記憶編1 sideジュウロウ 無光ノ剣舞

 それはもう記憶の片隅にあるが、今も覚えている。

 三代目様から加護をもらい、強さを手に入れるために修行を重ねている時期であった。

 最大国家光の国エレクシアで武闘会が開催されるという話を聞き、腕試しに出たことはきっかけとなったのだ。

 その武闘会には各領域から集まった猛者たちが集まり、益々盛り上がりは増すばかり……そして私は遂に決勝戦まで上り詰め、あいつと出会った。

 噂では私と同じ和国出身の金髪の長い髪の女で光の神に仕える光の騎士隊長を務めている。

「『剣聖』レシリス・アルト・レスティアル……」


 お互いが剣を抜き、その武器を見た。

 一度見ただけで神器だとわかった。光の騎士隊長が持つそれは《聖剣・神装剣(しんそうけん)》……二代目光の神が『剣聖』の実力を持つ者にそれを与えたのだ。

 向こうは光、だが私は無、負けるはずがなかった。


 そして開始の合図とともにレシリスはもうスピードで迫ってきた。剣の細さは細剣ほどに細く彼女自身も素早く厄介な敵だと確信した。

 ジュウロウは強く握り、迫ってくるタイミングを見て刀を振った。

 お互いの刀身が触れた瞬間、細かく火花が散る。

「やるなッ!」
「その武器、まさか神器ッ――」刀身を接触した時にジュウロウの武器が神器だと大抵はわかる。

 何もむやみに突っ込んでいる気ではないようだ。

「それが、どうしたッ――」大きく剣を振り、レシリスは距離を取った。


 そして剣を後ろに構え、刀身が光り出した。

 どのように攻撃するかはこれでわかるッ――素早く行動を見極めるッ!!

「ハァァァッ!」レシリスは吠え、連続で剣をジュウロウに振った。

 閃光のように素早くしかも自身も軽く、鈍い敵はすぐに首を落とされるであろう。

 縦、横と振る方向はやたらだが、相手の動きを見て、隙間に剣を入れようとしているのだ。


 だがそれを見抜いたジュウロウは入れられる所に剣を移動され、防ぐだけだった。

 刀身がぶつかり、少しの間その音が闘技場に流れた。

「まさか、『剣聖』殿の攻撃が防がれている……」と観客もこの決勝戦どうなるのかと騒つきは収まらなかった。


 そしてレシリスとジュウロウは再び距離を取った。

「貴方は何者……」
「名乗るってもいいが、それは試合のあとだ……。さっきからお前は手加減と言うか本気ではないよな……そんなこと剣を交えた相手にわからないと思ったのか……」

「いいや……」答えは違うようだが、明らかに何か迷いがあった。

「おい『剣聖』ッ……私はジュウロウ・ハリアート、破壊神に仕える配下の一人だ」


 それに目が大きく見開き、驚き、その奥に何かを抱えていることがすぐにわかった。

「全力で剣を振れば、相手が同じ強者であるならそれが道理だ……お前は何のために戦っている……」

「私は、私は人々を守るために――戦うッ!」


 その瞬間、その言葉で『剣聖』の力が覚醒したのだ。

「ハァァァァァッアァァァァァッ――――!!!」

「ぐッ――」無の力で光は消せるが破壊神の加護により死ぬことはないが、破壊神と同じで光属性が弱点とジュウロウはなっている。

 刀身から強い光を放ち、ジュウロウはその強い光に我慢できずに目を瞑った途端に刀を弾き飛ばされた。

 体内の力が覚醒し、保有する力の量が今に増えている。

 恐らく私と同等か……それ以上。


 だがここで逃げることなんて自分が許すわけがない……強さを求めるものは強者を望む……。

「ハァァァァァッ――!!」素早さが増し、連撃が繰り出された。閃光のように複数の斬撃がジュウロウに迫ってくる――。

 数秒前に覚醒し、そしてこれだ――。

 覚醒とは、自分の限界を大幅に上げること……その後も継続されるがどんな時に覚醒するかはまだわからない。

 斬理刀無剣(きりとうむけん)・睦月(むつき)――《無連(むれん)ノ舞(まい)》

 糞ッ!剣技を使うはめになるとはッ!!

 ジュウロウの剣技は無の力を刀身に宿すことでどんな攻撃も打ち消す能力だ。

「なッ――」
「属性攻撃は私に効かない――だが面白くなってきた!」覚醒し、ほぼ互角で戦っている。

「ならばッ!」速度が上がっている。


 まさか、それ以上にッ!

 だがまだまだ衰えてなんかいない――!! 

