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どこまでも(私ではなく)本人の気持ちを優先する ──いつかすべての高校生・大学生に。始まりの話、その8。

創業から3年目に入った今、当初を振り返って反省することがあります。明らかな失敗があります。名前と顔を思い出して、後悔することがあります。


1つ大きいのは、やりたいことを絞るように推奨した時期があったことです。当時は、やりたいことを絞るほうが、手っ取り早くやりたいことへの興味が深まると考えていました。

しかし、以前、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで教鞭を執っている鈴木寛先生のゼミにお邪魔したとき、「人間は三角形だ」というお話を聞きました。人間は、ひとつに特化して深めていきたい時期と、横に広げたい時期があるのではないかと。つまり、三角形を横に広げすぎると形がいびつになって縦に伸ばしたくなり、今度は縦に伸ばしすぎると横に伸ばしたくなる、というお話でした。たしかにそうかもしれないと、思いました。

学生本人がやりたいことを絞って深めていないということは、いまはその時期ではないからです。こうしたほうがいい、ああしたほうがいいと言うのは、こちらの意思であって、学生の意思とは裏腹かもしれない。先週も書きましたが、なにかを推奨する行為自体がよくないと気づきました。重要なのは、その人にとって望ましい状態であることで、その人にとってやりたいことは1個でも100個でもいいのです。


もう1つは、やりたいことがすぐには見つからない学生に対して、なぜやりたいことをやったほうがいいか、という話をしてしまっていたことです。

世の中に、やりたいことがない人はひとりもいません。好きなことがない人もひとりもいません。程度はともかく、YouTubeでも、アイドルでも、ゲームでも、興味を持っていることは必ずあって、自由に使える時間があったらなにをやってみたいかという質問に対して、何も答えられなかった人は、いままで本当にいませんでした。僕はそこにすごく人類の希望を感じます。ただ、自分にとってこれは本当におもしろいことなのか、時間とって突き詰めてみたいことなのかと考えると、迷ってしまう人は多くいます。そういうときに、やりたいことをやったほうがいいと理屈ばかりで伝えるのは、あまりよくなかったなと反省しています。理屈で説明することも引き出しのひとつではありますが、その引き出しに一時期頼ってしまっていた、と思っています。


それでもなかなか行動に移せない学生とは、とにかく雑談をします。「最近、なにかおもしろいことはあったか」など、できるだけ具体的に思い出せる質問や、気楽な会話のなかで、ふと、「実は中学生のときからずっと気になっていたことがあったのを思い出した」「実はこれに興味があった」と思い出すことがあります。日々の流れで忘れていた自分の気持ちに気づく。その気持ちこそ、やりたいことを掘り下げていくいちばんの強い動機になるわけです。

学生たちからは、なにも否定しないからなんでも話せますと言われますが、それはひとつ1on1 collegeの価値になっているかもしれません。言語化しないで気づきを得るのは難しい。なんでも話せるからこそ、話しているうちに自分が考えていたことに気づき、本当の自分がわかる。十人十色、時に疑問視したくなる言動もあります。毎回己と戦っていますが、あくまで冷静に、感情的にならずに、自分の価値観は置いておいて、思考を促せるような"問い"に変換していく。
学生たちにとって楽しいことをどんどん話せる、心理的安全性を保てる場所であることは、これからも重視したいです。


本音で話せない学生たち

驚いたことに、いまの学生たちは友達にあまり打ち明け話をしていません。本音を打ち明けづらくなっている理由として思い当たるのは、日々のコミュニケーションがLINEなどオンラインでの会話に依存しすぎていること。そして、学生たちがハメを外す機会が減っていることです。

もちろん、学校で会えば友達とおしゃべるするけど、他愛のない会話にとどまって、面と向かって本音を話すことを恥ずかしがり、難しいと感じるようになっています。わたしには思いの丈を吐露してくれるので、仲間内で話したのか尋ねると99%の確率で話していません。打ち明け話ができる場として機能しているのはありがたいですが、メールやLINEでの会話には限界があって、やはり面と向かって本音で話さないと解決しないことはあると思います。

20歳以上なら(かつてはもっと曖昧でしたが)、ときにはみんなでお酒を飲むことも大切です。かつて先輩に「同期と飲め。そしたらすべて解決する」と言われ半信半疑でしたが、同期と飲んだら本当に解決しました。つまり、お酒は本音が出る。それはときに過ちも生むかもしれませんが、そういうちょっと勢いをつけさせてくれる装置がことを解決に導いてくれることもあります。


(続く)

※これは、高校生・大学生のパーソナルメンター「1on1 college」がどうやって生まれたか、インタビューしてもらった内容を文字におこしたものです。

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