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"アドバイス"は"気づき"に勝てない ─いつかすべての高校生・大学生に。始まりの話、その7。

学生向けに進路相談を行っている団体は他にもあります。大学生向けのものが多く、企業からお金をいただいて運営するところが多いですが、そうなると、どうしてもその企業を学生に勧めてしまう傾向になって、コミュニケーションがフランクなものになりません。これは転職エージェントなどと同じことが起きていて、ビジネスモデル上、どうしたってバイアスはかかるものです。

また、一度進路相談に乗った学生が、次の面談までに伝えたアドバイスを行わなかった場合、その学生と2回目の進路相談はしないという団体もありました。厳しいけれど一理ありますし、いろいろなスタンスがあるので、その人たちを否定するつもりはまったくありません。ただ1on1 collegeでは、学生に対して「こうしたほうがいい」とアドバイスはしませんし、それ故に、約束を守らないことを理由に学生を見限るつもりもありません。


アドバイスをしたがる大人は、世の中に驚くほどいます。年長者に言われたら学生たちはそういうものだと思ってしまうし、この国ではそれが同調圧力となってものすごい影響を与えます。だから、1on1 collegeではアドバイスをしません。そして、自分自身のことを振り返ってみても、これまでに親、先生、先輩から何万ものアドバイスがあったはずですが、おそらく1万個のうち1個ほどの確率でしか響いていないし、そのアドバイスを思い出してすらいないわけです。

勉強にしろ、遊びにしろ、自分のスイッチが入ったものは、同じ量をやっても学びの質も効率もまったく違います。さらに、そこから培われる価値観も、より解像度の高い独自の価値観になっていきます。好きなことをやっている人は、どんどん能力もスキルも身につき、大きな課題も越えようと努力します。どうにかして越えてやろうと思考する力がつき、どうにかして相手を納得させようと交渉する力もつく。一度は越えられなかった課題も、徐々に越えられるようになっていくでしょう。


どうしてもアドバイスがしたい大人たちへ

もし、それでも、その1万個のたったひとつの心に響くアドバイスをしたいのであれば、ひとつ、アドバイスがあります。それは、同じことを何回も何回も言うことです。

僕の祖父が、生前、僕に繰り返し言ったのは、「平常心」という言葉でした。学生当時、水泳をやっていたので大会前にはいつも電話をくれていました。いつも「亮祐、平常心だ」と言うのです。しかし大会本番は、とてもじゃないけど平常心ではいられないし、テンションも、ストレスも、プレッシャーもすべて、平常じゃないことが当たり前で然るべきだと思って、聞く耳を持っていませんでした。

ただ、何十年か越しに、緊急時こそ平常心、と腑に落ちる瞬間が訪れました。ある日、ハッと「じいちゃんが言いたかったのはこれか」と。それは衝撃的でした。
目の前に困っている人がいたらアドバイスしたくなる気持ちは、よくわかります。しかし、自分で気づかない限り、アドバイスが実る瞬間は来ません。つまり、結局のところ、アドバイスは気づきに勝てないのです。


(続く)

※これは、高校生・大学生のパーソナルメンター「1on1 college」がどうやって生まれたか、インタビューしてもらった内容を文字におこしたものです。

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