「ふッ――」刀身に無の力を流し、レシリスの連撃を防いでいた。

 奴は俺に剣を当てることを考えている……それが弱点だ。

 使うのはためらうがやるしかないようだ。

「ハァァァァァッ――!!!」レシリスは両手で剣を握り、ジュウロウに振り下ろした。

 固有スキル――《霧霞之領域(レギオン・ザ・ミスト)》

 ジュウロウはスキルを発動させ、周囲に濃い霧霞が広がった。

「くッ、目くらましかッ――」レシリスはジュウロウが距離を取った瞬間に光の斬撃を周囲に振った。

「我が力に光を――」『剣聖』レシリスは剣を強く握り、剣技を放った。

 剣聖――《聖剣・神星剣(しんせいけん)》ッ!!!

 剣聖の剣技が放たれ、強い光がフィールドを照らし、影で場所を特定した。

「見えた――そこッ!!」フィールドには二人しかいない。

 その影を見た瞬間レシリスは剣先を向け、その刀身から強く光る竜が迫った。


 そして――。

 あの後どうなったのかわからない……だが、レシリスは俺に匹敵していた。

 覚醒したとは言え、これまで戦った者より同じ国出身だからか、共感したのだ。

 数か月後に私は光の国の近くの山の頂上で光輝く国を見た。眩しすぎる……許されるのか、美しいと感じた。

「ねぇ、あなたは何のために戦うの?……」

「ッ――」咄嗟に俺は後ろを向くとそこには待ち合わせなどしていないのに彼女が立っていた。

「何だ急に……」幻ではないことはわかったが急なことに俺は戸惑った。

「あなたがあの時言ってきたことだよ。それにあなた……まだ幼そうだったから……」

「………」喉の奥から飛び出す声を抑え込んだ。


 その言葉の理由は何となくだが聞かれた瞬間理解した。

 破壊神の加護は簡単に言えば、不老不死……己の時間を止め、永遠に等しい時間を神と生きる。

 見た目は男……だが中身は――。

「あぁ、そうだ。加護を受けたのは貴様より年が下の15だった……」

「15の剣士……昔に存在した和国出身で無の力を持つ最強の剣士……」

「あぁ、その通りだ……」ジュウロウは重く瞼を閉じた。


 するとジュウロウの容姿は15歳の少年となった。

「強さを求めた故に俺は加護を受けた……もう人間ではない……」

「いいえ、あなたは人間です。人間という存在は神と似ている容姿をしていて、繊細な感情を持つ美しい生きものです。それで――」

 彼女は俺の顔を見た。

「あぁ、何のために戦う……その答えは善と悪の位置で変わるが、俺は――」

「愛し、大切に、思う者達を守るために――」

「フフフッ、私と同じだね――」レシリスは笑みを浮かべた。

「もしあなたが新時代を超えて、その先まで生きるのなら、みんなが仲良くしている世界を……」彼女の思いは第三新暦になってから種族同士の争いが増えているのだ。


 ある程度に文明を築き上げ、その後に目に着くのは自らと異なる他種族だ。

 力持つ種族は弱い種族達の領域を奪うというのが今の状況だ。

「あぁ、今の種族の状況は危ない状況だ……だがそうだな……」

「ん……」

「その願い、俺が次いでいく……だがお前が生きているまで自分自身でその願いに近づけるんだな――」

「君は一様私の歳下なんだけど……」


「フン、貴様よりかは長く生きている……」

「だけど君は戦闘中に何となく幼いと思ったんだけどなぁ……まぁ、いいや――」レシリスは俺の横に来た。

 その姿を見ると、その背後から太陽が顔を出した。

「私はね君に憧れてた……道場に言えば、最強の剣士と先生が口癖のように言っていたから……その剣はあなたが持つ前まで誰も主にしなかったよね……」

「あぁ、それによっても神器は変わってくる……何人も代々継いでいく神器は重く、背負っている……それに比べて私はこの神器が認めてくれたから俺はあの時死ななかった……」


「あなたも色々あるんだね……」

「お前はもっと強くなれる、だから自信を持って生きろ!『剣聖』レシリス・アルト・レスティアル――――」

「うん、君の剣は凄かった。願い、君もだからね――」とレシリスは今までで最高の笑顔で笑い、背後の太陽が強く輝いた。

 ジュウロウは目を瞑り、再び目を開けると『剣聖』は消えていた……。

「お前の願いはもらった……打ち消すことのないものを――――」




~コメント~

 無刀のジュウロウと剣聖レシリスとの回想でした。

 剣聖と勇者を駆け持ちとは言いませんが、最初に登場したのは勇者からです。レスティアル家が初代と呼ぶべき勇者の誕生となり、人間最強の家系と言っても過言ではなく、その功績から代々光の神の加護を受けてきた唯一の専属家系ともいえるだろう。

 歴代最強はまだ登場などはしていませんが、まぁソージやソピアには頑張ってほしいですね。

 レヴォルアント家はグアの時にともに魔王討伐に乗り出したことと、その後の魔王討伐成功で家系の名が広まった。

 勇者を引退してから、騎士団の筆頭として『剣聖』を名乗り、光の守護者として人間達の最大戦力の一角であり、貴重な神器であるとある聖剣を初代から受け継いでいます。

 ジュウロウが装備している刀は謎がありますが、その真実は最初の人類が関わっています。