみに、質問などをしたり、訪問したり、誰かを紹介してもらうというのは、相手の時間を使うという意味なので、きちんと「何が目的なのか」「どういうことをしてほしいのか」もしくは「どういう解答を得たいのか」というのを明確にしたほうがいいです。(僕はそこまでstrictではないですが、そういうのがあったほうがヘルプはしやすそう。)
そこらへんについては、下にあげたリンクなどを参考にしてみるといいかもしれません。
一応、参考までに、僕の過去のメールも差し障りがない程度に載せておきます。
また、ゆうかさんも、もう少し詳細に書いているので、そちらも参考にしてみるといいと思います。
最後になりますが、がんばってください! :D
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